パノラマロジック

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Maison book girlの活動終了に寄せて

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一番すきなブクガ特典会動画のキャプチャ

唐突な自分語りで申し訳ないけど、10代の頃からずっと何かのファンだった。

しかし何かのファンであること、それを名乗ることに苦しさを感じる自分もずっとあって、最近ようやく「推しがいる生活」が向いてないことに気づいたところだった。

だから、5/30の舞浜アンフィシアターの公演でMaison book girlが活動終了したことで、執着するものがひとつ減って、ほっとしている。

ずっと何かにまじめに執着しつづけるのはしんどい。常に自分の思う通りに推しは動かないし。調子いい時もあれば悪い時もあるし。お金も時間も無限じゃないし。あと、わたしはたぶん飽きが早いしなにかと面倒くさがりなんだと思う。

そもそも、Maison book girlのことはこんなに好きになるはずではなかった。

Maison book girlとこれまでの話

一番最初にブクガを見たのは、今はなき綱島温泉でやっていた湯会でのこと。サクライさんがやってる新しいアイドルグループを見てみたいな、という動機からだった。

 二度目に見たのもたぶん湯会。

この頃の印象は、実をいうとあんまり良くなくて「サクライさんがやってる新しいアイドルグループを見たぞ」としか言えなかった。

このあとSolitude HOTEL1Fも見に行ったんだけど、やっぱり印象は更新されず、しばらくブクガのことは忘れていた。ただ、新加入したメガネの女の子はかわいいなと思ったのでフォローしていた。

そんなブクガの見方が変わったのは2017年の、赤坂で見たSolitude HOTEL 3Fがきっかけだった。

 「end of Summer Dream」がそれまでのサクライさんの楽曲のイメージから逸脱していたのと、「townscape」で輪になって踊る4人がとてもきれいだったからだ。

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それからどんどん行く現場の数が増えていった。

それでも、当時はメンバーやグループへの愛着よりも「現場を増やす」、「チェキを撮りにいく」こと自体に楽しさを覚えていた気がする。同じCDをたくさん買って何になるんだと、自分でも思っていたけど、一見無益なところに楽しみを見出してお金を出すことの楽しさったらない。

ある種の暇つぶし。だけど、そうやって現場を重ねるたびに、自然とメンバーとグループへの愛着がうまれていった。

それだけじゃない、ワンマンライブであるSolitude HOTELが回を重ねるごとに洗練され、曲を出すたびに新しい魅力が更新されていき、気づいたときにはブクガが自分の中で大きな存在になっていた。

いつもの自分なら、ライブを何度も見ていくうちにどこかで「つまんないな」と飽きがくるところだ。けど、ブクガの楽曲とワンマンライブは常に驚きがあって、つまんないと思う暇を与えてくれなかった。

ブクガの楽曲とライブには常に不穏さと不可解がつきまとう。時には暗がりの中で4人は歌い踊るし、突如暗転したあとに耳をつんざくような謎のノイズが会場を埋め尽くすこともある。それはホラーのようでもあったし、彼女たちが表現しようとしていたのは、あくまでも内面に深く深く潜りこむような閉じた世界だったように思う。

でもブクガ自体は閉じた存在ではなかった。楽曲の世界観からして、彼女たちに歌唱力もダンスも必要ないと、昔は失礼ながら思っていた。しかし、楽曲の魅力に負けずメンバーの歌声がリリースを追うごとに進化していき、無機質だった少女の声が、肉感的な人間の歌声になっていった。くわえて最初のころはどこかお遊戯のようだった振り付けが、じょじょにコンテンポラリーダンスのようになっていき、洗練されていったところも、目を離せなかった理由だ。

現場の思い出

もともと顔見知りだった人以外、私はブクガの現場では知り合いはいなかった。けど、なぜかブクガ現場は「現場」としては落ち着くところだなと思っていた。

一方的に顔だけ知ってるオタクが何人もいて、なんかその人たちの顔を見ると落ち着く感覚があった。あと、スタッフのナカヤさんの仕切るチェキ列は個人的に緊張感が常にあったけど、ところどころで「そんなに怖くない…意外と優しい…」と思える瞬間もあった。

最初で最後の札幌遠征で、ブクガTシャツを着ていたらオタクに話しかけられたことがあった。遠征で同じ飛行機の乗客にオタクを見つけることは珍しくないだろうから、特に話しかけたりしないと思うけど、ブクガのオタクっていい人が多いのかもしれない、とこの時思った。

あと、エコムスデパートの配信で、子供が生まれたことをチャットで報告したら和田ゆいだけでなく、チャット全体でお祝いしてくれたこともすごく嬉しかった。オタク、あたたかいな…と思った。

 

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(そしてこの件にかんしてはかぎささんに大きな感謝を…。いつか現場でご挨拶させてくださいってやりとりしたのに、叶わなくてすみません)

ブクガ目当てで見に行ったことで「あの時見れてよかった」と思った人もたくさんいた。鎮座DOPENESSとかボンジュール鈴木King Gnuとか、長谷川白紙、諭吉佳作/menが見られたのは良かったな。

2021年5月30日を迎えるまでの話

出す曲はどれも素晴らしく、ライブはどれも楽しくて、そんなに好きになる予定じゃなかったブクガに、気づいたらすっかりのめりこんでいた。

しかし、大好きなことを自覚すると同時に、居心地のわるい執着心が頭をもたげてくる。やっぱり推しがいる生活に向いていない。常にブクガが最優先にできない自分に対する情けなさにじわじわと蝕まれる。

それでも、曲を聞いたりライブに行ったりするたびに、やっぱりブクガが最高だな…という気持ちに満たされて、自分は自分の距離感でブクガを追えればいいやと満足する。もう少しのところで楽しくなくなってしまいそうなところ、本当にブクガにはライブと楽曲の満足感で支えられた。気づいたらこれまでで一番、ファンでいることが楽しくなっていた。

そんな矢先に、妊娠が発覚し、体調のためにさまざまなライブを見送ることになり、さらにコロナ禍が始まった。

乳飲み子もいるわ世は緊急事態宣言だわで、外出もままならない。もはや自宅に幽閉されている感覚に陥っていた中、唯一の外との接点だったベランダで、子供をあやしながらイヤホンでブクガの曲を聞いていた。たった1〜2年前なのに遠い昔に感じる、あの日々に思いを馳せた。

 会社帰りに青山一丁目で降りて、月見ル君想フ(ブクガ定期公演のライブハウス)に向かったこと。もう何度この曲聴くんだよ…と思いながらリリイベに通った日々。21時をまわってクタクタでチェキ列に並んで、和田輪の顔を見て話すのは他愛のない内容だったけど、そういうどうでもいい日常が、振り返れば楽しかった。いつかあの日に帰ろう、帰れないかもしれなけど、帰ろうと思っていた。

そうしてコロナは収束せず、ブクガの新曲はリリースされないまま1年近くが経ち、2021年5月30日の、階数表示のないSolitude HOTELの開催が発表された。404の数字と、カウントダウンとともに崩壊していく公式サイトはたしかに終わりを予感させた。

終わりかもしれない。行く予定だった神奈川に、追加して名古屋のチケットもおさえた。しかし、体調が悪かったり、コロナが怖くてあっけなく行くのを諦めた。

昔は、なんとか無理して、無茶して、何かを犠牲にしてでもライブに行くのが当たり前だと思っていたけど、そういう距離感の取り方はもうやめようと思っていたので、決めたのは自然な流れだった。

ただ、その時はどこかで「ここで終わりになんてしないんじゃないか?」とも思っていた。だって、どうしても来られない人もいる中で、終わりにしてしまうなんていくらなんでもないでしょう、と考えていた。

2021年5月30日のこと

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終わりだというのを信じきれないまま、幕張アンフィシアターの座席につく。公式サイトでやってたように、ステージにもカウントダウンの掲示板でもあるんだろうと思っていたら、何もないまっさらなステージだった。それが突如暗転して、爆音の「last scene」が鳴り響く。

「sin morning」から始まり、淡々とつづく4人のステージは、絶妙なライティングにより現実感のない映像的な美しさがあった。やけにこもった大きな音と薄暗いステージだなと思っていたら、本当にそれは映像だったらしく、ステージ奥の4人がモザイクの向こう側にいってしまうと、前方の円形ステージからうずくまった真っ白な衣装の4人がせりあがる。

起き上がった生身の彼女たちが披露した「海辺にて」は、今までで一番美しかった。ひらひらと翻る唯ちゃんのスカートがとても印象的で、コショージのダイナミックな動きにいつも視線を奪われて。ブクガの身体表現の美しさはここまで高められていたのかと目をみはるほどだった。

大好きな「townscape」も圧巻だった。円になって踊る曲とアンフィシアターの円形ステージは相性がとてもよく、そう、こんなステージが見たかったのだと思わせた。最後、いつもは観客を振り向くような振り付けのところ、今日の彼女たちの視線の先には、過去の衣装を身にまとった4人(のダンサー)がいて、まるで過去の自分たちと対峙しているかのようだった。過去の曲をこうした新しい解釈で提示していくところは、本当にブクガのライブの醍醐味だと思う。

Maison book girlのロゴ入りの白い衣装をまとって、白いステージで歌い踊るブクガにはむき出しのプレーンな魅力があった。特に素晴らしかったのは、ハンドクラップ音だけでアカペラで歌ってみせた「夢」だ。初期のブクガにはサクライさんの奇抜な楽曲への評が先行するあまりに、どこか傀儡のようなイメージがつきまとっていたように思う。歌声がまるで添え物みたいな。しかし、もう楽曲がなくてもブクガはブクガとして美しいのだった。矢川さんと和田の歌声の伸びやかさが際立っていた。よくもまあ、違う歌声の魅力を持った人たちが集まったものだと思う。

「snow irony」は、いつもライブでブクガ特有の「コールがない」緊張感を破る存在として使われている。この公演でもやっぱりステージと客席の一体感が生まれて盛り上がったが、いつもならこの曲はどこかでメンバーも緊張感をゆるめるところなのに、この日はそれまでの演劇的な緊張感を持ったままで、熱がこもった「snow irony」をやってみせた。いつも、ブクガの演劇的なライブと、客席との一体感を煽るような「snow irony」などの楽曲の盛り上がりはどうも水と油感がつきまとうなと思っていたけれど、ここに来てそれが一番融合した完成形を見た。

どの曲を見ても、これ以上ないほど素晴らしくて、ここで終わりにしてほしくないとも思ったけど、同時に、ここで終わりにしてほしいとも思っていた。

考えてみればSH4Fの頃からずっと、ブクガは過去の自分たちを解体する作業をしてきたように思う。過去を解体し続ければ、未来なんて望むべくもない。ちょうど熱心にブクガを見始めた頃から、すでにこの日を迎える準備をしていたのかもしれない。

最後の「bath room」を歌う頃に、彼女たちの白いシャツにあったMaison book girlのロゴはなくなっていた。「bath room」も、イントロは同じでも歌詞もメロディも異なっていて、私たちが知っている曲ではなかった。

2014年11月に「サクライケンタがやる新しいアイドルグループ」が発表された時、一緒に発売された白いシャツがみょうにかわいく思えたので、衝動的に私はそのシャツを買った。どんなグループか、全然わからなかった頃のこと。ロゴ入りの白いシャツだ。あれから全然着ていなくて、一度は売ろうと思ったこともあったけど、売れないだろうなと勝手に思ってずっと手元にとっておいた。

一度だけ、現場に着ていったことはあったけど、それ以来ずっとしまっていた。ブクガにもしものことがあったときに着ていこうと思って奥にしまっておいたことを、私はこの日のステージが始まってやっと思い出した。そして、今はあのシャツがどこにしまわれているかわからなくなっていたことに急に焦り始めた。だから、4人が着ている白いシャツを見るたびに、あのシャツの行方がわからないまま、この日が最後になるかもしれないことにとても焦っていた。

しかし、最後に知らない曲をやった彼女たちのシャツにMaison book girlのロゴはなくて、なんだかほっとしてしまった。

彼女たちが一番潔く手放したその名前を、自分も手放すべきだと思った。

終わりになるなら、今日が一番ふさわしい。一番好きな姿のままで、目の前からいなくなってほしいと思った。

爆音の「last scene」で始まりへループするように、ステージが終了する。茫然自失のまま、ぱらぱらと力なく拍手し、アナウンスにしたがって退場した。帰りの出口で配られた紙に公式サイトのURLが書かれており、アクセスすると、そこには予告どおり何もなく、Maison book girlは削除されていた。

この時まで、やっぱり完全には終わりを信じていなかった。だけど、TwitterのTLに流れてきたナタリーの「Maison book girl活動終了」の文字で、ああ、本当に終わったんだなと思った。美しい終わり方だったけど、いつか戻れるとひそかに思っていた過去には、やっぱり戻れないということを思い知らされて少し泣いた。

終わりに

ブクガが終わったら4人はどうするんだろうと、考えたことがある。できれば和田輪にはもっと歌う姿を見せてほしい。矢川さんは80年代歌謡に振り切ったソロアイドルとして活動してほしい…なんて思っていた。でも、こうして終わりが現実になってしまうと、そうした妄想もなんだか傲慢なことのように思えてくる。

ブクガをやってた4人の子たちの、この先の人生が素晴らしく充実したものであればいいなと思う。

正直いって、amazonの特典トークイベントはなんだかんだ一度も行けなかったし、遠征は一度だけ。行ってないライブもめちゃくちゃある。買ったまま開封してない特典とかもあるよ、正直。ハタから見たらそんなに熱心なオタクじゃなかったけど、ブクガに関してはいいことしか思い出せなくて、いつも楽曲と4人の魅力に前向きな力をもらっていた。結局最後まで、無理しない距離感を保ったまま、ブクガを大好きでいることができた。いつも好きな対象に勝手に失望したり嫌いになったり疲れたりしてフェードアウトしていたので、こんなに清々しい終わり方は初めてだ。(裏を返せば、大好きなまま推しが消えたのは初めてだったが)

私にとっては約5年間、楽しい時間をありがとうございました。

 

コショージが2019年のライブで「ブクガはみんなの影」だと話していた。Maison book girlの世界観で見せてくれた雨のふる海や工場の景色は、行ったことすらないのになぜか懐かしくて、ブクガを聴いているときだけは、自分以外に誰も見たことない、認識できない世界みたいなものが見えるような気がしていた。

誰にも邪魔されない場所で寄り添ってくれる存在が、ブクガの曲だったように思う。

だからMaison book girlが消えても、この先、ことあるごとに曲を聴いて、その世界の存在を思い出すのだと思う。

男性声優楽曲大賞2017-今年の11曲

2017年も終わり…ということで今年も男性声優楽曲大賞をしたいと思います。

ルールはこちらです。

 

・2016年12月〜2017年11月に発表(発売ではない)された楽曲が対象
・1枚のCDから選べるのは1曲だけ
・が、これは!と思う1枚に限っては2曲選んでもよい

 

note.mu

 

それでは、今年の11曲を書いてみたいと思います。


11位 オジー自慢のオリオンビール柿原徹也

 

オジー自慢のオリオンビール

オジー自慢のオリオンビール

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 恥ずかしながらお酒がまったく飲めないうえに沖縄にあまり縁がなかったので、これがBEGINのカバーだって知らなかった…。今年たまたま沖縄にいって、居酒屋で三線の演奏があったときにこれが演奏されて、そのとき初めて、「BEGIN」のカバーだと知りました。

問題なのは、柿原徹也ってクリスマス生まれでドイツ出身なのに、どうしてこんなに沖縄ソングが似合うのかってことです。すごいよ。


10位 LOVE PLANET /アツト(CV.中島ヨシキ

箱庭の室内楽のハシダさんの曲。B-BOYで連載されている「ピンクとまめしば」というアイドルBLのキャラクターソングです。アリーナ規模のアイドルのはずなのに、このぺらっぺらな音はなんなんだ…と正直思うし、途中で入ってくる「アキトー!」という女子のコールだって、無理やりすぎてまったくアリーナを感じさせません。

ただ、この軽薄なきらびやかさをこれでもかと重ねたキラッキラサウンドと、意図的にやってんじゃないかとさえ思わせるこのダサさが、逆に、女性向けアイドルコンテンツ戦国時代でよくできたアイドルソングが大量に生産されていく2017年にひときわ異彩を放っていました。悪趣味なキッチュさがあってかわいい曲だと思います。

てか、中野ロープウェイで写真撮られてるミスiDファイナリストの地下アイドルとかが歌ってそう。


9位 ベイサイド・スモーキングブルース/入間銃兎(CV.駒田航) 

ベイサイド・スモーキングブルース

ベイサイド・スモーキングブルース

  • 入間銃兎(CV:駒田航)
  • アニメ
  • ¥250
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今年男性声優のおたくとして一番ブチ上がったコンテンツはやっぱり「ヒプノシスマイク」です。

最初は「いくら日本語ラップブームだからといって、男性声優さんにラップやらせようとは、安易な企画だな…」と思っていたのですが、1st LIVEがめちゃくちゃ面白くて、そのうえで木村昴さんほかキャストのみなさんの意気込みのすごさに触れ、その舐めた考えを改めることになりました。

歌と違ってラップは、慣れてない演者がやることにより、そこにその人の魅力や勘の良さが発揮されると思うので、こうして12人の声優の意外な一面に触れることができるのが楽しくて仕方ないです。そのうえで、楽曲もどれもよくて、そこに製作陣の真摯さを感じます。

謎の中毒性がある全員曲「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」もよかったですが、総じて楽曲がかっこいいのはやっぱりサイプレス上野や、ALI-KICK、HOME MADE家族のKUROが参加した「ヨコハマ・ディビジョン」に収録された3曲。中でも入間銃兎の曲は、駒田さんの声優としての演技と、ビートから意図的にずらしたりするリズム感やフロウの巧みさがいい塩梅に混ざってていいなと思います(って書いてるけどしょうじきラップの巧拙はいまだよくわかってない)。

木村昴さんがインタビューで「声優さんが演技をしながら発する言葉の強さは本職のラッパーにも太刀打ちできる」みたいな発言をしていたと思いますが、演技を挟んだ声の強さを、イケブクロとヨコハマの中で(※)一番感じたのは駒田さんでした。

ラップにも、声という楽器の良さは重要という話をRHYMESTER宇多丸さんがしていましたが、おそらくヒプノシスマイクの発端は「いい声のプロである声優にラップさせるとどうなるか」という実験から始まっていると思うのです。その実験の素晴らしい成果のひとつが駒田さんの銃兎のラップなのかなと思います。

(※シンジュクとシブヤ含めるとまた変わってくる)

 

8位 SICK SICK SICK/碓氷真澄(CV.白井悠介

SICK SICK SICK

SICK SICK SICK

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碓氷真澄くんはアプリゲーム「A3!」に登場する、ポストロックが好きな高校生です。ロック好きなキャラはよくいるけど、そのジャンルまで指定されたキャラは早々いないのではないでしょうか。しかもポストロックってところに10年代の高校生っぽさを感じます。A3!はほんとこういうキャラ造形の微妙な細かさがほんと最高。

この曲は、

真澄くんはいつもクラスの隅でヘッドフォンでポストロックを聞いている

きっと残響レコードが好きに違いない

残響レコード所属バンドっぽいキャラソンにしよう

という発想のもとに作られてるのではないかと妄想してしまいます。よく聞いてるとリズムパターンが多彩で、それがこの楽曲のラフさにもつながってる印象で、凝ったつくりになっている一曲です。また、真澄くんの口癖である「しんどい」が反映された曲の終わり方もめちゃくちゃいい。聴いてるこっちが好きすぎてしんどいわ。

さらにいえば白井さんがこんなに色っぽい歌い方ができるのか!という点もびっくりしました。歌がうまくなりましたよね…機械の力かどうかはわかりませんが。

残響つながりで第2弾のキャラソンは、照井さんにつくってもらいたい。A3!ならやってくれるはず。


7位 YOU/山中真尋白井悠介

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男性声優による名曲カバーCD「ダブルディアカバーズ」に収録された、SOFT BALLETの「YOU」のカバー。そもそもカバーソングが作られる背景には、「みんなが知ってるなつかしの名曲」でセールスを狙う、というのがあると思います。しかし、「接吻」や「シャドーボクサー」がカバーされているのを見ると、起用されている声優のファンの年齢層の「懐かしいライン」とは異なるので、セールス狙いなのではなく、むしろ「過去の名曲を再発見しよう」というコンセプトが感じられます。(名曲ルネッサンスてきな…)

そこで、この「YOU」です。不勉強なことに私はSOFT BALLETの曲を一度も聴いたことがなかったので、まんまとこの「名曲の再発見」にはまってしまいました。めちゃめちゃいい曲ですね…。

しかし原曲と聴き比べると、原曲の音数の少ないソリッドさが失われてしまっているのでアレンジとしては改悪かもしれません。なにより、間に入っているセリフを声優さんがいかにもな感じで読み上げているところが、原曲のファンが聞いたらキレられそうだな…と思いました。

しかし男性声優楽曲としては、この白井さんとまっぴーさんの十八番である吐息混じりの朗読が、不穏な曲にあらたな不穏さを与えていて、だいすきなんですよね…。怒られそうだけど。いかにもシチュエーションCDまたはBL的な男性声優の発声技法が、退廃的なニューウェーブとマッチするところはすごい発見だなと思います。

それと、山谷くんと高塚くんの「シャドーボクサー」も入れようか迷いました。山谷くんのシャリシャリした声はエフェクトとの相性が最高。あとこのアレンジが好きです。


6位 半脱ぎ★SOLD OUT!!/藍崎海人(CV.鳴海和希)/深紫塩音(CV.濱野大輝

半脱ぎ★SOLD OUT!!

半脱ぎ★SOLD OUT!!

  • アイドルDTI
  • J-Pop
  • ¥250
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 ヒプノシスマイクを脅かす2017年男性声優ラップソングの名曲…は言い過ぎかもしれないけど、佐伯youthKさんの曲はやっぱとことん気持ち良い感じになっているので選ばずにはいられないです。特にラップパート。スラップベースと高い音で鳴ってるギターに、濱野くんの低音と鳴海くんの高い声がのるのが好き。朝とりあえず景気がいい曲が聴きたいときにいつも聴いてました。

個人的には最初からウケをねらった出落ちコンセプトの作品て好きじゃないので、”脱衣アイドル”と言われてもへーそうですかーくらいにしか思わないんですけど、悔しいけどやはりこういう人を食ったようなバカバカしいコンセプトが歌詞としてのると、不思議なかっこよさがありますよね…。たとえば「裸と裸の間からI’m a 半裸」とか、「完膚なきショウタイム 見せつけよう塩タイム」とか。この出落ち感ある作品世界でかっこいいキャラソンができるのはひとえに佐伯さんの言葉遣いのセンスな気がします。


5位 What have you done for…/apple-polisher

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クソアニメとして2017年の話題をさらった「DYNAMIC CHORD」ですが、その楽曲はまったくクソではなく、その証拠としての一曲がこれ。エレクトロ風味なロック、どことなくサカナクションっぽい。そこにある蒼井翔太くんの伸びやかな歌声がいいですね。

ダイナーっていつもこれ誰つくってんだろ?ってびっくりするのに、作曲にクレジットはキャラ名なのが面白い。


4位 夜明けはまだ/斎藤壮馬

夜明けはまだ

夜明けはまだ

  • 斉藤 壮馬
  • アニメ
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 何をやっても間違いない声優斎藤壮馬くんの、間違いない2017年最新型ポップス。

幸せなダンスホールの一夜を思わせるような華やかな楽曲。こういう曲にはだいたい「とにかく踊って楽しく過ごそうよ」みたいな歌詞が入りがちですが、この曲は違う。

「くだらない ばかしあい 僕は踊らされていたい」だとか「都会の底のそこを天国と錯覚」だとか「ほんとうは芝居うち 夜を永遠に見せかけた」「考えるだけ無駄さ 所詮は生物」とか、一貫して人を酔わせる甘い空気感から背を向け、あえてその向こう側を見透かすポーズを崩さない態度。

”この甘い夜は嘘だと思ってるけど、いまはいいからここに身を委ねて楽しくやろう”、このひねくれ方がめちゃくちゃThis is 斎藤壮馬!!!!!だと思います。そして作詞クレジットを見ると児玉雨子さん。やっぱ斉藤壮馬はなにひとつ間違いがない。


3位 NEMOPHILA/QUELL(和泉 柊羽 (CV.武内駿輔)、堀宮 英知 (CV.西山宏太朗)、久我 壱星 (CV.仲村宗悟)、久我 壱流 (CV.野上翔))

NEMOPHILA

NEMOPHILA

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 ツキプロの曲って最近あんまりぱっとしないなあと思っていたところに現れたQUELL。キャラソンにしては地味と言わざるを得ないけれどめちゃくちゃ作り込まれている、という意味でGrowthの曲を聴いたときのことを思い出すQUELLの楽曲の中でも、一番好きなのがこの曲。

最小限の音数で、武内くんの咳払いの音や、そっとつぶやくような野上のラップなど、静謐さを聞かせるところがかっこよくて好きです。でも最後のほうでQUELLの会話がそのまま歌詞になってるようなところもあって、4人のユニットとしてのかわいさも表しています。

ほんとにこの野上のラップ大好きなんですよね、野上の新たな一面。このかっこよさを引き出してくれたという意味でもすごい曲です。


2位 いちにっさんかく/斑鳩三角(CV.廣瀬大介

いちにっさんかく

いちにっさんかく

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 まさかのサクライケンタが男性声優キャラソンに楽曲提供。斑鳩三角くんのキャラソンを作ろうと思ったときにサクライさんを起用したA3!運営の勘の良さが冴え渡る一曲です。

斑鳩三角くんて、つかみどころのないかわいい不思議ちゃんで、しかし病的に三角に固執するあたりに、なんとなく仄暗いものを抱えてそうな危うさが魅力のキャラなんですが、このかわいらしさと不安定さを両立させるためにはサクライケンタしかいなかったのではないでしょうか。

まず始まり方が三角の「みんなも一緒に歌ってね いちにっさんかく!」のセリフで始まるんですが、ここにぽつんと聞こえるピアノの音が、なんだかめちゃくちゃ違和感があって不安なんですよね。

サクライさんてブクガでもそうなんですけど、強烈な違和感を作り出せる天才なんじゃないかなと思っていて、それが三角の楽曲の重要なポイントになっています。

(ちなみにサクライさんの違和感が凝縮されたとんでもないブクガのライブ感想はこちら)

minaminanarial.hatenablog.com

でもいざ歌が始まってしまうと、幼さを感じさせる三角くんのかわいさが十二分に発揮されためちゃくちゃかわいい曲。このバランス感が絶妙だなと思います。サビ前は三角くんらしく3拍子が入ってるのもいい。間奏で何拍子なのかわからなくなるところもサクライさんぽくていい。サクライさんがこんなに三角っぽい曲をかけるのはもうサクライさんは三角なのではという気さえしてきます。

1位 New star/山田三郎(CV.天﨑滉平)

New star

New star

  • 山田 三郎(CV:天﨑滉平 )
  • アニメ
  • ¥250
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□□□の三浦康嗣さんが手がけたヒプノシスマイクのイケブクロ・ディビジョン、山田三郎の曲。キャラソン、アニソン界隈以外で名をあげている人が声優さんの曲を手がける場合、女性声優→男性声優という流れがあったような印象があるんですけど、三浦さんとサクライさんが起用されていたことに驚いた2017年でした。

やんちゃな兄たち、一郎と二郎とは異なり頭がキレる末っ子キャラの三郎。G線上のアリアをサンプリングしたブレイクビーツで、いろいろな意味で偏差値が高そう感が、いかにも三郎らしい楽曲になっています。

(むかし”音楽的な偏差値の高さが〜”と書かれた藤井隆の楽曲レビューを読んだことがあって、なんだそりゃと思ったけど、そこで「偏差値の高さ」として形容されたある種の音楽好きの頭でっかちな感じは三郎くんのキャラにも通じるところがあり、あえて偏差値高そうな曲と言わせてもらう)

かっこいいことこのうえない楽曲ですが、それよりも惹かれたのは、三浦さんの(?)山田三郎の解釈です。歌詞をつくる人たちは、私たちよりも多くのキャラクターの情報を仕入れてるのかもしれませんが、現時点ではカワイイけど毒を吐くかしこい少年、くらいの情報しかない三郎に、絶妙な中二病っぽさを加えてきたところにこの曲のよさがあります。

ふつうラップバトルって8少節くらいはないとだめだと思うんですけど「僕は1少節でいいよ」っていうあたりの、現実離れした感じとか。「はい、ワンパンでノックダウン」の、中学生が考えそうなふわっとした強さとか。極め付けは「ふと、こんな時たまに思うよ 普通の中学生だったらって」のフレーズ。たしかに普通の中学生ではないが、わざわざ自己言及する感覚が、三郎くんのたまらなく愛しいところだと思う。この歌詞を書いた三浦さんの意図が知りたい。(そこまでなかったりして…まあそれもいいんですけど)

それと、まさにフリースタイルダンジョン見てから初めてラップに興味を持ち始めた、まさに現在のラップブームゼロ地点にいる天﨑くんの、ラッパーを見てラップをしている感じが好きです。

たぶん、三浦さんがもし仮歌を入れてるならこんなラップってしていないんじゃないかと思うのです。むしろ「どうぞご自由に」「オーケーオーケー」などのセリフめいたところを日常会話のように言うと、より三浦さんの曲っぽさになるのかなと思います。

しかし実際は、天﨑くんが思うステレオタイプなラッパーの要素を取り入れている感じ。(イケブクロ自体がステレオタイプに寄せていく、というコンセプトだったのかもしれないけど)。ほかのディビジョンはわりと声優としてのセリフまわしてきな言葉の使い方に力を入れているのに対し、あまちゃんはラッパーになろうと挑戦している感じがします。

また、日常会話っぽくならなかったことのひとつの理由としてあまちゃんの発声法そのものが日常から離れたものとして訓練されてきたことにもよるのかもしれません。そんな声と三浦さんの楽曲が出会ってるところの不思議さもまた、声優楽曲の魅力なのかもしれません。

ラップの巧拙はおいておいて、あえて慣れないところに乗っていくあまちゃんの姿勢も好きだし、「本物になれてないそれっぽさ」もまた三郎のかわいさを体現する一つ要素になっていると思います。でも、ニコ生のフリースタイルもどんどんうまくなってるし、ぜひあまちゃんはラップってこんなにやればできるもんなんだよってところを見せてほしいです。

 

以上が今年の11曲でした。来年もこれ書くのだろうか…今年はもう昨年より曲数を聴いてないので来年はもう書けなくなってる可能性もありますが、ゆるっと男性声優さんは引き続き応援していきそうな気がします。

Maison book girl ワンマンライブ「Solitude HOTEL 4F」の感想

ブクガの4回目のワンマンライブSolitude HOTEL 4Fがとにかくすごかったので感想をブログにします。言語化不可能な世界を無理やり書いてみました。

一見、難解でクセのあるライブだったけれども、そこにはきちんと4人の女の子がいたよ、という話。難解な演出の解読はどなたかにお任せします。

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記憶が曖昧なので誤りがあったらごめんなさい。

 

ステージは、白い扉がひとつと、時刻を示すデジタル時計だけが設置されたシンプルなセット。開演前はなぜか2018年6月23日の日付で時刻だけが同じものを刻み続けている。このあたりからすでに時間感覚が少しおかしくなっていく。

ライブの幕開けはいつものように始まり、MCもなく淡々と進んでいく。
ブクガのライブは基本的に途中でMCが挟まれることがまれ。少なくとも私がちゃんと現場に行き始めた今年の夏ごろからは。前回のワンマンも、たしか本編にMCパートはなかったはずだ。

なのに、開始して30分でMCが突如スタート。そしていつも通りの、いや、いつにも増してゆるーいMCが展開されていく。矢川さんが「こんなに人が入ってるなんて!」と驚き、和田が「みんな無事にこの日を迎えられてよかったね」と、素朴な感想を口々にいいあう。コショージは、他のメンバーがしゃべっている途中でもへらへらと笑顔をふりまき、客席に手を振り続けていた。

このなんにもない、ゆるいMCが、逆に強烈な違和感を感じさせた。

その後もライブはすすんでゆく。しかし、今までほぼ生歌で歌われてきたところで、「faithlessness」では突然、歌声をかぶせたものになる。なぜこれだけかぶせなんだろう…と思っていると、曲の途中で突然4人の動きが止まる。しかしステージには大音量で鳴り続けるかぶせ音源。

かぶせ音源が大音量で流れる中で、歌うこと、踊ることをやめて扉の向こうに去ってゆく4人。アイドルのステージとしての、ある種のお約束を放棄していなくなっていく。

そしてデジタル時計の時刻がさかのぼり開演時刻になると、再びオープニングと、1曲目の「Sin morning」がパフォーマンスされる。突然のタイムリープだ。見ているこちらも今が何時なのか、わからなくなってくる。

さらに何曲か披露した後、立ち止まり観客に背を向けた4人はバックスクリーンに向き合う。そこには、同じく静止した4人が大きく映しだされており、それぞれが無表情の自分と対峙することになる。そこへ最新シングル「言選り」のイントロが流れ出す。観客に背を向け、後方へ手を振る振り付けから始まるこの曲は、まるでそれぞれが自分とさようならをしているように見えた。

さらにブクガのワンマンでおなじみになっているポエトリーリーディングを挟んでからは、街の雑踏のようにも聞こえる大音量が流れ出しそこへ私服のコートなどを羽織ったメンバーが現れてはステージをさまよって消える。激しいフラッシュにレーザー。感覚的にも、理性的にもひたすら私たちを混乱させる演出だった。

 

ノイジーな幕間を挟み、再びブクガが登場。

ここからセットリストはじょじょに盛り上がりを見せる。鋭い針のようにも見えるレーザー光線が突き刺すようにステージを照らす。そこへ衣装や身体があたるたびに、光が弾けるようにキラキラと反射した。

「十六歳」では、サビで4人が四方に駆け抜けては戻るを繰り返し、大きなステージでのパフォーマンスを印象づける。「出口を探して街の音を聞いているだけ」という歌詞が、先ほどの幕間の演出のことを歌っているように思えた。

そうして本編終了後、いつものように観客のアンコールが始まると思いきや、それは拍手を模したノイズ(足音?)にとってかわられる。不規則な、人間が行うには高度に思われる、奇妙な間隔で打たれるその音を、フロアの私たちはただ違和感を持って聞いているよりほかない。

そこへデジタル時計がどんどんと時間を遡っていく。表示されたのは2014年11月24日の17:10。ブクガが始めてお披露目された日だ。

そうして、ブクガがお披露目された当時の白いシャツの衣装で登場した4人。初期に発表した2曲を立て続けにパフォーマンスする。終始にやけた笑顔のコショージが印象的だった。

曲が終わると、ステージは明るくなり、混乱につぐ混乱を巻き起こしたステージをしてきたとは思えぬ、のほほんとした4人の顔が現れる。最後にコショージがふにゃっとした人懐こい笑顔で「これがメゾンブックガールです!」と高らかに告げた。

相変わらずの笑顔とその言葉の拙さに、確信があったのか、それとも言葉が紡げなくて唯一出てきた言葉がそれだったのかはわからない。もしかしたら2014年のお披露目ライブ当時に発した言葉だったのかもしれない。

だけど、あの笑顔が「メゾンブックガールです」と宣言するならば、混乱した頭では「そうなんだ」としか受け入れようがなかった。

このパートはほとんどMCらしいものはなく、4人は笑顔でお辞儀をし、手を振りながらステージを去っていく。それを呆然と見送る私たち。

バックスクリーンは、気づけばわれわれ観客をリアルタイムで映している。アンコールの拍手を響かせる私たちがうつったスクリーン。そこにステージはもはやない。Zepp Divercityには、私たちしか最初からいなかったように思えた。

今見たものがなんだったのか、不安になって、確かめたくて、アンコールをせがんで拍手する。しかし、何度拍手しても「以上をもちまして…」という終演のアナウンスが始まるだけ。三度目でいよいよ観客は諦め、素直に帰っていった。

久々に、観客がアンコールをこれだけ待っても頑なに出てこなかったアイドルを見た気がする。

会場から出ると、パイプイスの周りに散らばった、英語の詩や不可解な図が描かれた紙。

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あまりの乱雑さに、客が散らかしたのだと思ったのか拾ってイスのうえに置き始めた人もいた。ライブ終了後の、謎解きのカギにもなりえそうな重要な紙なのに、あちこちに散らばってるものだからうっかり踏んでしまうものもある。

徹頭徹尾、違和感がまとわりついたライブだったのだ。

違和感でがんじがらめにされた、難解なライブだ。

常識だと思ってアンコールをしようとしたら、それをノイズが阻む。今度こそアンコールと思って手拍子をして待っても来なかった。イスのうえに整散らかった紙を拾い上げて置いたら、それは逆に「不自然」な行動となったのだ。そもそも歌っている音源が流れる途中で、彼女たち自身が退出してしまうアイドルのライブは見たことがなかった。

さらに、フードの衣装は偶発的にさまざまなところで彼女たちの顔を隠す。また、ステージ後方から発せられる強い光のお陰で、長い間わたしたちは彼女たちの顔を見ることができない演出もあった。姿を見にきているのに、それが隠される。

 

ブクガのライブはわたしたちをアイドルのライブの「いつも」から遠ざけた。

しかし、不思議なことに遠ざけられれば遠ざけられるほどに、ちらりと見える4人の女の子たちの表情や息遣い、ダンスの身のこなしなどの身体性がより強調される気がした。それは「rooms」のサビの無音になるところで彼女たちがステップを踏み続けるために、生の足音だけが会場に響くのと同じように。

今日ほど彼女たちのいい意味で中身のない他愛もない会話を愛しいと思ったことはないし、今日ほど素朴な笑顔が目に焼き付いたことはかった気がする。そして、一見無機質な楽曲にのる彼女たちの歌声は、今日までのトレーニングの成果なのかいつにも増して音量があり、生々しく響いていた。

「これがメゾンブックガールです」という言葉が、どこまで意図していたのかわからない。

混乱した私たちに見せつけてやったという高らかな宣言だったのか。混沌としたステージをまとめるための無邪気な発言だったのか、このはかりかねるところに、ブクガのアイドルとしての魅力が凝縮されていると思った。

当たり前を、ことごとく突き放してくる。けれどもすごくキュートでふつうな女の子たち。

個人的な思い出話をすると、私は1stワンマンと、それ以前のライブに1〜2度だけ足を運んでいたけれど、そのころは実はまったくピンときていなかった。なんとなく、プロデューサーのサクライさんの実現したい世界観をストレートに表現するためのアイドルという印象で、そこにあまり食指が動かないなと感じたのを覚えている。

今回のライブはその頃よりも、サクライさんの表現したいものへのこだわりの強さが現れたものだったかもしれない。けれど、そこでブクガの4人は伝えるための媒介に徹するだけではなく、むしろ彼女たちのふつうの女の子としての魅力が、共犯として私たちを混乱させる役割を十分に担っていた。そして、すでに演出の難解さに負けない、骨太で力強いパフォーマンスの力を身につけていたのだ。

本当にすごいものを見たなと思った。これからブクガはどうなっていくんだろう。

でも、表現の難解さとはうらはらに、ブクガの4人の生身のアイドルとしてのチャームは、増していく一方だ。だからとっつきにくさに尻込みしてる人がいたら否定したいなと思って書いてみた。


誰にむけて布教したらいいのかわからないけど、もっと人気になってほしい。

2016現場記録&おたく生活の振り返り

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毎年恒例の入った現場振り返りエントリーです。生で声優や俳優、タレントなどを見に行ったものは舞台でも無銭でもカウント。ライビュはノーカウントです。

 

1/9 「KING OF PRISM by pretty Rhythm」舞台挨拶

*この頃はアイムエンタープライズの影を引き継いでいく気がしたストイックな若手声優永塚くんを推そうと思ってよくプリティリズムのことよく知らないのに気合入れてキンプリを見に行ってた。結局7回も見た。7回しか見てない、とも言えるが…

1/10 Letters from Tokyo

*ホテルで紅茶を見ながら楽しむという謎の声優ポエトリーリーディングイベント…腐女子役のコーラスの人とか出てきてなんだかぐったりした。

1/16 うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVELIVE5thSTAGE

鈴木達央が骨折して出てきたときは、よりによってこんな時にこの人ばかじゃねーのって思いました。このころは好きでしたからね。

1/17 うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVELIVE5thSTAGE

1/23 舞台「JAM TOWN」

*ニッキ演出、藤井隆出演の横浜を舞台にしたお芝居。めっちゃ楽しかった。終わった後は中華街でご飯だったのも横浜っぽい思い出。

1/24 枕男子イベント

2/7 山本和臣アルバム発売記念2ショット撮影会

   柿原徹也 5th Anniversary Live 

2/10 OLDCODEX「Veni Vidi」武道館

2/11 OLDCODEX「Veni Vidi」武道館

*このライブ見て泣いてた、この頃はまだTa_2さんのこと愛しいなと思ってた。

2/13 雨色ココアバレンタインイベント 昼/夜

2/14 魅惑のノーパンラジオ公録

2/15 舞台「ハイキュー」

2/21 よしまさせいごCD発売記念サイン会

2/27 鉄血のオルフェンズDVDお渡し会

*2度目の細谷佳正との接触

2/28 声優寮へようこそ購入者特典イベント

3/2 生ハムと焼うどん2ndワンマン「生と死」赤坂BLITZ

3/4 きゃらくるみ くるみ会

3/6 増田俊樹主催「お前と芝居がしたいんじゃ!」昼/夜

3/9 キンプリサンキュー上映会

3/11 防衛部活劇

3/12 B-project1stSTAGE2016

3/13 羽多野渉フリーライブ

3/20 田中くんはいつもけだるげアニメ先行上映会

3/21 キンプリCDリリースイベント1回目/2回目

3/26 Anime Japan

  (天才軍師お渡し会、ももくりトークイベント、ツキクラお披露目)

*天才軍師のハンガーお渡し会、細谷さんも安元さんもブレない優しい対応で超幸せな接触だった。そしてこの日、暇だったのでふらっと見に行ったツキクラにこの先通うことになろうとは。

3/27 Anime Japan

  (ツキプロいぶラジ公録)

4/3 SRXイベント

4/10 ツキプロライブ昼/夜

4/17 モテ福祭り昼/夜

*山谷くんとあゆのフリースタイルラップバトル()面白すぎた。トイレ兄弟大好き。

4/24 lyrical school「RUN and RUN」リリースイベント吉祥寺ヨドバシ

4/30 ツキクラグリーティングイベント福島

   ツキクラグリーティングイベント宇都宮

5/3 Plastic Tree「剥製」新潟LOTS

*家に財布を忘れて新幹線乗る直前に戻るわ、開演ギリギリに着いたのに夜行バスで帰るわ、まるで隣の町でやってるかのごとくゆるーく行った新潟遠征だった。帰りにのどぐろの炙り寿司食べた。美味しかった。今年一番遠くに行った遠征が新潟!!!時代の移り変わりを感じますね。

5/8 キュートランスフォーマーイベント昼/夜

5/14 ガンスト新宿イベント

   月歌亭ツキクラお手伝い(筆村/古畑)

*ふーくんのアイドル反射神経がすごかった

5/15 お前らのためだろ第48弾 夜の部

鈴木達央の女装、ツルツルの足に感動した。この頃はまだ好きだったからね。

5/22 月歌亭ツキクラお手伝い(市川/松岡)

   天才軍師イベント(ハンバーグ/寿司)

5/29 月歌亭ツキクラお手伝い(荒/菊地)

6/4 月歌亭ツキクラお手伝い(大島/古畑)

   Mマス1st stageチアリング上映会

6/8 舞台「コメディカルナイト」

6/10 舞台「コメディカルナイト」

6/11 舞台「コメディカルナイト」

6/12 舞台「コメディカルナイト」昼/夜

6/18 SERVAMPアニメ先行上映会

6/19 ダイヤAコラボヤクルト対西武戦

*前日のサーヴァンプ楽しすぎて急遽行ってきた達央、俊樹、壮馬くんたちが出るトークショー付き野球観戦。野球観戦は物心ついて以降初めてだったけど楽しかった。そしてヤクルトの東京音頭を踊る声優たちかわいかった。

6/25 ツキクラグリーティングイベント富士見

7/1 ツキクラ2ショットチェキ会

7/18 TSUKINO CROWD FESTIVAL 2016 SUMMER

   東アニの目覚め夜

7/24 ビーズログファンミーティング

7/31 イケメン戦国イベント昼/夜

8/1 V-nation

8/11 犬小屋ちゃんねるイベント

8/14 ハイスピード!上映会&トークショー

8/27 HAPPY STYLE Boys PARTY

*筆村くんや奥山けいてぃーがいるスタキュの男性声優イベント。筆村くんとけいてぃーのダンスがかっこよすぎだしSTYLE FIVEのカバーやってくれるし最高だった。

8/28 ツキクラ浴衣上映会

   ツキクラ浴衣チェキ会

9/3 七つの大罪イベント夜

9/11 双星の陰陽師イベント夜

9/13 アイキャラFes

9/18 東京ゲームショー(Bit cashひらがな男子トークイベント)

   ツキクラ「未来のPiece」リリイベ大宮

9/19 チア男子最終回直前上映会

9/24 防衛部伊香保温泉トークショー

*声優見に行きがてら温泉に入れるし接触もできる幸せなイベントだった。伊香保温泉の公営浴場のお兄さんがとっても優しくしてくれた、旅のいい思い出。伊香保いいところ!

10/1 ツキクラ運動会

10/10 Plastic Tree「Black Silent/White Noise」東京国際フォーラム

10/13 劇団番長ボーイズ☆「天下統一恋の乱 Love Ballad」

10/27 Plastic TreeFC限定ライブ「有村クロの東京仮装倶楽部」東京キネマ倶楽部

*40代中盤に差し掛かるまごうことなき中年である長谷川正のコープスプブライドのコス、美しくって感動した。

11/5 「鷲崎健白井悠介のRadio X計画」スペシャルイベント

11/6 美男高校地球防衛部LOVE! LOVE! LIVE!

11/16 Hasegawa Calling

11/19 モテ福祭り昼/夜

11/26 ツキクラ「未来のPiece」リリイベ浦和美園

11/27 声優男子ですが…?イベント「声優男子学園スペシャル参観日ですが…?」

12/3 藍さんの芸能音楽研究部

*今年唯一の女性声優現場。のっちさん元気でかわいかった。

12/13 TSUKINO CROWD FESTIVAL 2016 WINTER

12/18 オトメイトチャンネルクリスマススペシャルイベント

*梅ちゃんが山谷くんの第一印象に「意識高い」って言ってたのと、天崎くんがひたすらやばいキャラだってのがわかったいいイベントだった。イノエルも最高にかわいかった。出演者全員大好きなイベント、声優現場納めとして最高だった。

12/29 Plastic Tree年末公演ゆくプラくるプラ1日目

12/30 Plastic Tree年末公演ゆくプラくるプラ2日目

 

総数 94

【人別内訳】

鈴木達央 13

山谷祥生 20

市川太一 24

細谷佳正 7

白井悠介 8

長谷川正 7

細谷より多く白井さんの現場に行ってることにびっくりした。さすがイベント映えする白井さん…。

 

今年一番楽しかったのはやっぱり天才軍師のイベント!会場にいるおたくの恋愛相談に対し熱くなる細谷佳正を生で見ることができて本当によかった。時にはリスナーの恋愛相談を、自分の黒歴史を掘り起こすからと、怒って破り捨てるやばいラジオパーソナリティー細谷佳正くらいのものです。本当にいいラジオ番組。

あと、ツキプロライブもめちゃくちゃ楽しかった!いい曲しかない声優ライブ!Growthの「空想のイデア」の中でみんなの顔を見て笑った山谷くんの剣介っぽさは忘れないです。

あとなんだかんだ一番行ったツキクラは、やっぱりこれからも応援していくのかなあと思います。みんな面白いし、かわいいし。クラフェス夏で市川くんが選抜漏れしたのが悔しくて、冬でユニット曲がなかったのが残念だったので、来年は市川くんがたくさん歌う場面に出会えるようできる限り投票とかしていきたい。

 

2016年は色々と自分の心境として大きく動いた年だったと思います。なんかもう今までのようにおたく活動がそこまで楽しくなくなってきて、そろそろおたく辞めようかなと思い始めました。何があったわけでもないけど。

でも、最近になって、おたくをやめるのが最適解なのではなく、自分に合った楽しみ方はこれじゃないなと気づいたから、それを変えていくだけなんだなと思いました。そう、そのせいで10月以降現場数が減りました。

現場に行かなくなってから、星野源ほしのげんと騒いでみたり、海外旅行が楽しかったり、Sherlockを見始めたりと、新しい生活の楽しみ方を模索してるところです。またイギリス行きたいしSherlockのロケ地は絶対行きたい。

でもおたくやっててよかった〜〜!と深く感じたこともいくつかありました。これ以上よかったと思うことはないかもしれないと思ったことが何度かあった2016年でした。

仕事や生活の中で辛いことがあってげんなりしてても、別の名前でアカウントをつくって小さなことで一喜一憂することで、つらいことが紛れるなあという感覚を久々に思い出しました。だから相変わらず、ちょこちょこイベント行ったらはするんだろうし、引き続き新しい沼的なやつも探すのだと思います。

沼って言い方は全然好きじゃないけどね。溺れることを、足をとられ深みにはまることを楽しいと思える時期が過ぎてしまったのかも。

あと、鈴木達央にあまり興味を持てなくなったことも大きいかな…。LiSAちゃんのことがきっかけではないけどw 総じて、なんか歳とったんだろうなと思いました。

 

2017年はPlastic Treeが20周年ということで、プラのライブにできるだけ行きたいと思います。冒頭の写真は、12/30現場納めのプラ年末ライブ終演後の忘年会で。写真の通り、みんな別のジャンル行ったけどいまだにこうして集まれるのはひとえにプラがバンドを続けてくれるお陰だから。続けることって偉大だし尊いことだ。

 だから、引き続き楽しく毎日を積み重ねていきたいと思いました。

 

 

男性声優楽曲大賞2016 今年の27曲

2016年男性声優楽曲大賞を今年も選びました。今年は27曲!正直上位10曲以外は序列ってほどの序列がついてません。あと、推しのいる楽曲はやはりかなり上位に入れてます…。

ルールはこちら。

・2015年12月~2016年11月に発表された曲が対象

・1枚のCDから選べるのは1曲だけ

・しかし、これは!と思う1枚に限っては2曲選んでもよい

 超個人的男性声優楽曲大賞2016(前編) - and i like betty*

 

20位圏外

星空ランデブー/石膏ボーイズ(聖ジョルジョ(杉田智和),メディチ(立花慎之介),ヘルメス(福山潤),マルス(小野大輔) ) 

星空ランデブー

星空ランデブー

 杉田が杉田っぽい。石膏ボーイズだけに音がバキバキ重ためでかっこいい。あと、作詞のボンジュール鈴木がカバーしたバージョンがとにかくいいです。

Perfection Gimmick/IDOLiSH7(和泉一織(増田俊樹)、二階堂大和(白井裕介)、和泉三月(代永翼)、四葉環(KENN)、逢坂壮五(阿部敦)、六弥ナギ(江口拓也)、七瀬陸(小野賢章))

Perfection Gimmick

Perfection Gimmick

 たくさんある二次元アイドル楽曲の中でひときわ王道のパワーを感じさせた曲。メロディもトラックも歌詞もすべてがちょうどいい感じします。

Toy Garden/恋歌ロイド Type3 響&玲-キョウ&レイ-(寺島拓篤羽多野渉

イントロのスラップベースがめちゃかっこいいドラムンベース。ちなみに恋歌ロイドシリーズは細谷佳正の演じたType2が至高。

Fly away!/和泉一織(増田俊樹)、七瀬陸(小野賢章

Fly away!

Fly away!

 安定のshinnosukeさんっぽい80sなファンクサウンドにのせてクールなツンデレ弟キャラと元気主人公お兄ちゃんキャラの掛け合い「相変わらず生意気いつだってかわいげがない」「あなたにかわいいなんて思われなくてもいい」というときめきフレーズが胸を撃ち抜いてくる。「あなたにかわいいなんて思われなくてもいい」ってすごいよな。かわいいって思われる可能性があることを秘めているもんな。

Naked Moon Light/日向樹(浪川大輔) 、壁井柚(柿原徹也) 、朔久間柊(羽多野渉

イントロの不埒なベースラインに、笑ってしまうほどに吐息だだ漏れの浪川さんの不穏な声が重なるあたりからしてもう最高の予感しかない曲。柿原さんと浪川さんのアクの強い歌声が、夜の香りのバンドサウンドに絡まってかっこいいんだか笑っちゃうんだか紙一重。特に1番の最後の浪川さんの歌い方が、なんかもう。すごい。間奏のジャジーなギターも、ものすごくかっこいいのに、ここでも3人の吐息の音が重なって笑いをこらえきれない。ギリギリなかっこよさをひたすらいく問題曲。

Silent Oarh/Knights(月永レオ(浅沼晋太郎),朔間凛月(山下大輝),鳴上嵐(北村諒),瀬名泉(伊藤マサミ),朱桜司(土田玲央))

昨年のVoice of Swordに引き続き今年もKnightsの曲がかっこよかった。ミディアムテンポなR&Bなのかなと思いきや、サビでテンポアップし、メランコリックなメロディが高みに向かってより切なくなっていく展開がたまりません。元気な少年役の多いイメージの山下大輝さんの、艶っぽい歌声が遺憾なく発揮されてて息を呑みます。3次元ボーイズグループがリアルに歌いそうな曲。

Night Drivin'/小野賢章

Night Drivin'

Night Drivin'

 なんか、こう、すごい今っぽい感じしませんか。俳優としても声優としてもキャリアを積んでる今っぽい男の子が歌ってる曲としてど真ん中って感じでかっこいい。

20位:Sugar,Sugar/宮野真守

Sugar、 Sugar

Sugar、 Sugar

 宮野真守さんの出す曲がいいのはもう明白なのでわざわざ書くのもどうなのかと思いつつも、やっぱりいい曲なので入れてしまった。低音の効いたディスコが最近のK-POP(ていうかSMエンタ)の流れを汲んでるみたいだ、というレビューにしようと思って作曲クレジット見たら、ほんとにそっちのクリエイターの方でした。

19位:border-line/寺島拓篤 

border-line

border-line

 ポップでいることも、耳ざわりのよさも捨てて、クラブミュージックっぽい音像とひたすら変化していくビートの面白さだけで聴かせていく、男性声優楽曲として思い切ったものになっています。この曲で一番派手なのは間奏部分で、歌はどちらかと言えばトラックより下位に置かれているような印象。歌ものとしての優秀さを求めないことで曲のかっこよさを守りきった感じがします。寺島拓篤さんのストイックな声優としてのスタンスがソロワークスのこうした思い切りのよさに現れているのかもしれないなと思いました。

18位:花丸日和!/大和守安定(市来光弘)・加州清光増田俊樹

花丸◎日和!

花丸◎日和!

 和楽器が入ると変に和のテイストを意識した楽曲になりがちだと思うのですが、この曲はそれがなく、ポップなバンドサウンドになっています。軽やかな和楽器の音色に、安定と清光の丸っこいボーカルと、「いえー」とか「ふー」とか脱力感のある合いの手がかわいい。女性声優の曲っぽいなと思いました。

17位:/月皇遥斗(子安武人

Everlasting Moon

Everlasting Moon

 山下達郎堂島孝平がジャニーズに提供するようなアーバン歌謡な曲は、男性声優にもちらほらあるにはあるけれど、もはやオールドスクールな「男性声優」のアイコンとして存在するベテランの子安さん(子安で画像検索すると私の言いたいことがわかるはず)が歌っていることで、曲の持つ歌謡曲っぽさに納得感をもって聴くことができます。過剰にならないあっさりしたボーカルが心地よい。スタミュはやく2期やってくれ。

16位:iiiiiLOVE YOU!!!!!/芹澤悠吏(浪川大輔)、不破渓士(前野智昭)、桃越ハル(鈴村健一)

iiiiiLOVE YOU!!!!!

iiiiiLOVE YOU!!!!!

  • 芹澤悠吏(CV:浪川 大輔)、不破渓士(CV:前野 智昭)、桃越ハル(CV:鈴村 健一)
  • アニメ
  • ¥250

 突如ハイテンションなピアノとホーンセクションで曲が始まり、浪川さん演じる芹澤の不穏なボーカルが「学校帰りの公園」と状況を説明してくれると前野演じる不破&鈴村さん演じる桃越の「ああ、君か」「ねえこんなところで何してるの?」とセリフが入り、開始30秒でリスナーは藤城学園のマドンナになれます。最終的に「アイアイアイアイアイラブユーがあいあいあい、合言葉さ!」という突き抜けたサビで告白され、圧倒されていると突然鈴村さんのラップパートがねじ込まれ、矢継ぎ早にまたミュージカル調なボーカルやセリフが繰り出される、ひたすらハッピーでシアトリカルな一曲。終わったと思ったら不破の「からの、もう1回」でまた再開するのも、男性声優が歌う曲ならではの遊び心に溢れています。

ていうか、この曲もっとたくさんの人で歌ってるんだと思ってた……あと、キャスト見ないで聞いてた時、ラップパートは鈴村さんじゃなくて森久保さんだと思ってました。

15位:Sweet Sweet Sweet/一条シン(寺島惇太 

Sweet Sweet Sweet

Sweet Sweet Sweet

 今年の上半期、おたくの話題をさらった『キンプリ』主人公、一条シンくんのソロ曲は、「likeとloveの違いも僕には見分けがつかなくて少しがっかりさせてるかな」などのシンくんらしいウブで純情なフレーズに溢れています。単純にそれだけだったらまだお行儀が良いラブソングですが、問題は「方向一緒だから送るね。そんなの嘘だよ気付いてるんでしょ?」というフレーズが意外すぎて…。好きな女の子に近づきたくて嘘をつくあたりに、更に「僕のsweetなんてあなたには子供だましだけど」というフレーズに少し拗ねた表情を見せる歌声に、一条シンくんの男としてのいじらしさを感じて、聴いていて邪悪な笑顔にならざるをえません。いや、もっと言えば「あなたには子供だましだけど」であからさまに拗ねた声で歌ってくるあたりに、今年一番見つかった感のある男、寺島惇太の声優としてのいじらしさを感じてしまいます。ゆるんだ笑顔で「趣味はパチスロ」と公言するのに、声優として決めるところはきっちり決めてくる、素直に「売れたい」と言ってたじゅんた。来年も目が離せない。

14位:Day you laugh -latin style-/豊永利行 

Day you laugh -latin style-

Day you laugh -latin style-

  • 豊永 利行
  • アニメ
  • ¥250

 昨年リリースされたシングルDay you laughのラテンアレンジ。原曲ももちろんかっこいいのですが、ラテンアレンジが更に、豊永さんの歌声の骨太な男の色気を研ぎ澄ませています。アレンジ自体は原曲に比べシンプルになった印象ですが、物足りなさを感じさせないのは圧倒的な歌唱力があってこそ。個人的にはこっちのほうが豊永さんの声が際立つので好きです。純情だったり気弱だったり子供っぽい役を軽々やってのける高い声の中に、30代男性の色気を同居させる豊永利行ってすごいな…というのを改めて感じた2016年でした。ハイスピード!にもB-projectにも、SOARAにも文豪ストレイドッグスにも、どこにでもいるのにそんな豊永さんの凄さに年末のユーリ! on Iceで初めて気づくなんて手落ちでした。そもそもこんなかっこいい曲を自分で作ってるというのを今年初めて知ったなんて完全に手落ちです…。自分で作曲する超絶歌の上手い声優…そんな人他にも思い当たるわけですが、本当に推すべき存在は、豊永さん、あなたなのかもしれません。すみませんでした。

13位:Check it love!/Epicurian(戌井ケラ(江口拓也), 木戸ロミオ(増田俊樹),御剣サエ(島﨑信長), 一色ノゾミ(鈴木裕斗))


【Rejet】FORBIDDEN★STAR Epicurean「Check it Love!」 MV

缶バッチ量産会社として名高いrejetですが同時に名曲を量産する会社でもあるrejet。80sエレクトロなイントロがかっこいいUNICORN Jr.の「F.A」も入れようか悩んだけど、Epicurianの「Check it love!」は2次元ボーイズグループとしてのポップさとシンプルかつ力の抜けたバンドサウンドのかっこよさの同居が珍しいなと思ったのでこっちを入れました。意外とこういうロックは男性声優は歌ってない気がする。「Please kiss my love」のところもかっこいい。なんかちょっとNEWSのFightingManににてる気がしなくもないですがVERY GOOのクリエイターの作曲だったので目を瞑ろう。ぎょすと信長くんが同じグループにいてアニ◯ズだ!って思えるのも、キズナイーバーで信長くんと西山さんが共演した2016年らしくてよいです。

12位:イっちゃいそうだよ/F∞F(愛童星夜 (KENN)、湊奏多(井口祐一)、御剣晃(豊永利行))

ミュージック│アイ★チュウ 公式サイト

チープなビートにチープなラテンめいたシンセが乗って疾走感のままに最後まで突っ走ってしまう。あいた音の隙間を埋めるようにKENNアンド豊永さんのカロリー高めな歌声が響くのでちょうどよし。更に、このハイカロリーな二人の歌声の狭間で最高に脱力させてくれる井口さん演じる湊くんの不安定な歌声が、アクセントになってて、なんだかクセになってしまう。声優っぽいいびつな魅力に満ちた曲だなと思います。アイチュウの曲って全体的なチープさは否めないけど地味にいい曲が多い。

11位:トップランナー入野自由

トップランナー

トップランナー

 佐伯youthKの曲にMummy-Dの歌詞というクレジットを見ただけでいい曲の予感しかなかったですがそれをまったく裏切らない曲でした。自由くんのフロウがMummy-Dまんまで、「I am I」とはまったく違うところに彼の器用さを見てしまいます。声優として、あるいは舞台役者として若くしてトップランナーになった彼が海外留学を発表し、その直前にリリースしたこの曲で、「悪くない、いや、決して悪くないが何かが足りないんだ」と瑞々しい焦燥感を歌い上げるなんて、かっこよすぎる。しかも、こうした純粋に高みを目指そうと走り出す若者の焦燥感について歌詞を書いてるMummy-D本人は、RHYMESTERで”ひたすら走り続けて、走り続けるうちに背中を追ってたライバルもいなくなった”という曲「フットステップス・イン・ザ・ダーク」を作っている、というのもこの曲の面白さ。「今俺はトップランナー?ラストランナー?いずれにせよバトンは握ったままさ」という、走り続けた先の決して晴れやかでない景色を見ている40代の男が、走り出そうとする20代の男の詞を書くと、説得力が違うなと思います。

 

ベスト10

10位:You Only Live Once/YURI!!! on ICE feat.w.hatano 

You Only Live Once

You Only Live Once

  • YURI!!! on ICE feat. w.hatano
  • アニメ
  • ¥250

 最初から最後まで繰り返される短いフレーズが一曲をつらぬく構成はアニメのEDとしてすごい優秀。さらにこの曲にinstagramを次々と見せるアニメーションをつけたユーリのED制作スタッフも優秀。EDテーマとしての機能に特化しすぎて1曲通した全体の展開がやや単調だったのが残念ですが、美しく儚いフレーズのループに「このままユーリ!!! on ICEが終わらなければいいのに…」と願ってしまいたくなるので、名曲には違いないのです。

9位:KUMAMIKO DANCING/雨宿まち(日岡なつみ)&ナツ(安元洋貴) feat.熊出村のみなさん

KUMAMIKO DANCING (feat. 熊出村のみなさん)

KUMAMIKO DANCING (feat. 熊出村のみなさん)

 ほ、星野源オールナイトニッポンでこの曲絶賛してたからランキングに入れたわけじゃないんだから!この曲かけた時に「僕、安元さん大好きなんですよね…安元さんになら抱かれてもいい」とか星野源が言ってたせいで、星野源のことを見直すきっかけになり、今や星野源を見ただけで興奮して「げん〜〜〜〜〜!!!!!!」て叫びたくなるし、安元さん自身も星野源が大好きで、その後星野源オールナイトニッポンスペシャルウィークゲストとして安元さんが登場したのが今年一番興奮した思い出だったからといってこの曲をランキングに入れたわけじゃないんだから……!!!!

すみませんでした。

そういうのを抜きにしてもこの曲が面白いなあと思うのは、太鼓や笛の音、琴の和音階が入って、更に熊出村村民の田舎なまりラップも入ってアニメの世界観そのままなのに、ビートが立ってて、削ぎ落とされた今っぽい音になっているところ。サビ前のラップのところとか、なぜかかっこいい。星野源も言ってたけど、間奏で村民の台詞が入ってくるところ、裏で鳴ってる控えめで叙情的なエレクトロピアノがとてもよい。

星野源はserphっぽって言ってた。確かにそうかもしれない)

8位:LAPIS BLUE/SOARA(大原空(豊永利行)、在原守人(小野友樹)、神楽坂宗司(古川慎)、宗像廉(村田太志)、七瀬望(沢城千春))


ALIVE(SOARA・Growth)/SolidS花鳥風月シリーズ「鳥」MV 6月24日発売予定!

2016年のSolidSGrowthSOARAシリーズはだんだんとそれぞれの「らしさ」という枠が溶け出してグループごとに表現の幅が広がっていった印象でした。SolidSが「ライアクライア」のようにGrowthのような美しいハーモニーの曲を出したのも驚いたし、青春バンドサウンドがコンセプトだったSOARA変拍子に乗って叙情的なメロディを歌う「LAPIS BLUE」も、新鮮でした。ていうか、じょんさんっぽさ炸裂。

SOARAは豊永さんと小野さん以外もボーカルをとるようになってから、ぐっと面白くなった気がします。特にLAPIS BLUEは歌い出しの古川さんの低い声が情感たっぷりに聞かせてくれて一瞬で引き込まれる。そしてBメロで、一番SOARAっぽい青臭さを体現する沢城千春さんの声が聞こえてきて、最後の最後に「見渡す限りのLAPIS BLUE」というタイトル通りの、たった一言のフレーズを、ミスターSOARAの豊永さんが歌うところが最高にサビまでの期待感を煽ります。

「はやりの髪型やおしゃれもしないで僕らが真面目に極めた紙飛行機」ってフレーズを豊永さんが歌う時の、青春の象徴としてのSOARAの説得力なんなんだろうね。ていうか豊永利行の声がキャラクターを持った時の説得力すごいよね。

7位:ドラマチックLOVE/(一条シン(寺島惇太)、太刀花ユキノジョウ(斉藤壮馬)、香賀美タイガ(畠中祐)、十王院カケル(八代拓)、鷹梁ミナト(五十嵐雅)、西園寺レオ(永塚拓馬)、涼野ユウ(内田雄馬))

ドラマチックLOVE

ドラマチックLOVE

  • 一条シン&太刀花ユキノジョウ&香賀美タイガ&十王院カケル&鷹梁ミナト&西園寺レオ&涼野ユウ(CV.寺島惇太&斉藤壮馬&畠中 祐&八代 拓&五十嵐 雅&永塚琢馬&内田雄馬)
  • アニメ
  • ¥250

2016年前半、多くのおたくがキンプリを見に足繁く劇場に通っていましたが、1時間フルボッコで殴られるようなアニメを見た後でくたくたになっているところに、清涼剤のようなこのEDテーマが流れてくるのが、気持ちよすぎて劇場に何度も足を運んだという人も少なくないはず。何年たっても飽きないし色褪せない美しいポップソングです。サビ前に音がぱったりやんで「恋した」と呟くように歌われるところに、しみじみと「恋って美しいなあ……」と思ってしまう。

ちなみにEZ DO DANCE-K.O.P REMIX-も入れようかと思ったけどあっちはカバーだからということでこっちにしました。プリリズシリーズでいくつかボーカルが異なるEZ DO DANCEのリミックスがありますが、K.O.P REMIXがすごいのは、完全にGackt歌唱な恐るべき19歳武内くんに、小室サウンドを歌わせたところ。小室哲哉の時代を経験していないのであろう若者から放たれる伸びやかなファルセットがこんなに小室サウンドにマッチするとは新感覚すぎた。そこに追随するだーますさんも、この曲では武内くんに負けないように強めの歌い方してるのが好きです。がんばってる。

EZ DO DANCE -K.O.P. REMIX-

EZ DO DANCE -K.O.P. REMIX-

 6位:歓迎☆トゥ・ウィンク雑技団/2wink(葵ひなた(斎藤壮馬),葵ゆうた(斎藤壮馬))

歓迎☆トゥ・ウィンク雑技団

歓迎☆トゥ・ウィンク雑技団

  • 2wink/葵ひなた&葵ゆうた(CV:斉藤壮馬)
  • アニメ
  • ¥250

ユーロビートに、雑技団イメージのエキゾチックなシンセがのってるのが癖になる1曲。チープなピコピコをこれでもかと重ねて豪奢な大宮殿を建造しちゃったみたいなきらびやかさ。と思えば間奏でダブステップっぽい低音が音がちらちら入ってくるのが異素材の重ね合わせみたいで楽しい。男性声優楽曲でなかなかユーロビートを聴いたことないかもしれません。そんなかっこいい曲も壮馬くんのクセのなく安定したボーカルがあるからこそ際立つなと思います。

 

ベスト5

5位:カレイド TOURHYTHM/Jupiter&W(天ヶ瀬冬馬(寺島拓篤)、御手洗翔太(松岡禎丞)、伊集院北斗(神原大地)、蒼井享介(山谷祥生)、蒼井悠介(菊池勇成))

カレイド TOURHYTHM

カレイド TOURHYTHM

  • Jupiter & W
  • アニメ
  • ¥250

 あちこちでさまざまな音が、絶妙なバランスで鳴っててまさに歌詞の通りカレイドスコープのような煌びやかさのあるアイドルポップスです。過剰とも言えるほどの数の音を重ねている気がしますが、それは世代も毛色も違うJupiterの声優寺島たっくまん、つぐつぐ、神原さんとWの山谷くん、きくてぃーが混ざり合って歌ってることに呼応しているよう。この2つのグループをつなぐ曲として素晴らしいなと思います。イントロも、「冬馬!」(冬馬!)「悠介!」(悠介!)とひとりひとりJupiterとWのメンバーの名前を交互にコールしつつ、高鳴る鼓動のようにビートが速くなり、サビで一気に視界が開けるような始まり方で、2つのユニットの新しい出会いのドキドキ感を印象づけていて最高。あーーーーやまやくんこんな曲と出会えてよかったねーーーーーーーーーー!!!!

4位:SEKAIはボーイミーツボーイ♂/坂口亮(羽多野渉 

SEKAIはボーイミーツボーイ♂

SEKAIはボーイミーツボーイ♂

 5分の意味不明コンセプトのゴリゴリ女性向けアニメに突如として流れてくるいいテーマソング!という怪奇現象のようないい曲との出会い方、2015年は「枕男子」であったことですが、2016年はこのアニメでした。曲がいい。でもそれ以上にこの曲を羽多野渉さんが歌うところに過剰な意味を見出してしまう腐女子の私がいます。

腐男子高校生活」というアニメは”腐ってる人あるある”を腐男子の主人公が腐男子目線で語る(そしてその視聴者はおそらくだいたい腐女子)という禍々しいコンセプトの作品です。BL自体が、大雑把に言えば性愛を男性同士で描くことで女性読者に神の視点と共感の両方を与えるという側面がありますが、そんな腐女子自身を「みられる側」に引きずり出してその姿を描き同士の共感を呼ぶのにも、あえて男性主人公を起用して読者を作中の人物から一歩遠ざける、という手法が使われるのが、色々な理由はあるんでしょうけど、なんだか腐女子が当事者であることからひたすら逃げるようにも見えてすごいなあと思ったのでした。

で、アニメに出演している声優陣はおそらく意図的に全員BLCDでよく名前を見るキャストで揃えてて、「BLCDでBLを演じていたキャストがBLを楽しむ側まで演じる」という構造の能天気な面白さもあるのですが、同時に、ここにひたすら逃げる腐女子をつかまえるリアルの網みたいなものも見える気がします。

それを一番表してるのがこの曲、「SEKAIはボーイミーツボーイ」ではないかなと。ピアノとホーンセクションの賑やかしいポップソングの上に無理やり感のある譜割で「東館2時間待ちシャッターは俺に任せろ」「ヘタレ攻め 襲い受け 無限大」というおたくからしたら赤面したくなるようなジャーゴンが散りばめられている、おたく的パーティーソング。でもそれを真摯に楽しく正しく歌い上げてるのは実在するキングオブ結婚したい男性声優34歳の羽多野渉さんなのです。この曲がポップソングとして優秀であればあるほど、羽多野さんが真剣に歌えば歌うほど、腐女子としては、我々の欲望を真摯に受け止めてくれて正しく提供してくれる、腐ってない人(しかも男性)の存在をありありと見せ付けられてる気がしてなりません。

しかも聞いた話だと、落ちサビの「逆カプだめかも」は羽多野さんがアイデアを出したとか…。さすが5色のリップ音を使い分け(「犬と欠け月」フリートークより)、近年初めてBLCDに出る有望な若手声優に伝統芸を伝承していく攻役を担うことが多い羽多野さんです。我々の欲望に真摯に向き合ってくれてありがとう…という深い感謝でいっぱいになります。 

3位:SIX SHAME FACES〜今夜も最高!!!!!!〜/トト子 feat.おそ松×カラ松×チョロ松×一松×十四松(遠藤綾櫻井孝宏中村悠一神谷浩史福山潤小野大輔入野自由)

SIX SHAME FACES ~今夜も最高!!!!!!~

SIX SHAME FACES ~今夜も最高!!!!!!~

 男性声優楽曲で「いい曲」というのを考えると、曲がいいだけじゃなくて、男性声優が歌う意味、つまり演じてる世界観やキャラクターが無理なくそこに現れてること、むしろその世界観をより鮮やかに見せるものなんかが「良い」の条件になってくるのかなと思っていて、その意味では「おそ松さん」EDテーマ2曲はド真ん中の大正解を叩き出しています。ここまでかっこいいトラックとアニメの世界が無理なく両立するどころかぴったりとはまってて、更に声優をうまく使った曲ってそうないなと思います。

「SIX SAME FACES」も良かったですが、こっちの「SIX SHAME FACES」のほうが単純に好みなのと、声優楽曲として美味しいかなと思ってこっちにしました。この曲が声優楽曲として美味しいと思うのは、クズニートの六つ子のセリフで構成される1番に対比する形で、F6の台詞で構成された2番があるところ。F6はクズニート6つ子とパラレルで存在するイケメンな6つ子ですが、そもそもこのF6っていう乙女向けコンテンツパロ自体が、「おそ松さん」に起用された声優のコンテクストを汲んで作られてるところがあり、声色で物語を転換させるというのは声優楽曲ならではの面白さだと思います。

キンプリの西さんがおそ松さんの音楽の担当もしていたようなので、どう関わってたのかはわかりませんが、西さんのオーダーでこの曲もキンプリの曲も生まれてるなら西さんはほんとすごい人。

2位:スリム・ボーイ・スリム/ひょろっと男子(梅原裕一郎西山宏太朗

(公式で試聴があがってないのがくやしい!ぐぐってください…)

いつかは出るだろうと思っていたラジオ「ひょろっと男子」のCDシングル。放送開始当初から、いつかはこの番組を次世代のDGSみたいなものにしたい気概が制作サイドから漂っているなと思っていましたが、リリースした「ひょろっとらぶ」収録の2曲がこんな完成度になるなんて、まさか想像してなかったよ!「ひょろっと男子」にかける大人たちの気合いのすごさを見たCDでした。80sアイドルソングのオマージュがいかにも2016年っぽい「ひょろっとらぶ」の勢いもすごいけど、「スリム・ボーイ・スリム」が文句なしにかっこいいのでこっちをランクインさせました。あまりにかっこいいと思ってたら寺島たっくまんのborder-lineの柘植さんとこっちのTSUGEさんは同じ人だったんですね。

際立つ低音にサンプリングを組み合わせたような音のラップパートから、キャッチーなサビへ展開する構成もいいし、「共に歩くランウェイ」のところで、それまで梅原さんの声がどちらかと言えばメインだったところ、西山くんの声がファルセットの一瞬だけメインとして逆転するのが気持ち良い。このパートがあることで、うめこたっていう低音&高音コンビが歌う意味がこの曲にあるんだと思わせてくれます。

西山くんて歌い方のクセが強いイメージあったけど、いろんな曲を歌う声優になったことで、癖がなくなって歌声が垢抜けましたよね。西山くんの声のよさが現れているという意味でも胸がいっぱいになるいい曲ですね…。あと西山くんの趣味からすると「ひょろっとらぶ」みたいな曲を歌えて嬉しいに違いないはず。

ひょろっと男子の「ひょろっとらぶ」、おそらくアニメイトとA&Gショップくらいにしか売ってないしラジオ番組発のユニットだから手に取る人も限られてると思うのですが、そういうところにいい曲が眠っていたりするのが声優楽曲を聴くことの楽しさでもあるんだなあと思いました。かつて諏訪部さんと鈴木達央がやってたラジオ「集英乙女研究部」から生まれた、恐ろしくいい曲しかないアルバム「乙女番長」を、リアルタイムで楽しんでいたらこんな気持ちだったのだろうか。

最後の「どうタフだろう?」っていうラジオのコンサプトから拝借したフレーズも、笑っちゃうけど笑えないほどセクシー!!!ひょろっと男子最高だな!!!!(ってもう1年くらい聞いてないわたしが叫びます)

1位:Be My Steady/Galaxy Standard(諏訪怜治(宮野真守)、黛静馬(平川大輔)、千代松万太郎(江口拓也)、妹尾匡(鈴木達央)、黛遊馬(小野友樹)、奥村楓(豊永利行))

Be My Steady

Be My Steady

 2016年は男性声優ドラムンベースをたくさん聴いた気がします。寺島&羽多野の恋歌ロイド「Toy Garden」とか、リコとグリの「チョコをください」とか、SolidSの「Lily-寄り添う百合のように-」とか。でもこの曲が抜きんでて素晴らしいと思ったのはR・O・Nくんの最大の魅力である憂いのあるメロディラインです。R・O・Nくんと言えばパンチのあるデジタルロックというイメージがありますが、それ以上に彼の魅力はメロディメーカーであることだと思います。主張の強いデジタルサウンドの中で、憂いのあるピアノがずっと鳴り続けて、「打ち合わせしよう未来の待ち合わせキャンセルされても 星の一生からすりゃこんなのすら一瞬」という、半径2メートル内の僕とキミの恋が宇宙サイズに膨らむ歌詞をロマンチックな説得力で聞かせてくれる。

イントロの儚げな始まり方も、それぞれのパートのつなぎかたも、ツインボーカルをいかした波のように次々にたたみかけてくるサビも、そのすべての構成が最高。

また、この曲はキャストが豪華すぎる。なにせ小野友樹鈴木達央らをバックボーカルに従えて宮野真守豊永利行が掛け合いで歌うっていう。なにその、大トロとズワイガニを下敷きにして、いくらとウニをのっけた海鮮丼みたいな贅沢さは。

更に言うと、この曲はR・O・NくんがOLDCODEXを脱退して以来初めて、鈴木達央R・O・Nくんの曲を歌ったというメモリアルな曲でもある。(他にあったらすみません)あくまでもバックボーカルとしてだけど。でも、そんな達央に与えられた短いソロパートの歌詞が「君がいなきゃ世界なんて不完全」だったのも、なんという因果か。そういうのも含め、本当にすごい曲。

 

以上、2016年の男性声優楽曲を振り返ってみました。

なんという豊永利行率よ…。次いで増田俊樹と寺島さん羽多野さんて感じでしょうか。来年もそこそこに、男性声優の曲を聴いていくのだと思います。

2017年はWITHLINEの男性声優が歌う「knowing」(?)がきっと音源化されるはずなので、それをランキングに多分入れると思います。2017年も引き続き山谷祥生さん売れて欲しいです。あと市川太一くん。

たった4ヶ月で「よくわかんない」ツキクラにどっぷりハマった話

 

おたく同士が久々に会うと「さいきん何ハマってんすか?」とか聞いたり聞かれたりすると思います。私の場合は、最近迷いなく「ツキクラですね」と答えるしかないほど「ツキクラ」にハマってるんですけど、だいたい「ツキクラ」って言ってピンと来る人がいない。

「ああ、なんか最近アニメやってるやつ…」

「それは『ツキウタ。』であって『ツキクラ』ではないですね。ツキノ芸能プロダクションの仲間ではあるんですけど」

「ツキノ芸能…?」

こんな感じで、説明しようとすると似たような用語がたくさんあるので聞いてる人が混乱すること必至。更に「じゃあツキクラって何?」って言われると声優なのか俳優なのか、はたまたアイドルなのかよくわかんない存在なので、説明が難しいのです。

でも結論からいえば、「よくわかんなさ」がツキクラの面白さでもあります。

今回は「最近ななりさんがハマってるツキクラって何なの?」って聞かれた時に「ブログに書いたから読んでくれ」って言えるように、なぜたった4ヶ月でこんなにもツキクラが愛おしくなったのか、その経緯を書きたいと思います。

 

■ツキクラって何なの?

ソニーミュージックが、アニメイトグループと協力して「次世代の声優アーティスト」を発掘しようと行ったリアルオーディションツキプロMusic Grand Prix2016」に合格した13人の若手男性声優からなるグループです」

ニュースサイトなんかでよく使われてる定形の説明文を持ってきました。

ポイントとしては

ソニーアニメイトが協力してるよ

・「次世代の声優アーティスト」を育てたいらしいよ

さえ頭に入ればOKです。

私の言葉をもって説明すると、

「俳優、声優、読者モデル、地下アイドル、ダンサーなどなどさまざまなバックボーンを持った無名に近い若手の男の子たちが13人集められて、切磋琢磨し、名目上『次世代の声優』を目指しつつ、何者かになろうとしているグループ」

なのかなと思います。

 

最近、2.5次元コンテンツのブームとあいまって、若手俳優と若手声優の活動領域がどんどん重なってきています。アニメやゲームに、2.5次元系舞台や特撮番組で俳優をやってた人が声優として参加していることが珍しくない昨今。

更に、二次元アイドルコンテンツの盛況もあって、声優がステージで歌って踊ってパフォーマンスをすることも珍しくなくなりました。2.5次元系の舞台も歌って踊るステージパートがあることが多くなってきたと聞きます。ここから想像するに、「次世代の声優」というのは、「歌って踊れて、舞台も声のお芝居も横断的にできる人」なのかなと。

ということで、歌える人、踊れる人、舞台やってた人、声の演技をやってた人などを集めていった結果、バックボーンの異なる13人の男子が集められたのかなと思います。

すっごくすっごく雑にたとえたら乃木坂46みたいな感じ。

ソニーがとあるお題目のもとにさまざまなバックッボーンを持つ女子を集めたって意味で…)

でも、結局みんな芸能界に入ったきっかけがさまざまだから、きっと目指す方向もばらばらで、一律に声優を目指すことにはならなさそうだなと思います。もしツキクラがなくなったら俳優一本でやってく子もいるだろうし、踊れる声優として活躍する子もいるかもしれないし、もしかしたら外画中心の声優になる子もいるかもしれなかったり。

この一言で形容しがたいメンバーのバラバラさが、グループの多様性につながってて(企業でいうところのダイバーシティとかってやつ)、「よくわかんないところがツキクラの面白いところだよ」って言いたくなるのです。

 

■ツキクラって誰がいるの?

“さまざまなバックボーン”って散々書いてきたのでここからツキクラのメンバーを、独断と偏見で手短に紹介します。私から見た印象なのでいろいろご容赦ください。ツキクラはメンバー紹介など基本的に「あいうえお順」になっています。そこが学校みたいで良いです。

公式のメンバー紹介はこちら。

www.tsukipro-ch.com

※ツキクラから知ったメンバーがほとんどなので過去の活動に認識違いあったらごめんなさい

 

・荒一陽

モデルやアイドル活動を経てツキクラに。華があって一見チャラいけど熱い。熱さがたまに裏目に出てしまうのか「空回り王子」という異名がついた。

市川太一

森久保さん、梶くんなどが所属する声優事務所VIMS所属。ツキクラでは一歩引いて全体を見て、誰かに話を振ったり場を回したりするプレイングマネージャーみたいな子。頭よさげ。

糸川耀士郎

ソニーのボーカルオーディション出身で2.5次元舞台などで活動していた人。最近舞台版幕末ロックの2代目高杉晋作に抜擢された。島根なまりがたまに出るのがかわいい。

・井上 雄貴

元ぜんハリ。ツキクラのダントツ1番人気者でダンスがうまい。メガネっこの大天使イノエルとして\イノエルめがねとって〜/「えー、ムリエル〜」という持ちネタがある。

・大島 尚起

ツキクラ合格後にスマイルカンパニーへの所属が決まった、ダンスがめっちゃうまい最年少。だが突拍子もなく変なことをしだす天然。A.B.C.-Zの塚ちゃんと似た人種だと思う。

・大海 将一郎

ソニーミュージックアーティスツ所属。舞台活動、音楽活動をやっていた。とにかくかっこいい。なのにブログやツイッターの言動が狂気に満ちている。

lineblog.me

・菊地 燎

声優事務所コペル所属。かっこいいんだけどツイッターを見てるとだいぶおたくなことがわかる。全員に対していまだに敬語を貫いている。両親にも敬語らしい。

 

・小松 準弥

FINE BOYSのモデルや舞台俳優として活動していた。圧倒的さわやか長身イケメン。あんステの蓮巳敬人役でおなじみ。飾らない言葉で話そうとするところが魅力。

・徳武 竜也

声優事務所WITH LINE所属。長野からやってきた特撮オタク。ツキクラではおじいちゃんキャラとしてちょっと一歩引いてみんなを見る立ち位置にいる。

・西野 太盛

モデルとしての活動を経てツキクラに。唯一の関西人だけどおとなしい。西野七瀬のお兄ちゃんだからなのかもしれない。西野家の血を感じる。

・筆村 栄心

スタイルキューブ所属。声優だけでなく、ダンス絡みの仕事もちょっとやっていたっぽいのでダンスがうまい。女子力の高い自撮りをあげるふわふわキューティーボーイ。

・古畑 恵介

ソニーミュージックアーティスツ所属。2.5次元系舞台で活動していた。毒舌キャラ、あざといぶりっこなど場に合わせてキャラを変化させる頭の良さがある。言動がエモい。短歌も詠む。

・松岡 一平

ツキクラ合格後に、声優事務所EARLY WINGに所属が決まる。犬っぽいのでわんこキャラが定着。自在にクシャミを出せるという地味(褒めてる)な一発芸が得意。

 

■私から見たツキクラのこれまで

1)とにかくひどかったAnime Japan2016

ツキクラ13人が初めてお披露目されたのは、Anime Japanという2日間のアニメやゲームの博覧会イベントでした。ツキクラとしての初舞台。一部のメンバーは過去の活動で名前が知れていたりするものの、ほとんどのお客さんは初めましての状態で見に来ています。私もなんとなくついでに見に来たって感じで参加。

そこで自己紹介などをいきなりしなきゃいけないわけで、とにかくみんな緊張してて、頑張りが空回りしていて、見ていてハラハラしました。

2日間やったんだけど、話を振られても役割分担ができてなかったせいか、誰も返せないし、いざ得意技とか振られても「じゃあ変顔やります!」とかイマイチなものしか出せず、挙句の果てに2日目は時間切れでメンバー4人の自己紹介タイムがカットされるということに。まあ短時間で13人に自己紹介させたり話振ったりしようとした構成も悪かったんだろうけど、この日はダンスなど含めていろいろとボロボロで、うわあこの人たち大丈夫か……と思った。

2)LINEライブやテレビ番組から伝わる、わちゃわちゃしながらみんなで頑張る部活感

そんな感じでツキクラの活動はスタート。ツキクラの活動のお題目は「2.5次元芸能事務所ツキノ芸能プロダクション(通称ツキプロ)のアーティスト候補生としてツキプロへの正式所属を目指す」というもの。ツキプロには、これまでアニメイトグループが作ってきたドラマCDなどに登場していた二次元アイドルたちが所属しています。だからツキクラにも秋頃に全員担当キャラクターがつくらしいです。

ツキクラの活動の、この頃の主な柱はこの4つ

・定期的に配信されるLINEライブ

・週1回のテレビ番組「ツキプロch」で放送される、ダンスや演技の練習風景ドキュメンタリー

ツイッター、LINEブログ

・各地のアニメイトで開催される一部メンバーのトーク&名刺お渡し会

結成したてということでとにかくみんな仲良くしよう仲良くなろうというのが伝わってくる時期だった気がする。最初はツキクラ結成前から知り合いだったっぽい子同士でつるんでたけど、だんだんそれを超えて一緒にごはんに行った写真アップしたり。いきなり「ラーメン部」とか結成しだすのもサークルっぽくてかわいかった。 

 ツキクラの魅力は、みんなの出身がバラバラなところにあると思う。だから個性もバラバラ。おたくが高じて声優を目指した子もいれば、ファッション雑誌で読者モデルをやってて「アニメイトにはツキクラに入ってから仕事として初めてきました」という子もいる。

ついついアイドルとか何かの集団を見ると「スクールカースト」を適用してしまうんだけど、ツキクラは、言うなればこのカーストがぐちゃぐちゃに入り乱れた状態に見える。同じクラスにいたら絶対仲良しグループじゃなかっただろうなという子たちが普通に入り乱れて自撮りで集合写真とっちゃう。(と、共学校出身者なのか思ってしまう…うちの学校にはあったよ、カースト

 最近の子はそういうのがないのかもしれない。カーストに関係なくアニメイトに行くのかもしれない…私が学生のころはアニメイトに行くのは結構、デカいことだったんだよ…。

3)急展開のオーディション発表

そんな仲良しグループだったツキクラが一変したのは、「ツキプロch.」で放送された夏合宿での2つの発表でした。 

ひとつは、合宿中にオーディションを行い、そのうち5名がアニメに名前つきの役で出演できるというもの。(これは合宿放送の後編にさらっと結果が発表されました)

もうひとつは、ファン投票と運営からの日頃の活動評価で決まる上位8名がキャラクターのユニットとしてCDデビューできるというもの。 

すでに13人のオリジナル曲「未来のpiece」もあってみんなでダンスや歌のレッスンもしていたから、13人でデビューするんだろうとツキクラもおたくも思ってたので、この発表には衝撃が走りました。仲良しになってきたところで、合宿でいきなり「ここから選ばれたメンバーしか仕事が与えられません」と宣告された時の重たい空気よ…

 

正直……、見ていてめっちゃ面白くてぞくぞくしました。ASAYANかよ?

合宿でオーディションとかASAYANかよ!!!

 

ツキクラのファンの中には本当にこの「誰かが落ちなきゃいけない状況」がイヤで仕方なかった人もいただろうし、その気持ちもわかるのですが個人的にはここから俄然ツキクラ見るのが楽しくなってきました。

この発表を受けてからのメンバーの反応もそれぞれ異なっててその多様さも面白かった。 

ファン投票は1人1日一票入れられる仕組み。何が何でもデビューしたい!と毎日のように自分への投票を促す子もいれば、「みんなそれぞれの推しメンに投票よろしくね〜」状態の子もいる。

市川太一くんのブログが印象的でした。

まず、オーディションは声優をやってきてる以上、未経験組には負けられない!!

これは勝負事なので遠慮はしません!!

全力で挑みました!!!

その模様は来週放送されますのでお楽しみに~

そして、選抜CDですがこれは勝ち負けとはちょっと違う気がします。

オーディションと違ってファン投票ですし、改めて僕に出来ることはないというか…

多分ずっと言い続けますが、今まで通りやる事は変わらないと思うんです。

http://lineblog.me/tsukicro/archives/3672523.html

ファン投票に「自分にできることはない」って思うってすごく潔いなあと思いました。 

また、古畑くんはしきりに「デビューできるメンバーが限られてもツキクラは13人でツキクラです」って言ってた。13人をずっと強調していたのです。

13人もいればみんな考え方が違うのは当たり前で、その多様な姿勢が許されるのが、ツキクラのいいところだなと思いました。

そして中間発表では以下の結果に。

1位 井上

2位 大海

3位 市川、荒(同率)

5位 筆村

6位 小松

7位 西野、古畑(同率)

ここで選抜発表に漏れたメンバーの悔しさをにじませたツイートとかがかなりエモかったんですけど、今見たら結構削除されてました……。もともと歌を歌いたくて芸能界に入った糸川くんとか、悔しくて仕方なかっただろうし、うろおぼえだけど「実家の両親からも『夢を追いかけるタイムリミットが近づいてる』と言われプレッシャーになってる」などといったかなりリアルなツイートをするメンバーもいたんですよね。

でも、一方で「この選抜はツキクラがみんなで高め合うための試練だよね。選ばれても選ばれなくても」という声も散見されて、ただのライバル同士にならないのもよかった。

この頃、活動の柱に「ツキクラ裏語録」というウェブラジオも追加されて、中間発表後の放送で「まあ投票は勝負であっても勝ち負けじゃないよね、みんなで高め合ういい機会だよ」と言い放つ、選抜圏外だった徳武くんに、6位の小松くんから「ぶっこんでいい?ぶっちゃけ中間発表見てどう思った?」って聞いてたのも面白かった。本音はどうなのよ?って聞きたかったんだろうけど徳武くんはここで「なんとなくメンバーそれぞれこうなるだろうって順位は予想してて、俺も予想してたし…なんだろうね、ショックはなかったんだよな」という変わらない徳武くんの思いを小松くんが引き出してるやりとりも、結構本音で向き合ってる感じがあってよかった。

ここから聞けます↓

www.animatetimes.com

 更に、このころLINEライブで「自分たちの未来について真面目に話す」というテーマのもと、全員で笑顔なしのガチ反省会があって、「LINEライブが内輪のノリになりがちだから気をつけよう」って言い出したところにすごいなと思った。若手に限らずだけど生配信番組なんて内輪ノリが前提なところがあるのに。神妙な面持ちで、「得意ジャンルがそれぞれ違うんだから、もっとみんなで教え合っていこう」「それぞれの見せ場をお互いが作っていけるグループになろう」とか、マジでどっかの高校の部活のミーティングを覗き見してるみたいでほんと面白かった。 

4)集大成のクラフェス

そして、7/18に行われた初の単独ホールイベント「クラフェス」で、人気投票の最終結果が発表されました。

結果発表の前に、Anime Japanで初披露してボロボロだったオーディション課題曲の歌とダンスの発表があったんだけど、費やした練習時間が違うだけあって、段違いに上手になってた!更に、初期のころは不安だった「未来のpiece」の歌とダンスも安定してかっこよかった……!

この「未来のpiece」のサビのフレーズは(これまたうろおぼえだけど)「止まらない僕らの未来へ」「まだ見ぬ希望の世界へ」 「ともにこの場所から助走つけてFLY AWAY」「みんないるよ怖がらないで君は孤独なんかじゃない」っていうツキクラ自身の、何者かよくわからないけどとにかく未来へ進んでいかなきゃ!って姿をそのまま描いてる気がしました。

そして、選抜結果の最終発表。

1位 井上

2位 小松

3位 松岡

4位 大海

5位 大島

6位 徳武

7位 古畑

8位 糸川

中間発表メンバーの半分が入れ替わるというすごい結果になった。たぶん、圏外だったメンバーのファンの人たちがめちゃくちゃ頑張ってたんだろうなと。圏外からジャンプアップしたメンバーみんな号泣してて、絶叫のように宣言していた。「選んでもらったからにはがんばります」と。徳武くんも中間発表後は「ショックじゃなかった」って言ってたけど、選抜で名前が呼ばれた時に「やっぱり自分も負けたくないって気持ちがめちゃくちゃあって」と話していたことに胸がきゅっとなった。

そして、中間で入ってたのに漏れてしまったメンバーの言葉も印象的で、ブログでは「ファン投票なので改めて自分にできることはない」と書いていた市川くんさえやっぱりがっかりした様子だったし、筆村くんは悔しさに涙声で「僕はまだ夢の途中だなって思ったのでこれからがんばります」って言ってた。ここで泣ける筆村くんも強いし、中間も最終も圏外だった菊地くんは決して悔しさを見せまいとしてあえて明るく「今後のイベントも決まったのでこれからもよろしくお願いしますー!」みたいな挨拶をしていて、その姿を見ても強いなと思った。菊地くんも、今は見れないんだけど中間発表後はかなり悔しさをにじませたツイートをしていたから。

この選抜発表のとき、選ばれる選ばれないに限らず、名前を呼ばれたメンバーの背中をみんな嬉しそうに叩いて「おめでとう!」「よかったじゃん!」てやりとりをしていたのも最高でした。

 

人気投票による選抜発表とか使い古された手法だし、題目としては声優を目指してるグループにこんなアイドルのリアルドキュメンタリーみたいな手法をくっつけるのってほんとによくわかんないんだけど、投票によって、何者かになろうとしてる若い男の子たちそれぞれの姿が浮き彫りになるのはやっぱり見ていて面白かったです。

一言で語ろうとすれば難しいし、ほんとよくわかんない活動ばっかりしてるけど、とにかく多様性が許されて、みんな個性があって、わちゃわちゃしつつ真剣に頑張ってるので、リアル部活動モノのストーリー見てるみたいで楽しいツキクラ。

ぼちぼちみんな、舞台とか、Mマスとかほかの仕事も決まり始めて来てるので、これからのツキクラも楽しみでしかないです。

朝井リョウの「武道館」をBLとして描くときっと吉田ゆうこ作「BLT」になる

※BLTネタバレありなのでご注意ください※

 

「禁じられた愛」というのはBLの醍醐味のひとつでした。

それは、BLにおいて長らく、「男性同士だから」という理由づけのもとに成り立っていたものです。しかし、昨今の商業BLはこの男同士の性愛を禁忌的に描くものが、体感として少なくなっている気がします。

むしろ男同士で愛し合うことの何がいけないのか? というほどに受と攻はハードルなく好き合って結ばれていくように思います。当たり前のことだけど「男性同士だから」は愛が禁じられる理由にならず、それにBLの設定も追いついてきた結果なのかなと思います。

しかし、「禁じられた愛」の物語をやっぱり私たちは求めてやみません。そこで、世の中を見渡すと、実は非合理に恋愛を禁止された人たちがいることに気づきます。そう、アイドルです。

アイドルの「誰かひとりのものになってはいけない」という空虚なルールをBLの醍醐味である「禁じられた愛」に適用してきたのが吉田ゆうこさんが描くアイドルものBL、「BLT」です。

アイドルものBLは数多くあれど、今までこんなアイドルBL読んだことない。

すごく斬新なアイドルBLでした。 

 

BLT<BLT> (あすかコミックスCL-DX)

BLT (あすかコミックスCL-DX)

 

 

「BLT」のあらすじをざっくりと説明すると、同じアイドルグループ「BLT」に所属するみさきと浩輔が、ある事件をきっかけにお互いの気持ちに気づき、戸惑いながら惹かれあって最終的に二人でアイドルを辞めて恋人同士になる物語。

吉田さんはハロプロがお好きだそうですが、おそらくそんな吉田さんだからこそ描けたアイドルBLが「BLT」だと思います。主役のみさきと浩輔が織りなす、「禁じられた愛」の物語はもとより、アイドル描写のディテールや、セリフなどから吉田さんのアイドル観が透けて見えてくるのです。

例えば、作中で「BLT」が最初にライブを行っている会場は「PALOOZA」。たぶん柏パルーザでしょう。オールスタンディングで450人しか入りません。

柏PALOOZA

次に描かれるライブの舞台はツアー先のZepp Sapporo。そして、最後に描かれる浩輔の卒業コンサート中野サンプラザです。

ハロオタの吉田さんがツアーファイナルの会場に中野サンプラザを選んだのは納得せざるをえないし、パルーザ→Zepp Sapporo中野サンプラザというハコの変遷を考えると、パルーザからツアー先の札幌でZeppを抑えられるようになるまで、オタクがめちゃくちゃ増えたんだろうなと勝手にあたたかい気持ちになります。

(更に札幌の会場がZeppなら、東京で行われた浩輔の卒コンが中野サンプラザなんて、かなりの激戦だったにちがいない…と邪推してしまいます)

少し話がそれましたが、こういうコンサートのハコの大きさまで言及したアイドルBLってそういえばなかったなと思います。長らく『男性アイドル=ジャニーズ=ライブならアリーナとかドーム』というイメージがあったので、ハコの大きさまで言及する必要がなかったんでしょう。

これを見れば明らかに、吉田さんが描こうとするアイドルグループ「BLT」は、ぼんやりとしたイメージによって出来ているのではなく、吉田さん自身がリアルタイムで見ているものを下敷きにしていることが伝わってきます。

また、作中でみさきはラブソングを歌うことへこんな戸惑いを吐露していました。

 

「最近悩みがあってね。俺、恋愛したことないじゃない?する気もないけど。でも恋愛の歌っていっぱいあって…ちゃんと気持ちが入らないっていうか、うまく歌えてない感じがする」

『BLT』p.11、12

 

これと似たようなことを高橋愛ちゃんも発言していたことを思い出します。

 

演技に目覚めたのは22歳のころ。恋愛禁止なのに歌うのは恋愛の曲ばかりで、何となくもどかしさを感じていた時、ドラマに主演させてもらいました。そこで「経験がなくても演じればいいんだ」って思ったらぐっと楽になって、同時に、演じることがすごく楽しく思えた。

http://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/kibou/005_2

 

みさきほど、「アイドルは恋愛しちゃいけない」を内面化しているアイドルキャラってBLにおいては珍しい気がします。このあたりも吉田先生が、恋愛禁止の呪縛が男性より強い、女性アイドルのファンであることと結びついているのかもしれません。

そして、このみさきのラブソングへの素直な戸惑いの吐露が、みさき自身が浩輔に恋してしまった時の切なさにつながってくるのです。

 

「人を 浩輔を独占したいと思うなんてだめだ。ましてや浩輔は"みんな"のもので、自分も"みんな"のものだから……」

『BLT』p.126、127

 

みさきに向かって浩輔が「(コンサートに来たファンより)お前の方が大事だから」と伝えるシーンでも、みさきは罪の意識を覚えてしまいます。

 

「だめだよ浩輔 浩輔は"みんな"のものなのに……」

『BLT』p.131

 

みさきの中で、「アイドルは誰かひとりのものになってはいけない」が強く内面化されているからこそ、二人がお互いの気持ちに目を背けていられなくなって結ばれる瞬間が、息が苦しいほど切ないシーンになっています。

この、”みんなのもの”でなくなることを選択するアイドルの姿って、朝井リョウさんの「武道館」でも描かれていました。

 

武道館

武道館

 

 

「武道館」でも、主人公であるアイドルの愛子は、幼馴染の大地と、友達としての一線を越える時に、アイドルである自分のことや周囲の人たちを思い出しつつ、目の前の大地を選びとります。

 

だって、私は今から、大地を選ぶ。ダメだってことくらい、わかっている。応援してくれるファンがいる、武道館を一緒に目指す仲間がいる、支えてくれている事務所の人たちがいる。アイドルが恋をしてはいけないなんてことは、もう十分知っているし、誰かの手によって、十分すぎるくらいに、分からされてきた。

『武道館』p.218

 

そして、「BLT」でも「武道館」でも目の前にいるたったひとりを選び取ったアイドル達は、アイドルを辞めてしまうんですよね。みさきは浩輔とともにBLTを電撃卒業してしまうし、愛子もNEXT YOUを卒業コンサートを行わずに脱退します。

でもたぶん、朝井さんも、吉田さんも恋愛が発覚することで彼/彼女らがアイドルを辞めることに対してネガティブな見方をしてはいないと思うのです。

「武道館」では、脱退してその後、結婚した愛子がNEXT YOU元メンバーとして武道館のステージに立ち、スポットライトの下でアイドルとして歌い踊るシーンで終わります。

対して「BLT」ではグループを脱退した浩輔とみさきが、現在のBLTメンバーの看板が見えるカフェで幸せそうにデートしているシーンで終わります。

ステージと街中という違いはあれど、「BLT」も「武道館」も、ただただ、アイドルとして活動していた彼ら、彼女らがその活動を辞めて自分の人生を幸せに生きていくことに対して肯定的です。アイドルをアイドルとして縛り付けていないのです。

吉田さんが「武道館」を読んだかどうかはわかりませんが、こういうところから「BLT」はきっと「武道館」と似たテーマを描いているのだろうと思います。

 

「俺たちの歌は信じるには美しすぎる愛の歌ばかりだけど、信じる価値はきっとあると思うよ」

『BLT』p.102

 

作中でみさきが浩輔に投げかけるこの言葉には、吉田先生のアイドル観が秘められているように思います。アイドルは表層しか見えない、偶像的な存在だということが受け止められていて、でもそのうえでアイドルが歌う愛は信じるに値すると唱えている。

この言葉は「BLT」の帯では「僕たちの歌は信じるには美しすぎる……」だけ引用されてるんですよね。

だから、帯だけ読んだらキラキラと偶像的に輝くアイドルの、スキャンダラスな実態をただ暴くだけの物語っぽくとらえられると思います。実際そういうストーリーでも読者はいたのかもしれません。

でも、アイドルをただの偶像で終わらせず、その人の裏側の人生まで丸っと肯定する姿勢が、吉田さんのアイドル愛の形なのかもしれません。その美しすぎる愛をきちんと信じようとした結果、彼らがたとえステージを降りても、それは悲しいことではない。「BLT」のラストは、そんな印象を受けました。

 

ということで、アイドルファンなら絶対楽しめるBLだと思います。おすすめです。某BLレビューサイトでめちゃくちゃ評価が低いのが残念……。