パノラマロジック

オタク怪文書

<後編>私ひとりで選ぶ「このBLがやばい2015」

選者:ななりだけで選ぶ、ひとり「このBLがやばい2015」。後編は3位からの発表です。(前編はこちら)

3位 相愛えろ期/彩景でりこ 

相愛えろ期 (ジュネットコミックス ピアスシリーズ)

相愛えろ期 (ジュネットコミックス ピアスシリーズ)

 

2014年に読んだBLの中で3本の指に入るインパクトといえばこれなんだけど、この作品を入れようとすると、もはや「このBLがやばい」ってそもそもどうやって選べばいいのかわからなくなってくるんですよ。なにせとにかくセックス、セックス、セックスにつぐセックス漫画。

もう、この作品に出てくる太郎と充という俺様×ツンデレメガネのカプリングのやることなすことすべて私の性癖ど真ん中豪速球投げてくるので抗えないんですよね…。なんなんでしょうか。彩景さんが描く男性の絶妙なツルツル感のある体つきが好きなのもあるし、乳首がツヤツヤしてるのもいいし、ツンデレメガネがやっぱり大好きってのもあるし、そんなツンデレメガネと女装セックスもあるし、ツンデレメガネの自慰シーンもある、大好きなものがつまりまくってる。方言もいい。あと彼氏である太郎の言葉責めが程良くゲスいのも最高。

いいBLはやはり理性で語るのは不可能なのではと思えてくる一冊でした。

2位 僧職高校男子寮/コウキ。

僧職高校男子寮 (バーズコミックス ルチルコレクション)

僧職高校男子寮 (バーズコミックス ルチルコレクション)

 

 「農業高校」とか「音楽大学」とかちょっと個性的な設定だけで展開する漫画って設定の面白さだけで突き進んでいくイメージがあり、このBLもそんな感じだろうなと思っていたのですが、これは全然「仏教系高校」って設定の特別感に頼ってない!BLとして、もっというと青春漫画としてすごく面白かったのです。

親に言いたいことも言えないまま、なりゆきでお坊さんの跡継ぎ息子が多く通う仏教系高校に通い寮生活をすることになった主人公の一茶。そこで、自分の将来とさまざまに向き合う同級生達と出会い、彼らとふれあいながら少しずつ自分の弱さと向き合って成長していく様子が、明るく丁寧に描かれます。一茶を成長させてくれるものが、同級生達が教えてくれる仏教のありがたい考えや、お寺の手伝いということで、そこで仏教系高校という舞台設定を活かしてくるのもぐっときます。

後半から少しずつ色濃くなる一茶と、同室の明人とのBL展開も、いきなり好き合っちゃうありがちな飛躍がなく、落ち着いて安心して読めました。というのも、前半部分で一茶の悩みを晴らす存在としての明人が丁寧に描かれてるので、一茶が明人に対して無邪気に「俺、もう明人がいないとダメだなー」と冗談まじりに言うシーンは偽りがないし、その一茶が本当にかわいくて、ああ、こんなこと言われたらそら同性の同級生と恋に落ちるわ…と腹オチするわけです。

そして自分の恋心にお互いが気付くのですが、その恋の進展もゆっくり。男子寮の同室だからって、すぐセックスには至らない。なんとなくたまにキスする寮の同室の友達、みたいなフワフワした期間があり、明人の入院もあり、ゆっくりと恋心を深めていくところが、読んでて安心できます。そうそうBLってこういう感じだよねーってなんか基本に立ち戻ったような気になるBLでした。

1位  美しい野菜 

美しい野菜 1 (Feelコミックス オンブルー)

美しい野菜 1 (Feelコミックス オンブルー)

 

 発売されてからもう1年以上経ってますが、いまだに、「美しい野菜」を超えるお気に入りBLに出会ってないかもしれない…それくらい大好き…。

心が狭くて内向的なもっさりしたメガネの受、太郎(もうこういうキャラ大好き)がひょんなところから年下の八百屋、治樹と知り合い、なりゆきでSMプレイをして自分の中のマゾ性を開花させていく物語。

この作品の面白いところは、大変いやらしいSMプレイの描写と、治樹が自分の八百屋から持ってくる新鮮な野菜を使って簡単な手料理を太郎に振る舞うところが、同列に扱われているところです。夜はSとして太郎をおもちゃのように扱う治樹ですが、昼になると、不健康な生活を送る太郎のために家事を片付け手料理を作ってあげる甲斐甲斐しさを見せます。SMプレイと美味しい料理で太郎はどんどん解放されていき、気持ちが楽になると仕事がうまくいくようになり、内向的な殻を少しずつ破っていくのです。

衝撃でした。SMプレイのBLは数多くあれど、こうした日常の暮らしの中にあるSMを描くものは初めて読んだし、それが行き詰った主人公を救う手段にすぎないなんて。

更に、太郎さんの救済の物語だけでなく、太郎と治樹の恋の駆け引きも真っ最中なのがよいです。こんだけハードなSMやっておいて、太郎とは「恋人じゃないよ、ただのかわいそうな友達」と言って恋の駆け引きを仕掛けてくる治樹と、自分がまともに相手を思いやる恋愛が出来てないと思っていて、治樹にきちんと恋できてるのか自分で不審がってしまう太郎。まだ全然付き合ってないし関係性の核心に触れてない!

食べることもセックスすることも地続きのひとつの生活の中にあり、その生活の中でゆっくり二人の恋が進展していく。そういう性愛の捉え方がBLの中では新鮮で、面白いなと思います。

ほんと松本ミーコハウス先生は生活感と変態の隣り合わせを描くのがうまいし、ご飯の描写を大切にするし、受と攻のどちらかに偏らない、お互いがお互い気恥ずかしくなっちゃう均等な力関係のBLを描くところが大好きです。

2巻の発売が待ち遠しい…。

おわりに

10冊紹介するだけなのにたくさん書きすぎましたので2つに分けることに。このBLがやばい2015に先駆けて、私的このBLがやばい2015を書いたブログのエントリが意外と少ないというか見つからないのですが、これから増えるのかな…。

ちなみにこのBLがやばい2016の1位筆頭候補が早くも決定しています。「夜はともだち」。これも、あーその発想はなかった!という変形SMもの。こういう、今までとちょっと変わったBLが読めるとほんといい買い物したなと思います。

夜はともだち (POE BACKS Babyコミックス)

夜はともだち (POE BACKS Babyコミックス)

 

 

来年はどんなBLが読めるのかいまから楽しみです。