パノラマロジック

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<前編>私ひとりで選ぶ「このBLがやばい2015」

このBLがやばい2015が発売してしまいました。

 

このBLがやばい! 2015年度版 (Next BOOKS)

このBLがやばい! 2015年度版 (Next BOOKS)

 

たくさんの人の投票によって選ばれるランキングで1年間の商業BL全体を俯瞰することができるので毎年楽しみなランキングなのですが、BLってやはり個人の嗜好に「よかった」「つまらなかった」をたいへん左右されるジャンルなので、当然、自分の推し作品がめっちゃ順位低くて、うーん…ってなったりとかありますよね。

そこで今回は個人的な「このBLがやばい2015年度版」を後出しジャンケンっぽさに負けずに書いてみます。いや、本当は1週間前に決めてたんだけど、ぐずぐずしてたら本家が発売してました…。

本にならって、2013年10月~2014年9月に発表されたBLの中で面白かったものを10冊ピックアップします。

 

10位 晴れときどき、わかば荘あらあら/羽生山へび子 

晴れときどき、わかば荘あらあら (H&C Comics  ihr HertZシリーズ 144)

晴れときどき、わかば荘あらあら (H&C Comics ihr HertZシリーズ 144)

 

 わかば荘に集うさまざまなカップルの恋模様を追う短篇集。どの作品も、とてもテンポがよくするするっと読める面白さでした。中でも一番面白かったのは、競馬のジョッキーBL。職業BLは数あれど、ジョッキーをテーマにしたものを読んだのは初めてでした。過去にトップスターだった選手と、その人に憧れていた現トップスターの後輩っていう後輩攻BLがほんと大好きです…攻が受に憧れている感じが。

 9位 ラクダ使いと王子の夜/緒川千世

 表紙と内容が全然ちがうじゃねえか!!!!!!!…最高でした。

これ、表紙のかわいいアラブものを期待して買うと、中身を読んだときにすごくガックリするんではないでしょうか。表紙のアラブBLは1冊の中で半分以下のページ幅となっており、大半は作者の方の趣味なんだろうなと思わせるフェティッシュでハードな設定のBLばかり。

溺れる魚」は水泳部が舞台で、緒川千世さんの作画の美しさと水の描写があいまってうっとりします。あと、「俺のことを好きじゃないオマエがすきだよ」と言われて一緒にいたせいで、必死に好きじゃないフリをする、て物語が、まあある種テンプレだけど私はマジでマジで大好きです。指先で顎を触るだけで感じてしまう受の描写があるのですが、緒川さんの描く人物の細かい造形が美しいので妙なエロさがある。素敵です。

「いびつな欠片」「くさった螺旋」は掌編ながらびっくり変態人間のオンパレード。私は、神経質な黒髪秀才メガネくんが大好きなのですが、そんな秀才眼鏡くんが、 愛でも恋でもなく、ただ自分の醜い自尊心を守るために、狂った弟を挑発し犯されてあげてるんですが、最終的に自分がかわいいキャラ大好きなので最高です。無節操な変態趣味に走りたくなる時期が腐女子は誰にでもあると思っているのですが(え、あるよね?)、これはそんな厨2魂をくすぐってくれる作品でした。

そんな複雑なBLばっかりある中で、心が清らかな人しかいなくて性のにおいもない、タイトル作品である「ラクダ使いと王子の夜」の清廉さが際立つのです。短篇集ってあまり好きじゃないけど、この組み合わせだからこその面白さがこの本にはありました。

8位 ひずむ三角、ほどけて絡む/碗島子

ひずむ三角、ほどけて絡む (バンブーコミックス Qpaコレクション)

ひずむ三角、ほどけて絡む (バンブーコミックス Qpaコレクション)

 

 3度の飯より三角関係BLが好きです。しかも、ただの三角関係じゃないやつ。

この作品では、ちょっと頭が足りなくて性欲に流されやすい愛すべき受の市村が、学園の至るところで二人の男から襲われまくるのですが、実は市村のことを取り合う攻の二人、大庭と蔵に、「好き」だけでは形容しがたいBLならではの関係性が存在しているのです。そう、これ!こういう三角関係大好き!

大庭は本心があまり見えないし、蔵は根暗だったりと複雑なキャラ同士で、その間にある愛情もわかりにくいですが、二人の間に挟まれる市村が愛すべきバカだから、シリアスになりすぎずに3人で幸せになれよ…とあたたかい気持ちになります。まるでこのおバカさん市村が複雑な大庭と蔵の関係を取り持っているようにも見える。「チョコレートストロベリーバニラ」も流行ったことだし、こういう複雑な3人の関係性が見えるBLがもっと読みたいです。

7位いとしの未来くん/吉田ゆうこ 

いとしの未来くん (Canna Comics)

いとしの未来くん (Canna Comics)

 

 表紙からは陰鬱な香りしか漂ってこないですが、ただの鬱BLではなく、読後さわやかなBLでした。

未来くんという心優しくて流されやすい少年が、さまざまな男性と流されるままにお付き合いして、性的な関係を持っていくストーリー。ビッチというまでではないけれど、確実に無垢な未来くんがさまざまな男の手によってどんどん性的な存在になっていく描写が、たまりません。こうして書くと身も蓋もないエロBLみたいですが、性描写はまったくきつくなくて、吉田ゆうこ先生の映像的な漫画表現にうっとりしながら読めました。

最終的に、未来くんにとってのたった一人の最愛の彼によって未来くんはやっぱり純真無垢な存在として描かれるのでラストは安心しました。

ちなみに、今回の選考対象外だった「プレイバック」のほうは更に吉田先生の映像的な表現が強まり、キャラクターの描かれ方はこちらのほうが好みでした。攻の子が8ミリカメラを覗きながら受を見つめるコマの描写がすごく好き。

プレイバック (Canna Comics)

プレイバック (Canna Comics)

 

 6位両想いなんて冗談じゃない/カサイウカ 

両想いなんて冗談じゃない!! (Canna Comics)

両想いなんて冗談じゃない!! (Canna Comics)

 

 おじさん好きの!おじさん好きによる!おじさん好きのためのBL!!!

高校の時から親友の隆次に片思いを続けて25年、片思いをこじらせまくった42歳時造。しかし、ひょんなことから離婚した隆次と一緒に住むことになり25年モノの片思いに進展が…。というお話。

タイトルからしてこの先の展開が完全に読めてしまうと思いますが、とにかく、好き合ってるのはわかったのだが、お互いのプライドが邪魔をして、素直に「好きです、ハイ付き合いましょう」とはならずにえんえんとケンカしてる42歳のオッサン同士ってカップリングが最高です。はい。

口喧嘩してるけど最終的に「仕方ないだろ!好きになっちまったんだから!」ってお互い顔真っ赤にして相手の目を見れない構図って。かわいすぎか……。プライドの張り合いを早々に終わらせて早くイチャイチャさせる展開もあったのだろうけど、この漫画では、本当に最後までなかなかカップルっぽくならないところがいいです。

また、この二人の不器用合戦をハタから見物してるバイトの若者くんが、邪魔することなく面倒な二人の物語を進展させてくれる上に、笑えるものにしてる絶妙な立ち位置を担ってるのもよかった。

5位 IN THE APARTMENT/絵津鼓

IN THE APARTMENT (H&C Comics ihr HertZシリーズ 156)

IN THE APARTMENT (H&C Comics ihr HertZシリーズ 156)

 

 江口寿史風味のおしゃれな絵の中、街中にリアルにいそうな男の子達が、ごはん食べたり、ゴミ出ししたり、お風呂入ったりしてる、そんな日常を生きてるBL。経験則ではこういうBL好きなんだけど、そこまで自分の中ではヒットしないだろうなと思っていました。でも、IN THE APARTMENTは違いました。

同じアパートに住む妹尾と杉本の平和なご近所暮らしが描かれていくうちに、二人とも過去に振り返りたくない傷を抱えていることがわかります。抱えた傷の救いを求めていくうちに、ただの友達だった二人がふと、気の迷いのように口づけをして肉体関係になるのですが、この着地がやや唐突な印象はあるものの、低体温な二人が唯一本能的になる瞬間で、いいなと思いました。BLはあらゆるあらすじがセックスの手段になりがちですが、これはその後に控えるあらすじを追う手段としてセックスが挟み込まれている感じ。

そして、二人とも最終的に過去の傷と向きあうんですよね。その向き合い方もしつこくなく、淡々と追ってて、キャラクターそれぞれの人生を応援したくなる。BLのために生きてる二人じゃなくて二人の人生を生きてるキャラ同士のBL。BLが後景化しているので、微妙っていう感想もあるかもしれませんが、いい意味で予想を裏切られたところもあって、お気に入りの作品になりました。

4位 マリアボーイ/木村ヒデサト

マリアボーイ (マーブルコミックス)

マリアボーイ (マーブルコミックス)

 

 正直、最初に読んだ時はそこまでBLとしは萌えなかったし、今回の「私的このBLがやばい2015年度版」を考えるにあたり、1週間前に最初に順位を考えた時点では9位でした。では、なぜこんなにランクアップさせたかというと、先日やっと、すごいすごいと評判の、カバー下の手書き草稿(びっちり詰められた文字のみ)を読んだんですよ。

なにこれ…!!!早く読めばよかったです。この草稿を読む後と前でまったく作品の印象が異なるすごい草稿をなぜカバー下に隠した…。

なぜ「マリアボーイ」っていうのか全然わからなかったのです。表紙を見る限り、弟を溺愛するあまりにストーカーになった、男相手に体を売りまくる美容師のヨシキのことを指すのはわかっても、それのどこがマリアなの?と。草稿見てやっと意味がわかり、マリアボーイって漫画の震えるほどの面白さに気づきました。

どうしてこの草稿は漫画として収録されてないんでしょうか。そこらへんの意味のわからなさがおもしろすぎて、この順位です。

展開がしっちゃかめっちゃかだし、表現は”耽美”とは真逆の意図的な下品さがあるし、確かに人を選ぶBLなのかなと思いますが、表題作の「マリアボーイ」で描かれる美容師ヨシキと奔放なノンケの年下加藤くんのカップリングはまっとうに萌えるBLです。常に寂しさを抱えた依存体質のヨシキが、能天気な年下の加藤くんから愛を与えられて救われていく。その前に収録された「好きだよ、秘密だよ」では弟を溺愛するあまりストーカーになる危ない人物でしかない兄が、加藤くんに手料理をつくってもらって、まっとうな愛を与えられ人間的な幸せを手に入れていくのですが、その描写が本当によい。ヨシキが玉ねぎを持ちながら「人のチンコを数えきれないほど握ったこの汚い手が 自分で傷つけて勝手に休養してるこの手がなんと今玉ねぎをむいている」というシーンで玉ねぎがアップになるんですけど、このふざけてるんだけどリリカルなところがいいのです。漫画が全体的にふざけたテンションで進むんですが、ちょいちょいこんな風に鋭く斬り込むリリカルさが絶妙に見え隠れするのが木村ヒデサト先生の味なんだなと思います。

だから、登場人物がどれだけ頭のおかしい行動をとろうと、それが実はものすごく普遍的で純粋な気持ちに裏打ちされていることがわかる。(カバー下の草稿も、美容師ヨシキの突飛な行動が純粋な愛に裏打ちされてることを補足する内容でした)。出てくるキャラクターがすごく人間くさい。最初はそこまで萌えなかったのに、じわじわ気になっちて気づいたら好きになっていた「マリアボーイ」の面白さって結局そこなのかなと思ってます。

 

後編はこちら↓


<後編>私ひとりで選ぶ「このBLがやばい2015」 - パノラマロジック