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JMKラブホリ王子様最終回に”私とアイドルの間のリアル”を見た

ついに、毎週月曜の深夜から週のはじめだっていうのに無駄にときめきとツッコミで体力を消費させる問題の番組、「JMK中島健人ラブホリ王子様」が最終回を迎えてしまいました。

この番組、マジでアイドル番組として画期的だったのではないかと思い最終回記念に感想をまとめてみたいと思います。

 

JMKは中島健人がラブホリを演じるメタ構造を楽しむ番組…だったの?

JMKは、開始当初、中島健人くんの普段のパーソナリティからちょっとズレた悪い暴走が目について見ていて居心地が悪かったり、ファンとしては素直に没入できないサムい演出があったりと、正直にいうと見ていて辛いものがありました。また、主観カメラで撮影され、カメラの向こうには健人くんの恋人である私がいるはずなのに、健人くんが"私"の口に食べ物を運ぶときにカメラの横(おそらくカメラマンさんの口がそこにあった?)にスプーンを運んだりなど、惜しいところでまっとうに”彼女”として入り込めないツメの甘さも見られて、どうやってこの番組に楽しさを見出そうかと悩んだ時もありました。

ですが、不評だった演出はどんどん改善されていき、回を追うごとに初回のしんどさがなくなってきて素直に中島健人くんのかわいい表情を楽しむ番組へとシフトチェンジすることができました。

また、素の健人くんのインタビューが最後に盛り込まれるようになったことによって、ラブホリ本編はアイドル中島健人くんが完全に「ラブホリ健人」というキャラを演じているのだ、というメタ構造がわかりやすくなったのも、ラブホリを安心して楽しむことができるようになった理由のひとつでした。

ただ、個人的にはこのメタ構造が少し悲しかったのです。もともと、健人くんがなんの気なしに言った「僕、ラブホリックなんですよね」という発言が、度重なるトンデモ言動の数々とあいまって中島健人くんに「ラブホリ」という二つ名をもたらしたもので、ラブホリは演じるものではなく健人くん自身がラブホリである、という認識が個人的にはありました。

しかし、「ラブホリキャラ」というものが定着してきて、連日甘い言葉や甘いシチュエーションコントを要請される健人くんも正直しんどそうなところはあったので、JMKという番組のお陰で、中島健人くんというアイドルとラブホリというキャラが切り離されるのはいいことなのだろうなとは思うようになりました。

 

最終回で現れた私と健人くんのリアルな距離間

JMKの健人くんは結局、アイドル中島健人くんが全力でラブホリキャラを全うしているだけに過ぎない。それはそれでアイドルとしてはかっこいいんですけど、あからさまにされたメタ構造からはそんな身も蓋もない印象しかありませんでした。

そして迎えた最終回のラストシーン。”彼女”にとある日時と場所を指定した健人くん。カメラである私たちがそこに行ってみると、そこには、BAD BOYS Jの撮影現場で桐木司の衣装を見にまとった健人くんの姿が。この番組の設定は確かに「アイドル中島健人くんと付き合う私」だったことはわかっていたけれど、JMKを通して見る健人くんは私が月曜深夜以外の時間にいつも見てるアイドル中島健人くんだったのか!という衝撃が。

さらにこの場面は今までの主観カメラの映像とはうってかわって、撮影のメイキングを思わせるような遠巻きのアングルで手ブレしまくった映像で写っているところが、主観カメラなんかよりずっとリアル。だってファンである私たちがいつも見てる健人くんの姿って、こういう引きで撮影されたなにげないオフショット映像なんですもん。それが今まで見てた主観カメラのラブホリ健人くんと地続きだったのかよ!!!!!!!!まじかよ!!!!!!健人くんがラブホリを演じてるドラマかと思ったら、やっぱり私たちがいつも見てる健人くんがラブホリだったのかよ!!!!!!フェイクとして見てきたJMKの最後にファンとしてのリアルが豪快につなげられたーーーーー!ってことでテレビの前でのけぞりました。

健人くんは、電柱の影からそっと撮影現場を覗き込む”私”の目の前に颯爽と現れると、撮影現場にも関わらず”私”と健人くんにしか通じない謎の歌を大声で恥ずかしげもなく口ずさみます。こんな大声で恥ずかしくないんだろうか…と普通は思いますが、私たちファンはPVメイキングなどのオフショット映像でもテンション高すぎて面倒な感じになっている健人くんをさんざん拝んできてるため、ほとんどと言っていいくらい、違和感がない。

 

最終回で起きた逆転現象

さらに戦慄したのが、その後の健人くんインタビューパート。いつもであれば、ラブホリを演じる「素健人くん」(※TV雑誌での本人談による)が登場して、ラブホリがフェイクだったことに安心させてくれる時間なのですが、最終回では、いつものラブホリパートで使われる、健人くんの顔に接近した主観カメラの映像で「素健人くん」がしゃべっています。いつもであればカメラのフレームの外にいる第3者に向かって質問に回答する健人くんが引きで撮られていたのですが、最終回では主観カメラの映像で、さらにカメラの向こう側にいる視聴者に直接語りかけてくる…!え、なにこれラブホリ?という錯覚に陥りました。今まで「素健人」だと思って見ていた健人くんが、”フェイクだと思ってたモノ”と同じ様相を呈していて非常に怖いワンシーン。

ラブホリを演じてたはずの健人くんがリアルとなり、リアルだと思っていた素健人くんがフェイクという逆転現象が起きてしまい、結局「ラブホリ」は健人くんによって演じられていたのか健人くん自身だったのかよくわからなくなってしまいました。メタ構造もリアルも、フェイクに飲み込まれたこの瞬間にゾクゾクしました。

考えてみれば、そもそもラブホリを演じている健人くんも、そうではない健人くんも、結局ファンである私たちはカメラや舞台、雑誌を通してしか見たことがないので、何がリアルで何がフェイクなのかは曖昧だったというわけです。

だから、テレビの向こうから囁く健人くんが最も、ファンである私たちにとってのリアルな姿なのかもしれません。ファンと健人くんの恋愛なんて、夢の話ではなくて今テレビの前で起こっていることなのかも。だってこれが最大限のリアルなのです。

中島健人くんの魅力は、そのアイドル性が「演じる人/演じられるキャラ」という安易な見方に収斂しないところだと思っているので、健人くんを「演じる人/演じられるキャラ」に分離させたように思えたJMKという番組の最終回が、こうしたリアルとフェイクの曖昧さを見せつけてくれたところに、やっぱり健人くんはこんな冠番組をもらえて幸せだなと思えたのでした。

放送終了後に毎回、熱烈な賛辞と、「キモイ」「反吐がでる」などの罵詈雑言がこんなに飛び交う番組を1クールやり遂げた健人くんとJMKスタッフのみなさま、本当にすごいです。