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<前編>私ひとりで選ぶ「このBLがやばい2015」

このBLがやばい2015が発売してしまいました。

 

このBLがやばい! 2015年度版 (Next BOOKS)

このBLがやばい! 2015年度版 (Next BOOKS)

 

たくさんの人の投票によって選ばれるランキングで1年間の商業BL全体を俯瞰することができるので毎年楽しみなランキングなのですが、BLってやはり個人の嗜好に「よかった」「つまらなかった」をたいへん左右されるジャンルなので、当然、自分の推し作品がめっちゃ順位低くて、うーん…ってなったりとかありますよね。

そこで今回は個人的な「このBLがやばい2015年度版」を後出しジャンケンっぽさに負けずに書いてみます。いや、本当は1週間前に決めてたんだけど、ぐずぐずしてたら本家が発売してました…。

本にならって、2013年10月~2014年9月に発表されたBLの中で面白かったものを10冊ピックアップします。

 

10位 晴れときどき、わかば荘あらあら/羽生山へび子 

晴れときどき、わかば荘あらあら (H&C Comics  ihr HertZシリーズ 144)

晴れときどき、わかば荘あらあら (H&C Comics ihr HertZシリーズ 144)

 

 わかば荘に集うさまざまなカップルの恋模様を追う短篇集。どの作品も、とてもテンポがよくするするっと読める面白さでした。中でも一番面白かったのは、競馬のジョッキーBL。職業BLは数あれど、ジョッキーをテーマにしたものを読んだのは初めてでした。過去にトップスターだった選手と、その人に憧れていた現トップスターの後輩っていう後輩攻BLがほんと大好きです…攻が受に憧れている感じが。

 9位 ラクダ使いと王子の夜/緒川千世

 表紙と内容が全然ちがうじゃねえか!!!!!!!…最高でした。

これ、表紙のかわいいアラブものを期待して買うと、中身を読んだときにすごくガックリするんではないでしょうか。表紙のアラブBLは1冊の中で半分以下のページ幅となっており、大半は作者の方の趣味なんだろうなと思わせるフェティッシュでハードな設定のBLばかり。

溺れる魚」は水泳部が舞台で、緒川千世さんの作画の美しさと水の描写があいまってうっとりします。あと、「俺のことを好きじゃないオマエがすきだよ」と言われて一緒にいたせいで、必死に好きじゃないフリをする、て物語が、まあある種テンプレだけど私はマジでマジで大好きです。指先で顎を触るだけで感じてしまう受の描写があるのですが、緒川さんの描く人物の細かい造形が美しいので妙なエロさがある。素敵です。

「いびつな欠片」「くさった螺旋」は掌編ながらびっくり変態人間のオンパレード。私は、神経質な黒髪秀才メガネくんが大好きなのですが、そんな秀才眼鏡くんが、 愛でも恋でもなく、ただ自分の醜い自尊心を守るために、狂った弟を挑発し犯されてあげてるんですが、最終的に自分がかわいいキャラ大好きなので最高です。無節操な変態趣味に走りたくなる時期が腐女子は誰にでもあると思っているのですが(え、あるよね?)、これはそんな厨2魂をくすぐってくれる作品でした。

そんな複雑なBLばっかりある中で、心が清らかな人しかいなくて性のにおいもない、タイトル作品である「ラクダ使いと王子の夜」の清廉さが際立つのです。短篇集ってあまり好きじゃないけど、この組み合わせだからこその面白さがこの本にはありました。

8位 ひずむ三角、ほどけて絡む/碗島子

ひずむ三角、ほどけて絡む (バンブーコミックス Qpaコレクション)

ひずむ三角、ほどけて絡む (バンブーコミックス Qpaコレクション)

 

 3度の飯より三角関係BLが好きです。しかも、ただの三角関係じゃないやつ。

この作品では、ちょっと頭が足りなくて性欲に流されやすい愛すべき受の市村が、学園の至るところで二人の男から襲われまくるのですが、実は市村のことを取り合う攻の二人、大庭と蔵に、「好き」だけでは形容しがたいBLならではの関係性が存在しているのです。そう、これ!こういう三角関係大好き!

大庭は本心があまり見えないし、蔵は根暗だったりと複雑なキャラ同士で、その間にある愛情もわかりにくいですが、二人の間に挟まれる市村が愛すべきバカだから、シリアスになりすぎずに3人で幸せになれよ…とあたたかい気持ちになります。まるでこのおバカさん市村が複雑な大庭と蔵の関係を取り持っているようにも見える。「チョコレートストロベリーバニラ」も流行ったことだし、こういう複雑な3人の関係性が見えるBLがもっと読みたいです。

7位いとしの未来くん/吉田ゆうこ 

いとしの未来くん (Canna Comics)

いとしの未来くん (Canna Comics)

 

 表紙からは陰鬱な香りしか漂ってこないですが、ただの鬱BLではなく、読後さわやかなBLでした。

未来くんという心優しくて流されやすい少年が、さまざまな男性と流されるままにお付き合いして、性的な関係を持っていくストーリー。ビッチというまでではないけれど、確実に無垢な未来くんがさまざまな男の手によってどんどん性的な存在になっていく描写が、たまりません。こうして書くと身も蓋もないエロBLみたいですが、性描写はまったくきつくなくて、吉田ゆうこ先生の映像的な漫画表現にうっとりしながら読めました。

最終的に、未来くんにとってのたった一人の最愛の彼によって未来くんはやっぱり純真無垢な存在として描かれるのでラストは安心しました。

ちなみに、今回の選考対象外だった「プレイバック」のほうは更に吉田先生の映像的な表現が強まり、キャラクターの描かれ方はこちらのほうが好みでした。攻の子が8ミリカメラを覗きながら受を見つめるコマの描写がすごく好き。

プレイバック (Canna Comics)

プレイバック (Canna Comics)

 

 6位両想いなんて冗談じゃない/カサイウカ 

両想いなんて冗談じゃない!! (Canna Comics)

両想いなんて冗談じゃない!! (Canna Comics)

 

 おじさん好きの!おじさん好きによる!おじさん好きのためのBL!!!

高校の時から親友の隆次に片思いを続けて25年、片思いをこじらせまくった42歳時造。しかし、ひょんなことから離婚した隆次と一緒に住むことになり25年モノの片思いに進展が…。というお話。

タイトルからしてこの先の展開が完全に読めてしまうと思いますが、とにかく、好き合ってるのはわかったのだが、お互いのプライドが邪魔をして、素直に「好きです、ハイ付き合いましょう」とはならずにえんえんとケンカしてる42歳のオッサン同士ってカップリングが最高です。はい。

口喧嘩してるけど最終的に「仕方ないだろ!好きになっちまったんだから!」ってお互い顔真っ赤にして相手の目を見れない構図って。かわいすぎか……。プライドの張り合いを早々に終わらせて早くイチャイチャさせる展開もあったのだろうけど、この漫画では、本当に最後までなかなかカップルっぽくならないところがいいです。

また、この二人の不器用合戦をハタから見物してるバイトの若者くんが、邪魔することなく面倒な二人の物語を進展させてくれる上に、笑えるものにしてる絶妙な立ち位置を担ってるのもよかった。

5位 IN THE APARTMENT/絵津鼓

IN THE APARTMENT (H&C Comics ihr HertZシリーズ 156)

IN THE APARTMENT (H&C Comics ihr HertZシリーズ 156)

 

 江口寿史風味のおしゃれな絵の中、街中にリアルにいそうな男の子達が、ごはん食べたり、ゴミ出ししたり、お風呂入ったりしてる、そんな日常を生きてるBL。経験則ではこういうBL好きなんだけど、そこまで自分の中ではヒットしないだろうなと思っていました。でも、IN THE APARTMENTは違いました。

同じアパートに住む妹尾と杉本の平和なご近所暮らしが描かれていくうちに、二人とも過去に振り返りたくない傷を抱えていることがわかります。抱えた傷の救いを求めていくうちに、ただの友達だった二人がふと、気の迷いのように口づけをして肉体関係になるのですが、この着地がやや唐突な印象はあるものの、低体温な二人が唯一本能的になる瞬間で、いいなと思いました。BLはあらゆるあらすじがセックスの手段になりがちですが、これはその後に控えるあらすじを追う手段としてセックスが挟み込まれている感じ。

そして、二人とも最終的に過去の傷と向きあうんですよね。その向き合い方もしつこくなく、淡々と追ってて、キャラクターそれぞれの人生を応援したくなる。BLのために生きてる二人じゃなくて二人の人生を生きてるキャラ同士のBL。BLが後景化しているので、微妙っていう感想もあるかもしれませんが、いい意味で予想を裏切られたところもあって、お気に入りの作品になりました。

4位 マリアボーイ/木村ヒデサト

マリアボーイ (マーブルコミックス)

マリアボーイ (マーブルコミックス)

 

 正直、最初に読んだ時はそこまでBLとしは萌えなかったし、今回の「私的このBLがやばい2015年度版」を考えるにあたり、1週間前に最初に順位を考えた時点では9位でした。では、なぜこんなにランクアップさせたかというと、先日やっと、すごいすごいと評判の、カバー下の手書き草稿(びっちり詰められた文字のみ)を読んだんですよ。

なにこれ…!!!早く読めばよかったです。この草稿を読む後と前でまったく作品の印象が異なるすごい草稿をなぜカバー下に隠した…。

なぜ「マリアボーイ」っていうのか全然わからなかったのです。表紙を見る限り、弟を溺愛するあまりにストーカーになった、男相手に体を売りまくる美容師のヨシキのことを指すのはわかっても、それのどこがマリアなの?と。草稿見てやっと意味がわかり、マリアボーイって漫画の震えるほどの面白さに気づきました。

どうしてこの草稿は漫画として収録されてないんでしょうか。そこらへんの意味のわからなさがおもしろすぎて、この順位です。

展開がしっちゃかめっちゃかだし、表現は”耽美”とは真逆の意図的な下品さがあるし、確かに人を選ぶBLなのかなと思いますが、表題作の「マリアボーイ」で描かれる美容師ヨシキと奔放なノンケの年下加藤くんのカップリングはまっとうに萌えるBLです。常に寂しさを抱えた依存体質のヨシキが、能天気な年下の加藤くんから愛を与えられて救われていく。その前に収録された「好きだよ、秘密だよ」では弟を溺愛するあまりストーカーになる危ない人物でしかない兄が、加藤くんに手料理をつくってもらって、まっとうな愛を与えられ人間的な幸せを手に入れていくのですが、その描写が本当によい。ヨシキが玉ねぎを持ちながら「人のチンコを数えきれないほど握ったこの汚い手が 自分で傷つけて勝手に休養してるこの手がなんと今玉ねぎをむいている」というシーンで玉ねぎがアップになるんですけど、このふざけてるんだけどリリカルなところがいいのです。漫画が全体的にふざけたテンションで進むんですが、ちょいちょいこんな風に鋭く斬り込むリリカルさが絶妙に見え隠れするのが木村ヒデサト先生の味なんだなと思います。

だから、登場人物がどれだけ頭のおかしい行動をとろうと、それが実はものすごく普遍的で純粋な気持ちに裏打ちされていることがわかる。(カバー下の草稿も、美容師ヨシキの突飛な行動が純粋な愛に裏打ちされてることを補足する内容でした)。出てくるキャラクターがすごく人間くさい。最初はそこまで萌えなかったのに、じわじわ気になっちて気づいたら好きになっていた「マリアボーイ」の面白さって結局そこなのかなと思ってます。

 

後編はこちら↓


<後編>私ひとりで選ぶ「このBLがやばい2015」 - パノラマロジック

 

2014年男性声優楽曲大賞にエア投票してみました

師走といえば楽曲大賞です。ジャニーズも女性アイドルもあんまり聴かなくなってしまい、投票が出来ない2014年となってしまって寂しいので、完全にこのブログの後追いですが、男性声優楽曲大賞を私も考えてみました。

超個人的男性声優楽曲大賞2014(後編)and i like betty*

ハニコさんほど手広く漁ってないので結構かぶってるのですが…でも楽曲大賞エントリってみんなかぶるよね?そういうもんだよね?っていうことで、少し長いですが15位から発表です。

15位 REASON FOR…

「TVアニメ『 神々の悪戯 』エンディングテーマ「 REASON FOR... 」」収録/アポロン(CV:入野自由)、ハデス(CV:小野大輔)、月人(CV:上村祐翔)、尊(CV:豊永利行)、バルドル(CV:神谷浩史)、ロキ(CV:細谷佳正)

Elements Gardenです。今年うたプリの曲でピンと来るものがなく、あんなに絶対唯一神と崇めていたカルナイへの信仰心はどこへ…カルナイ楽曲のユニゾンとシンセの織り成すアイドル的”なんか強そう”感が好きだったのですが、そこらへんはこの曲が持っていたなと思いました。


TVアニメ『神々の悪戯』ED「REASON FOR...」 - YouTube

 

14位 Like a Long Lance

「『弱虫ペダル』キャラクターソングCD Vol.7収録」/泉田塔一郎(CV:阿部敦

とにかくロックばかりの弱虫ペダルキャラソンの中で異質だったEDMな泉田キャラソン。長く美しい睫毛とアンバランスな分厚い胸筋がチャームポイント、という泉田のいかがわしい感じをキャラソンに落とし込もうとしたとき、このEXILE TRIBEが歌ってもおかしくないチャラめなEDMという選択はすごくぴったりではないかなと思います。さらに曲中に「アブ、アブ、アブ、アブ」ってずっと言って、しかもそれが違和感ないのがキャラソンとして優秀すぎ。更に冒頭に挟まれるウィスパーボイスが本気でかっこいいので、不覚にも飛び道具キャラだと思っていた泉田の真面目なかっこよさを知ってしまう一曲になっています。

何よりびっくりしたのはこれがR.O.Nくんの曲だったってことですね。

弱虫ペダル キャラクターソング vol.5

弱虫ペダル キャラクターソング vol.5

 

 

13位 Way to victory

「TVアニメ 黒子のバスケ SOLO MINI ALBUM Vol.3 緑間真太郎-Shooting My Luck-」収録/緑間真太郎(CV:小野大輔)高尾和成(CV:鈴木達央

黒バスのキャラソンにこんな男性アイドルっぽい華やかな曲あったのかっていう驚きがありました。曲もいいけど、途中途中に挟まれる「ジャンケンポンっ」もかわいい。「勝利決めるからな~っハーン」ていう高尾和成がいかにもいれそうなスカした歌いまわしを入れてくる鈴木達央さん本当に天才だと思う。 

TVアニメ 黒子のバスケ SOLO MINI ALBUM Vol.3 緑間真太郎-Shooting My Luck-

TVアニメ 黒子のバスケ SOLO MINI ALBUM Vol.3 緑間真太郎-Shooting My Luck-

 

 

12位 Rainy Day

ツキウタ。シリーズ デュエットCD 蝶々P×年中組」収録/卯月新(CV:細谷佳正),皐月葵(CV:KENN)

ツキウタのキャラソンはどれを聴いてもだいたいかっこよかった。ツキウタってシリーズ自体は知ってたのに、なんでキャラソンにこんなに力入っているってハニコさんの楽曲大賞ブログ読むまで知らなかったのだろうか…。

男性アイドルや男性声優にロックは数あれど、ピアノの旋律が絡まり、高低差のあるこういうギターロックって、あまり聴かないような気がします。KENNくんと細谷さん歌い方が対称的過ぎて面白い。細谷さんの歌声がいつもより輪をかけてシンプル。たとえばこれがKENNくんみたいなボーカル×2でデュエットしていたらちょっとしつこかったと思うので、お互いがお互いのない部分を補完しあってたよいデュエットだと思います。

11位 ORIGINAL COLOR

「so funny」収録/Trignal

歪んだ音のイントロから一転して、楽曲派が絶対飛びつくと思われるファンク風味さわやかJ-POPになるのがとてもよいと思います。 全員かわいい少年ぽい役ができるTrignalの声にクセのない王道J-POPて本当に合う。

so funny(豪華盤)(DVD付)

so funny(豪華盤)(DVD付)

 

 

10位 共鳴進歌

幕末Rock超絶頂(エクスタシー)★ソング 沖田総司」収録/沖田総司(CV:小野賢章)

幕末ROCKは本当に、幕府側の曲しか好きになれなくて困った…。サビのメロディがとにかくいい。どことなく10年前くらいの邦楽ロックっぽい。賢章くんの声はこういうしっとりとして裏声まじりの曲のほうが似合ってるなと思います。


『幕末Rock』超絶頂(エクスタシー)ソング 沖田総司(CV:小野賢章) CD試聴 - YouTube

 

9位 スリーピング・ビューティー

弱虫ペダル キャラクターソング vol.5」収録/東堂尽八(CV:柿原徹也)

この曲はペダルのアニメと漫画に手を出す前にとにかく聴いてくれ、と言われて聴いたのですが、思えばこれがきっかけでペダルを早く読まなきゃ!と思えたすごい曲。

R.O.Nくんのカロリー高めな直球ロックに乗るには大正解と言えるテツヤカキハラのナルシスティックな癖のある歌声。そんな歌声で「君に問う 世界で一番美しいのは誰 もちろんオレだろう」といわれれば、肯定するしかない。天井知らずの自信家なキャラクターの気持よさを曲と声が最大限に生かしてると思いました。 

男性声優って癖が強めな歌い方の人が多くて苦手意識あったんですけど、癖こそが最高に気持ち良いと気づいた時、一番気持ち良いのがテツヤカキハラの歌声だと思った。

弱虫ペダル キャラクターソング vol.5

弱虫ペダル キャラクターソング vol.5

 

 

8位 ダンディギ

「ダンディギ・ダン」収録/柿原徹也

そんなテツヤカキハラの往年のビジュアル系っぽい癖のある歌い方がラップ(?)をすると、こんなに小気味よくて気持ち良いのか!とびっくりしたのでスリーピングビューティーよりも上にしました。楽しい。さらっとブラのホックはずそうとする歌詞も柿原さんしか歌えないよ。テツヤカキハラの、「なんか細かいことは気にしないけど楽しいほうがいいじゃん?」をドヤ顔で言ってるようなこの不思議な陽性のオーラなんなんですかね。好きです。

ダンディギ・ダン(豪華盤)(DVD付)

ダンディギ・ダン(豪華盤)(DVD付)

 

 

7位 Party Parade!

「Re-Quest!」収録/棗(CV:前野智昭)、侑介(CV:細谷佳正)、風斗(CV:KENN)

Partyだけにきらびやかな王道の90年代男性アイドルポップス。こういうの否応なしにテンションが上がるのでこの順位です。ブラコン未視聴ですが3人が徹底的にキャラ歌唱してることだけは伝わってきます。特に、細谷さんが健気に音痴に歌ってるのが本当に愛しくなる…。

 

6位 CATWALK

「peace」収録/吉野裕行

Do itも入れたかったけど、楽曲の洗練度でいうとこっちかな…?と思ったので敢えてDo itは入れずにこっち。ピアノと打ち込みだけのアーバンなイントロが始まったと思いきや吉野さんが歌い出すとホーンが入って歌謡ディスコファンクに華やかに展開していくところが好きです。

吉野さんのちょっと高めで昭和のアイドルのような歌声が女性目線のアダルティな歌詞とすごくマッチしてます。

Peace(豪華盤)(DVD付)

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でもDo itも捨てがたかった…。吉野さんのいい意味でうますぎなくて隙がある”大人のオジサン”的な歌声が、とりあえず飲んじゃえばハッピーみたいな歌詞にこれまた合う。

5位 だってまだまだアバンタイトル

ツキウタ。シリーズ デュエットCD 年少組1・だってまだまだアバンタイトル」収録/師走駆(CV:梶裕貴),如月恋(CV:増田俊樹)

さつきがてんこもりと言えばエビ中の「ほぼブラジル」「売れたい!エモーション」から、女の子ならではなかわいさを引き出す曲を作ってる人という印象があるのですが、この曲はエビ中に提供した曲以上に女性声に最適化されてるような気が。男性声と相性悪いと思われるピコピコサウンドから生まれる、この「なぜか男性声優が歌ってる…」違和感が最高です。なんか女装見てるみたいな感じです。最高です。

梶くんは、まあ安定のハニーボイスなのでそこまで違和感はないんですが、問題は増田くんですよ。増田くん、こんなかわいい声出せたの?ってめっちゃびっくりしました。テニミュであんなにラスボス感のある幸村を演じていた人が将来的にこんなに女性アイドル感のあるぶりっこな曲歌ってるという事実に、震える。

2015年は増田俊樹さん売れて欲しい。

 

4位 明日へのLast Race

Free!キャラクターソングvol.6」収録/山崎宗介(CV:細谷佳正

この曲で山崎宗介さんのことを3次元として推すことを決めました。

Free!本編では肩の故障によりひとりだけ未来が描かれず不遇だった山崎さんですが、こうしてキャラソンで「まるで全然別のアニメのOP楽曲か?」と思えるほどにいい曲をもらってるので報われました。奥のほうで鳴ってるストリングスが美しい、ちょっとネオアコっぽいクソ爽やかな曲をまさか山崎宗介が歌うとは…ですよ。アニメではまったくそんな爽やかさを感じさせなかった宗介が。

アニメの宗介の低くて冷たい声はどこかへ消え、「大学のサークルのちょっと歌がうまい男子」感のある絶妙なリアルさと透明感のある声だったのがいい。細谷さんの歌声最高。これは”サークルの男友達”としての山崎宗介くんに片思いをするしかありません。


『Free!-Eternal Summer-』キャラクターソング Vol.6 山崎宗介 (CV.細谷佳正 ...

 

3位 optimistic negative thing

「A Silent, within The Roar」収録/OLDCODEX

R.O.Nくんが抜けた後のOLDCODEXって、そこまで目新しいことをしていないような印象があったのですが、この曲だけは、攻撃的なバンドサウンドと四つ打ちのエレクトロサウンドが折り重なるように合わさったおもしろい構成になっていて、楽曲として攻めの姿勢を見せつけた1曲だったのではないかなと思います。最初のTa_2さんのシャウトのあたりは、なんか洋楽でこういうの聴いたなと思って類似の曲探そうと思ったくらい(でも30分探しても思い出せなかった)紛れもなくかっこいい。声優風情のバンドと思って埋もれるのには惜しいかっこよさ。

ライブでの演出も最高だった。

A Silent,within The Roar(初回限定盤)(DVD付)

A Silent,within The Roar(初回限定盤)(DVD付)

 

 

2位 JUMBLE TOWN

「PRISM」収録/寺島拓篤

男性声優楽曲で、そういえば今の流行りっぽい80sを意識した曲ってないかもなと思ってたら完全にJUMBLE TOWNがそれでした。シンセの使い方、間奏で突然挟まれる女性声のラップパートといい、今一番流行ってる音楽を取りこぼすことなくキャッチしてる感じがひしひし伝わってきます。

あとハニコさんも褒めてましたけど、ほんと、歌詞がプロが作ったのかっていうクオリティですね。

いい曲しかない寺島拓篤さんのアルバム、男性声優ファン以外の人にもぜひ届いて欲しいものでした。てか思ったんですけど、男性声優って作曲者に有名な人をクレジットすることで話題になるインパクトはどれほどなのだろうか…。

あとshinosukeさんもっとジャニーズに曲書いてください…と思っていたら最新アルバムの松本潤ソロ書いてるのですね。知らなかった。

PRISM(DVD付)

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1位 FUTURE FISH

「FUTURE FISH」収録/STYLE FIVE

やっぱりSTYLE FIVEがナンバーワン。

今年のFree!のEDは「そう来たか」と驚いたほど期待を上回るいい曲でほんとによかった。ローテクな感じの打ち込みとシンセの音がなかなかオシャレで今っぽいチョイスなのではないかと思います。加えて、いろんなところでいろんな音が鳴るガチャガチャ感が、STYLE FIVEのアイドル感とあいまって楽しい。NEO BLUE BREATHINGも好きだけど、あっちはSTYLE FIVEというアイドルが、既存のアイドル曲をなぞってみただけな気もしていて、であれば既存の男性アイドルがあまり歌ってない雰囲気のこっちが大賞だろうと思いました。

Free!本編で、「どこまでいらぬ腐敗を進めるのこのアニメは?!」っていう底なしの沼感を味わった後で脳天気に流れてくるウィアウィア…に対して「ウィアウィアじゃねーよ」と突っ込んだオタが日本に何万人いるんだよと思う、印象的なイントロもいいです。


TVアニメ『Free!-Eternal Summer-』ED主題歌,CW 試聴動画 - YouTube

 

おわりに

キャラクターや声優の文脈を踏まえた上で感じる「いい曲」と、単純な「いい曲」って別で、すべてのアニメやキャラクターを把握しているわけではない状態で男性声優楽曲大賞ってものを選ぼうとすると、曲によって評価基準がややバラバラになるのが実感できました。

なので順位は正確ではないかもしれないけど、なるべく文脈を踏まえなくてもわかる「いい曲」を選ぼうとはしてみました。書いてみてわかったけど、これは、男性声優に見向きもしなかった1年半くらい前の自分にあてて書いてるようなものかもしれない…。

来年はもうちょっと意識して手広く聴いていきたいと思います。

 

ハマって1年、25回の現場でわかってきた鈴木達央の魅力13選

鈴木達央さん、31歳のお誕生日おめでとうございます。
 
昨年の11月11日の時点では、ジャニオタだった自分がついうっかり横道に逸れてハマってしまった声優さんくらいにしか思ってなかったので、浮気3日目のような浮ついて調子こいたテンションでこんなブログを書いていたわけですが。
 


夏に現場がなかったジャニヲタが鈴木達央さんにハマった理由 - パノラマロジック

 
書いた私でさえ、この浮ついた気持ちは半年と持たないと思ってたんですよ。
なのに気づいたら昨年の11月から、25回も達央さんがいる現場に足を運んでいました。
 
気づけば「きゃーすきすき!大好き!でもキタナイ!Diaryがリリカル!wwww」みたいな浮気3日目のテンションも落ち着き、今ではライブやイベントなどの前に
「もう正直、鈴木達央なんてほんとどうでもいいわ……」
とのたまってからの、終演後
「ああ……やっぱりたつくんが愛しい。もっと私はたつくんの笑顔を見ていたいし、守っていきたい(両手を顔の前で組んでお祈りしながら)」
と泣きそうになりながら祈りを捧げるプレイまでするようになりました。
 
そうです、もはや声高に愛を叫ぶ必要はなくなったがいないと絶対に困るし生きていけない存在だから婚姻関係と言っていいかもしれません。

【◯◯と結婚している】
好きになってからしばらく経ち、最近ではそこまで激しい萌えは感じず、別のジャンルに目移りしたりもしているけれど、どうしても離れがたいジャンルに対して使う。

【第2弾】細かすぎて伝わりにくいし汎用性も無視した腐女子用語選手権より

ということで去年の秋にうっかりハマってしまった私が1年かけてさまざまな場所で知ってしまった鈴木達央さんの魅力を挙げてみたいと思います。
 

1. 踊れる

うたプリライブ3rdで初めてダンスしながらの歌唱を披露した達央さんなんだけど、これが、意外とキレッキレだったんですよ!欲目1000%かもしれないけど、ガシガシ踊れてた。さらにトロッコに乗って外周まわってファンに手を振る完全にアイドルな姿もこの日見られて、この日は「たつくんに降りる…」しか言ってませんでした。

2. オタクの転がし方をよくわかってる

ノブナガン上映会でのこと。共演者みんなに達央さんがあだ名をつけるコーナーで、ワンコアピールの激しい島崎信長さんにあだ名をつける順番を、わざわざトリに持ってきて、ぶっきらぼうに「お前は犬だろ」って言ったときの、客席のどよめきがすごかった。信長くんの「ワン!」という返事も、めちゃくちゃあの場をわかっていた。いいコンビネーション芸でした。

3. すぐ物を投げる

声優イベントでもライブでもよくこの人モノ投げてるなあと思うんですけど、ステージからモノを投げるのってそこに受け取ってくれるファンの存在を認識してないとできないことで、それをやってるときの達央さんは本能で自分に需要がありまくることに自覚的なんだろうなと思った。ああかっこいい。
初めて思ったのはVitaminRの2月のイベントのとき。自分のつけてたアクセサリーとかホイホイ投げ過ぎてましたね。あの時は藤重一真としての需要を理解していたってことなんだろうけど、役を入れた上で「求められてる俺」に自覚的になるのって面白い。普段からそういうことやってるって感じでもないから、役があるからバーストするかっこよさ。いいですね。

4. メガネが似合う

たまにメガネで登場する達央さん。攻殻機動隊の舞台挨拶に行ったときは、あの草薙素子の恋人役だけあって「かっこいい男」でいなきゃいけないと思ったのでしょう。黒いウェリントンのようなメガネにビシッとジャケットで登場して、このイケメンぶりに国がひとつ傾きそうだと思った。

5. 女装とぶりっこが似合いすぎる

9月に行った「お前らのためだろ45」夜の部にて、白いモフモフのうさ耳に、白いロリータファッションで登場した達央さん。お辞儀をするときもファンに手を振るときもカワイイ女子になりきっておしとやかな達央さんSooooooCute!!!!でした。誰に言われたわけでもないのにいきなり、ひとりで少女のように片足あげてステップ踏んでブリブリアピール。道重さゆみさんもびっくりのスウィートガールぶりでした。
思えば、Free!の中野のイベントでも、SPLASH FREEに乗せてノリノリで東京女子流みたいなかわいいダンスしてたよね。kawaii!!!!!
どこらへんが女子流だったかはこのブログに詳しく書いた。


Free!スペシャルトークイベント昼の部の感想 - パノラマロジック

6. なのにいきなりライブでダイブしたりする

そんな女装の達央さんを見た1週間後くらいにOCDのライブに行ったら、あのときすね毛をツルツルに剃ってブリブリのダンスをしていた人が、一転して荒々しいロックバンドのボーカリストとして狭いハコでがなってた。このギャップ最高。
楽しくなっちゃったのかこの日は突然ダイブしてましたね。女の子ばっかりで全然達央くんのわがままボディ泳がせられなかったけどね…。

7. おててがモチモチしている

アニメイトのアルバム購入特典握手会で初めて達央さんと握手会したのですが、目の前に現れた30歳男性は清らかな愛らしい笑顔で「今日はありがとう!」って言って握手してくれました。手が白パンのようにあったかくてモチモチしてました。

8. 計画なしにいう一言が壊滅的につまんない

OCD追加公演なんばHatchで「全然関係ない話していい?」と言っていきなり話し始めた内容が「昨日風呂で考えてたんだけど、俺たちの「The Misfits Go」て曲あるじゃん?その頭文字とったらTMGじゃん。これ、たまごか〜と思ったらたまご食べたくなってきちゃったんだけど、なかったから麦茶飲んで寝た」
 
それがツアーファイナルでいうことかよ…。やばいかわいさ。

9. かわいいって言われるとキレる

これは何の公演で言ってたってわけじゃないんですけど、OCDのライブで例えば何かを言い間違えたりしたときに、お客さんが「ヒュー」とか言ったり「かわいいー」とか言ったりするたびに「うっせ!」「しね!」って小学生男子のごとくややマジギレしてるのが最高にかわいい。こういうのもしかして本人はめっちゃ嫌がってるのかもしれない。でも嫌がってるからこそ言うよ。そこで自分のかわいさに自覚的になって調子に乗り出したらかわいさが半減するよ。だから今のうちに言わせてもらおう、かわいいと。

10. 真面目すぎる

アルバムが発売される前のライブでしきりに「手にとって、よくなかったら割ってください」と言ってたTa_2さん。言うことがいちいち極端だよね。ゼロか100かしかない。ほんとこういうクソ真面目というか、あえて伸ばされた手を遠ざけようとする言い方好きだなと思うんですよこの人。大好きです。

11. 「日本一中途半端なボーカリスト」って自分で言う

二足の草鞋でバンド活動を続けるOCDのTa_2さんとして、時には心ない言葉を浴びせられることもあって自分の立ち位置に悩んだりする…という心情をツアーファイナルで吐露していたときに自称していた言葉。
多分本気で中途半端がいいと思ってる人はあえてこんなこと自称しようとしないだろうと思うんですよ。負けたくない気持ちから出発して負けないように決意をもって開き直るその意地らしい部分が本当に大好きだよ。

12. Night Flightで見せる笑顔が世界一かわいい

あ、ごめんまた「かわいい」って書いちゃった。今年の夏からのアルバムツアーのアンコール1曲目はこのキラキラした楽しい曲で始まることが多いんですけど、この曲で笑顔でステージを跳ね回るTa_2さんはあの瞬間、世界一で一番生きてて楽しい人間なんだろうと思うほどめっちゃいい顔するのであの顔を見にお金も、交通費も、フロアの熱気と圧縮に耐え抜く根性も捧げてるんだと思います。

13. 歌がうまくて声がいい

はい。やっぱりこれに尽きます。どんな現場に行っても思うんですよこの人の歌の表現力は本当に素晴らしいし努力の積み重ねで神様から愛されるようになった声帯を持ってるんだろうなというのが。
鈴木達央さんの魅力の一番はこれだと思います。
 
そんなわけで私みたいなにわかファンの愛情なんていつまで持つかわかりませんがこれからも世界一愛しい鈴木達央さんが見れるならその活動を無理のない範囲で応援していきたいと思います。
(ご本人のMCのぶっきらぼう感を踏襲)

遊郭パロ妄想が捗る鯛よし百番に行ってきた

突然ですが遊郭もののBLが好きです。正確に言えば、遊郭パロ妄想をするのが好きです。遊郭という言葉からイメージする艶やかさと非日常性、そして「遊女はここから出られない」という閉鎖的な環境に、ファンタジーとしてうっとりしてしまいます。

 ちょっと前になりますが、そんな遊郭パロ妄想が捗りまくって仕方ない場所に行ってきました。それが大阪は西成区にある料亭の、鯛よし百番です。飛田新地遊郭として大正時代に建てられた建造物を改装して作られた料亭です。


鯛よし百番 (たいよしひゃくばん) - 天王寺/居酒屋 [食べログ]

 

この日は動物園前駅から商店街のアーケードを通り、飛田新地の料亭が立ち並ぶ道を通り抜けて行ってしまったのですが、男性同伴だったからよいものの、女性同士で行く場合はこのルート、マジでおすすめしません。

本当にタイムスリップしたかのような昭和的な大阪の商店街が見れて感激はするものの、「ああ…ここが大阪のアンダーグラウンド」と思わざるをえない怖い雰囲気だったので女性同士で行くときは天王寺からタクシー使ったりしたほうがいいと思います。

(でも料亭街の雰囲気もまた、それはそれでいい参考になった)

お店自体は飛田新地のはずれにあり、普通のお客さんもたくさんいるので心配ないところです。甲斐みのりの「乙女の大阪」というレトロモダン乙女ちっく好きにたまらないガイドブックで紹介されていたくらいなので。

お店の外観はこんな感じ。

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入るとすぐ通される待合室。

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 ちなみに載せる写真はすべてアプリを使ってスマホで加工している画像なので荒い部分もありますが、このアプリだと手軽に映画『さくらん』の世界かと思うほどの極彩色のケバケバしい写真が撮れました。(まあそりゃニナミカアプリだもんね)

蜷川実花監修無料カメラ加工アプリcameran

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待合室の右側にちょっと映ってるのは、豪華絢爛な陽明門。日光東照宮のやつを真似て作ってるのでしょうか。

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 この門の向こう側の部屋がこんな感じ。遊郭時代にはお客さんの待合室として使われてたのだろうか。

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カメラアプリで加工しなくてもこんなにレトロな雰囲気です。

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階段があり2階にあがれます。

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2階の廊下にある謎の応接間。

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この周りが掠れた加工はHipstamaticという、フィルムやレンズを入れ替えてアナログカメラの雰囲気を楽しめるiPhoneのカメラアプリで撮ってます。

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ここはとにかく廊下に風情がある。

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廊下を歩いて行くとこんな太鼓橋も。

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細かい装飾までが凝っていて、どこを眺めても飽きないのでした。

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帰る頃にはすっかり日も暮れてました。

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大正初期に建造されたようですが、大人の遊び場として当時からしてもケバい美的価値観のもとに装飾がなされたのではないでしょうか。

関東民からすると完全に非日常でしかないスーパー玉出の電飾を見ていると、大阪独特の、毒々しい華やかさがどちらも根底にあるのかもと思ってしまいます。観光地化された新世界の串揚げやら何やらの看板達もそんな印象。

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もともと私は、この本で鯛よし百番のことを知りました。

この本の影響で私は大阪に多大なロマンチックな幻想をいだいているのです。もう遠征はしばらくやめようかなと思ってるんだけど、やっぱり大阪が好きでまた行きたくなってしまう。


Amazon.co.jp: 乙女の大阪―デート、食べ歩き、お菓子・おみやげ探し、クラシックホテル・レトロ建物巡り…乙女心の大阪案内 (MARBLE BOOKS): 甲斐 みのり: 本

OLDCODEXのツアーで感じたこと総まとめ

OLDCODEXの、A Silent, within The Roar Tourが終わりました。

鈴木達央さんを好きになってから、実はそこまで彼のバンド活動を深追いする予定はなかったのですが。気づけば札幌、福岡、大阪、名古屋、熊谷、お台場、新木場、なんばと8箇所回ってました。
それだけ、OCDってバンドの、噛めば噛むほど面白い部分に触れてしまったのだと思います。

このツアーを回れてよかったなと思うのは、やっぱりoptimistic negative thingからwire choirに至る、バンドの静と動の振れ幅を味わえるあのパートがあったから。

あのパートでTa_2さんは「ライブをやる土地それぞれにこのパートはオーディエンスの反応が変わって面白い」というのをよく言ってたけど、バンドの見せる姿もあのパートでは如実に違いが現れていたと思う。毎回毎回一秒足りとも逃したくない思いで全神経をステージに集中させていたほどだった。

四つ打ちと荒々しいバンドサウンドが折り重なって鵺のような奇怪な生き物の姿になるoptimistic negative thingはすさまじくかっこよかった。そして、やっぱり私はこの人の歌声が本当に泣けるほど好きだなと再確認しまくるHow Affection。人間の体が発する歌声が、感情を暴発させながら、ギターの音に拮抗していく様が本当に素晴らしいと思った。

Ta_2さんのHow Affectionで見せる表情は毎回どこか違ったように見えていた。我を忘れて荒ぶるような時もあれば、冷静沈着に音をとらえて曲を演じ切るようなときもあった。歌声がひとつでここまでの表情を見せられるのは本当にボーカリストとしての底力だと思う。

そして、なんといってもこのHow Affectionから次の〔Blue〕への流れが秀逸だと思う。

How AffectionはTa_2の生身のボーカリストとしての表現力が作る。どんなに荒々しいギターが鳴り響こうが、歌声は覆われることなく、そこでは歌声が剥き出しの姿で立ち現れてくる。けれど、〔Blue〕では一変して、バンドのアンサンブルにひとつの音の素材としてボーカルは寄り添うことを求められている。Ta_2さんの声は無機質な素材に徹する。

この振れ幅の恐ろしいまでの広さがTa_2さんのボーカリストとしての強みであり、OLDCODEXの面白さだと思う。この2曲が隣り合わせになったことで、一層その表情の多彩さが浮き彫りになる。
まさにツアータイトルに相応しい、相反する2つの事象の同居だった。

立て続けに演奏されるElephant Overのシューゲイズな美しいギターには意識が宙へ飛ばされて行くような感覚を覚えるし、その後で突き刺すような前奏から始まるWire Choirはその向こう側にバンドとしての物語を見てしまう。この曲は、毎回2人の見せる表情が変わるのがよかった。

毎回、終わった後はTa_2さんはオーディエンスに向かって「ホラ、微妙な空気になった」とかって茶化してたんだけど、あのパートは素晴らしくて余韻に浸りたいからぐっと黙ってしまうんだよなあとTa_2さんのmcを聞くたびに思っていた。

私は、基本的にタテノリの音楽がそこまで好きではないし、Ta_2さんとYORKE.さんの夢見がちで情熱的で純粋なMCには意地悪なオトナ心が働いて目眩がしてきちゃったりするから、正直OCDのライブを心から楽しめてるかと言われると、どこかで少し無理をしてるところはある。7本目の新木場でそれを顕著に感じて、8本目のなんばは完全に消化試合のつもりでいったけど、やっぱりこの唸るしかないセットリストにやられて心を入れ替えるのだ。やっぱこのバンドはすごいなと。

それ以上にこのバンドが面白いのは、Ta_2さんの存在だった。それをなんばのMCでやっぱり改めて実感した。

「俺はこの場所に立ってるときはボーカル(違う言い方していたのですけれど思い出せません)でしかないと思ってる。だけど俺はほかにもいろんなことをしてるから中にはそれを許してくれねぇ奴もいる。そういう奴には色々言われんだ。時にはすげぇひでぇことも。だから俺ってなんだろうって考えて、なんだろう、なんていうか、ほかのやつとは全然違うとこで悩んだりして悩む必要ねぇとこで悩んでさ……だって俺は俺じゃん?そういう奴にはすげぇ反発したりして、だけど、認められたい自分もいんだ。ライブ終わると。そういうこと考えてると頭いっぱいになって、何書いたら良いかわかんなくなって、 書いてみるんだけど、何回も消してさ……だけど俺は今日腹括ることにしたわ。俺はどっちつかずの中途半端な奴かもしんねぇけど、それなら誰も文句言えねぇくれぇ中途半端な奴になればいいと思うんだ。俺は世界一中途半端なボーカルを目指したい」 
引用元:http://matome.naver.jp/odai/2141432188393002801
声優とバンドのボーカルの2足の草鞋のTa_2さん。まあ、そうなんだろうな。と、なんとなく想像出来ていた彼の内面の苦しみが、目の前で吐露されていく。この時のフロアはいつになく静まり返っていた。誰も気安く声をかけようとはせず黙ってそれを聞いていたのが印象的だった。

つまんない外野の言うことなんか気にしなくていいのになと思う。OLDCODEXもTa_2さんもすごい振り幅を持った存在だから。相反する二つの世界で行ったり来たりを繰り返せばいい。そういう自分を誇ればいいと思うのに、そんな迷いが出てくるということは、本人も言ってるけど、認められたいのだろうな。そういう姿勢が、いじらしくて愛しい。

この日のアンコールは、割れんばかりのOCDコールに迎えられたのに、ステージ出てきたTa_2さんは、熱狂を裏切ってフロアをまじまじと見渡していた。何か珍しいものでも眺めてるように。

「この景色ずっと見てられるなあ。お前らいい顔してんぞ」

いやいやそんなこと言ってないで早く演奏やれよ。と思わなくもなかったけど、その突き放す感じがいいな、と思う。Ta_2さんは「お前らにいつも背中押されてる」と言いつつも常にどこかでオーディエンスと距離をとってるように見える。

これだけたくさんの人がこのバンドを見に来てるのに自分のことを「中途半端」と名付けて開き直ろうとするのだから、Ta_2さんの閉じこもり方は根が深いんだろうな、と思う。やすやすと慰めの言葉を聞き入れない人なんだろう。

そんな頑な人が、音が鳴り出した途端、この上なく幸せそうな顔をしてステージの上を飛び跳ねるのを、このツアー中に何度も何度も見た。日頃感じている迷いやしがらみから、多分このときだけは解放されているように見える。これ以上ないくらいに幸せな笑顔。

だから、信じられるなと思う。へたに迎合して自分を偽ることができそうにない人の笑顔だから。

こんな時、手を伸ばしたその先、ステージ上で彼が全身全霊で飛び跳ねて歌ってるその事実がたまらなく愛しい。目前で息をしてるのが、とっても嬉しく思えてくる。息をして動いてる。それだけでもう、ありがとうと思えてくる。だからそういうTa_2さんの顔を見てこっちまで一緒に笑っちゃう。Ta_2さんは「お前らほんといい顔してるよ」ってよく言ってるけど、その原因は完全にTa_2さん自身にあるんだよ。

そういう笑顔を見ていると、その瞬間だけ手放しにあらゆるものを信じることが快感に変わる。普段は斜に構えて遠巻きに眺めていた青臭い言葉も、真正面から受け止められる。

楽しくてヒリヒリするバンド。正直こんなバンド好きになれない、とか言いながらもなんだかんだてこんなにツアーに行ってしまったのは本当にこういうところなんだと思う。もう遠征はしない予定だったけど、やっぱりまたしようかな…と思ってしまう。

楽しいツアーだった。

「鈴木達央」で短歌を詠んでみたよ

歌会「明星」の今回のお題は、待ちに待った「鈴木達央」ということで、鈴木達央短歌を詠んでみました。


毎回、楽しく作っているのですが、今回だけはかなり難しく、長いこと考えたのに全然出て来なかった気がします。というのもナウオンタイムで一番大好きな人なので冷静に見つめることがまったくできなかったからです!!!

で、作ってみたのが下記の3つ。

1 好きだとか愛してるとか言われても持て余すだけの100円ライター
2 振り払う手をもう一度掴もうと伸ばしてくれた手。触ってくれ
3 乱暴に突き上げ揺すり中に出しこぼしたそれ「かわいい」「死ねよ」

鈴木達央さんの魅力のひとつに、近づいてくる人を全て受け入れるのではなく試すように遠ざけたり、自ら愛されないように防御壁を貼るところがあると思います。

彼はファンサービスは結構いいほうだと思うけど、Diaryに書くファンへの言葉遣いがぶっきらぼうだったり、かっこいいとかかわいいとか言われることを避けるようにしたり(むしろそう言われないようにあえてヒゲはやしたりしてるのかな…と先日のランティス祭で思いました)誰かにどんなことを思われてもいいからと、自分の言いたいことを貫こうとします。(そのせいでたびたび炎上します)

バンドでのMCでも「自分たちの名前を覚えてくれとは言わないけど盛り上がってくれ」「アルバムは聞いてほしい。でも、出来がよくなかったら割ってくれ」という極端な発言が飛び出します。これは、常に彼の中でひとりになる覚悟をもって表現を届けようとする信念があることの現れなのでしょうが、ライブの場で、一緒に盛り上がろうと手を差し伸べようとするオーディエンスに向けての言葉としては、その好意を自ら振り払ってるように見えます。

なぜ彼はそんなふうにせっかく向けられた好意の目線をブロックしようとするのか。これは想像ですが、多分愛されないことが怖いのだろうと思います。最初から愛されなければ、愛されなくなってしまうことへの恐怖は生まれるはずもない。だから、最初から愛されないように振る舞う。

愛を乞う手つきとしてはとても不器用。そこが、鈴木達央さんの魅力だと考えています。

そんなわけで出来たのが、1の短歌。達央さんという人を現すのに必要な要素のひとつである「喫煙」を踏まえています。喫煙していると、100円ライターをしょっちゅうなくしてはまた買ったり借りたりしてるうちに溜まっていって持て余してしまうので。100円ライターのように「好き」「愛してる」という言葉をもらっても持て余してる。というのを詠んだのですが、意味がいかようにでも読めてしまう並びなのが反省点でした。

2はそうした好意を振り払った先まで読み込めたので個人的にはこれが気に入っています。最初は「振り払う手をもう一度掴もうと伸びる手を持つ人だけ愛す」だったんだけど、これだと達央さんにしては偉そう。彼は徹底的に自己卑下しないと気が済まないと思うのでやめました。

そして、達央さんをつくる要素として重要な「エロ」も入れなくては。ということで3が出来ました。
(下ネタ大好きで過去のリアルな性体験をバンバン公言するのに、演技の上では抱かれまくり喘ぎまくる一級のAV女優のような真逆な方向にねじれた達央さん最高ですね)

達央さんの魅力をもうひとつ述べると、「自分でまったく意図してない無防備さ」にあると思っています。なので雄々しい性行為のモチーフが本人が意図してる部分で、そっから不意にこぼれた部分は「かわいい」の部分。しかしそれを「かわいい」っていうとMCで「うっせ!死ね!」とか言ってくるんだよな。。。かわいい。

作ったけど出さなかったのは以下の3首。

喉の奥誰かになるために空けた場所に自分を詰め込みがなる
出力を最大にしてハウってる愛しか聞けない囁けない
向けられた歓声すべて振り払う闇雲に振る子供の手つき

達央さんて演技するあまりにTa_2ってキャラでさえもどっか演じてないか?という妄想のもとにつくったのが1番目。2番目は何書いても炎上するDiary芸人としての達央さんを詠んだ、みたいな感じです。

そして、今回の講評ブログで出された短歌はどれも、そうか、それがあったか!と感嘆するものでとても面白かったです。

好きだなと思ったのはこちら。

・心臓を削ってきみに与えれば息をし始めるのが嬉しくて

私はどちらかというとOLDCODEXのTa_2さんとしての言動に引っ張られすぎてあまり役者としての鈴木達央さんを捉えられなかったなとこの歌を読んで思いました。心臓を削って役に挑むような気迫があるし、恐ろしいくらいに役に徹する彼を何がそう駆り立てるのかは結局「嬉しくて」という単純な感動なのかもしれません。素敵です。

・青空を仰いで煙吐き出して今日も生きようだとか思った

これを詠んだのは鈴木達央か?と見まごうばかりの鈴木達央感があって大好きです。青空を仰いで煙を吐き出すまで清々しいほどピュアな感じなのに、生きようと思った、じゃなくて「生きようだとか」というところにこの人の素直じゃない感じが出ているなと思いました。

・幻を赤いルージュで塗りつぶしあなたに聞かせるための真実

受け演技が絶品でやたらとエロい役をもらう頻度が高い達央さんのありようが赤いルージュに出ているなと思いました。「あなたに聞かせるための真実」も決して真実ではないんだけど真実になりきろうとする達央さんの切実な演技に対する姿勢が読めます。

・引っ掻いた傷が無数に残るベロ もつれて鼻にかかった「イク」

短歌を始めた当初、「好きな人やものを自分が美しいと思う形で切り取るつもりで」と言われ、実際ジャニーズJrや佐藤勝利さんはそういう作り方が出来たんだけど、どうも鈴木達央さんにはきれいに飾る言葉が見つからない…と思っていたけどこういう形で詩的に美しく艶っぽく詠むこともできたんだなと思いました。
っていうか、下の句が超的確に達央さんの喘ぎ声の素晴らしさを現してるなと。そうそう鼻にかかった声なんだよね。すみません。

・魂を削って磨いてやわらかい部分に俺の名を刻むまで

ああああそうそうこれも達央さんのあり方そのものだなあと思いました。野心家なんだけど、その野心は自らの魂削ってる感じ。しかし、すみません、この魂は「俺の」魂だったのかな…?

なんか自分で作った短歌をぐだぐだと解説するのも無粋だなと思うのでもうやめようかなと思ってましたが、達央さんのことだけは自分の整理にもなるし語らずにはいられないので長々としたためてしまいました。もうすぐ達央さんに落ちてからやっと1年です。

楽しい1年だったな…。


月刊根本宗子「私の嫌いな女の名前全部貴方に教えてあげる。」感想


月刊根本宗子初めて観てきました。すごく面白かった。
これはほんと、色々な人が書いてるけど、一方で笑いが起きるけど一方では自分の身につまされてまったく笑えないというお芝居。勿論リアルよりずっと滑稽に戯画化されてるんだけど、そこにがっちり自分の身に当てはまるような痛々しさが含まれているので、手放しには笑えない。それどころか泣けました。

アイドルバンドのボーカル川西くんを巡って、彼と同棲中の劇作家の根本宗子(本人役)、彼と合コンするキャバ嬢達、そして彼の熱狂的なファンのアンリが繰り広げる悪夢の惨劇を描いたのがこのお芝居。

終わってしまったので、内容をざっくり説明すると、川西くんはキャバ嬢との合コンで唯一気に入った清楚系ビッチと浮気をしてしまう。それを知った彼女の根本さんは川西くんと泣き喚きながら大げんか。一歩も引かない川西くんは彼女に対して少し暴力的な一面も見せる。

そして川西くんの浮気から何も芝居が書けなくなった根本さんは、川西くんと合コンしたキャバ嬢達を次々に刺し殺していく。血に染まるカラオケボックス。川西くんと浮気した清楚系ビッチの笠島が最後の一人となり、根本さんは彼女にたいして「自分がどれだけ川西のことを近くで見て様々なことを知ってきたか」をとうとうと語る。ビッチと浮気したことで逆ギレした川西くんは「私の知らない川西くんだった」と。

と、そこへ川西の熱狂的なファンのアンリが登場。「お前らなんかより、CD1000枚買った私が一番川西くんを思ってる」と絶叫。ラストシーンはライブハウスのスポッライトに照らされて歌う川西くんと、それをステージの下から見てバンギャル独特の動きをするアンリが幻想的に映し出されて終わるのだ。

いやー、泣けるよ…。

誰って、アンリに感情移入しまくる…。アンリの存在はもしかしたら、ある男の痴情のもつれの物語を突飛な位置から粉々に破壊しに来たただの道化なのかもしれない。彼女の記号的なバンギャルとしての立ち振る舞いはあのお芝居の中でも一番戯画化された存在だったように思う。けれど一番泣かされたのは川西くんを長年ストーキングしてきた熱狂的なファン、アンリのセリフだ。

「川西くんのどんな面を見ても、川西くんが一番だと思ってここまで来た。頭がおかしくなきゃ好きでい続けられない」(セリフままじゃないけど、そんな趣旨のことを言ってたと思う)

私もずっとステージの上の人ばかり好きになってきた。
そんな人たちのプライベートな恋愛が気になって仕方ないタイプだ。アイドルなら早く恋愛報道が出て欲しいと思うし、いっそAV女優と付き合ってくれるといいな…と思ったこともある。そしたら普通は彼しか知らないであろう彼女の身体のすみずみがオープンにされているから。ステージの上に立つんだからそこらへんまで私たちに差し出してくれよ、と思ってしまう。

なんで自分から率先して大好きな人がどんな女とどんな恋愛してるか知りたくなってしまうのかと言えば、それは花も恥じらう小中学生だったときに知った、好きな芸能人の恋愛スキャンダルに傷ついた反動だと思っている。そんなにすごいスキャンダルを見聞きしたわけではなくて、近しい女性との根も葉もない噂ばっかりだったと今は思うけど、そういうのに傷つけられるうちに過剰反応してそこだけ皮が厚くなってしまった感じ。

だからわたしは大好きな人がどういう恋愛してるのか仔細に妄想する癖がある。絶対に自分ではない誰かに恋愛している愛しい人の妄想。しかし、自分が介在しない恋愛妄想は客観的に見れば虚しい。どうしてこうなっちゃったんだろうと思う。どこかでは夢小説的な思考に憧れている。

だから、どんなに裏切られたような場面を見ても狂気的に「好き」の気持ちを持ち続けてきたアンリに自分を少し重ねてしまった。もちろんアンリみたいにストーキングに走ったりしてないし妄想だけですけど…。

このお芝居の中では、「好き」と「嫌い」の価値が反転しているように見えた。

アンリもそうだけど、彼女の根本さんも、「好き」という気持ちで魔物になっている。川西くんと根本さんがえんえんと口論するシーン。観客として見ていても「早くどっちかが折れてやめよーぜ…」と思えるほどに疲れる喧嘩だった。根本さんはそこで「嫌いになれないから、こんなに怒ってるんじゃ〜ん」と喚いていた(これもセリフままじゃないのでニュアンス)。

そう、嫌いになれれば物語は終わるのだ。「好き」を暴発させたせいで、二人の口論はえんえん終わらない。そして、根本さんは合コン相手を惨殺する。

対して、「嫌い」という感情はとても気持ちの良いものじゃないか?とこのお芝居を見てると思えてくる。

お芝居のタイトルからもあるように、最初の合コンシーンでは、女が嫌う女たちの行動が大変胸糞悪く描かれる。身の周りによくいそうな「嫌いな女」。空気読めない不思議ちゃんとか、先輩にへーこらするぶりっことか。

そして、一番忌み嫌うべき存在として、笠島という女が描かれる、清楚で何も知らないようなフリをしながら眈々と川西を狙ってて、挙句トイレの中で川西とキスをする笠島である。無個性でかわいげのない無難なファッションで、男心を知り尽くした言動をとる。過不足なく抜け目ない。

そんな笠島を血にまみれたカラオケボックスで、包丁を片手に根本さんが追い詰める。芝居の上では「彼氏を寝取った女への殺意」がこの行動に走らせてるわけだが、実名で登場した根本さんが「お前の、その服装とかなんかもう全体的に嫌いなんだよ!」って言ったときの痛快さと言ったらない。実名で、本人役として登場する根本さんの生々しさが、そんな清楚系ビッチへの嫌悪をほとばしらせる。ああこれは現実なんだと思う。

直接的になにかされたわけでもないけど敵だと感じる同性っていっぱいいる。目に見えない誰かといつも闘ってる。その目に見えない戦闘が目の前で具現化されて、ラスボスを血まみれの手で追い詰めている!って考えたらあのシーンはすごく興奮した。

もしかすると、「嫌い」という気持ちは「好き」よりもずっと楽しいことなのかもしれない。

劇中ではBiSの曲がいくつか使用され、根本さんの部屋を模したセットには大森靖子のポスターが貼られていた。私はBiSと大森靖子が嫌いだ。直接的になにかされたわけでもないけど、「これ敵だ」と直感がいう仮想敵の典型。でも、劇中で爆音でかかるBiSはしみじみとめっちゃかっこいいし、このお芝居のお陰で帰り道に大森靖子聞きながら帰った。

やっぱり「嫌い」って楽しいんだな、と思った。


ちなみにこの川西くんのモデルというかネタ元となっているのがセカオワの深瀬くんていうのもまた絶妙だと思う。セカオワも、手放しで好きにはなれない存在だ。でもすごい気になってる。いま中学生だったらきっとハマってたかもしれない。ここにも手触りのよい「嫌い」の気持ちが存在している。

でも、深瀬くんの抱える不安定さとか、危うい感じ、妙に性的で気になってしまう。こういうタイプを好きになったら、それはその「好き」で、その身を滅ぼしかねないよね…。

私は深瀬くんと同じDopeの帽子を愛用している声優の鈴木達央さんが好きです。