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泣かされるつもりはなかった、声優リアリティーショーとしての美男高校地球防衛部LOVE!

美男高校地球防衛部LOVE!祭」に行ってきました。

まさか、防衛部の2期発表のお知らせで泣いてしまうとは思ってもみませんでした。

 

私だけじゃないと思うんですけど、防衛部のこと「クソアニメ」だと思って見始めた人たぶんいると思うんですよ。男子高生たちがいきなり愛と正義のヒーロー「バトル・ラヴァーズ」になって怪人達をやっつける、熱い展開が皆無のゆるゆるぐだぐだギャグアニメ。美少年キャラ達のとってつけたような裸とかBL展開が溢れるアニメですよ。この説明書いててもクソアニメの香りしかしないでしょ。

 

でも、ハマってしまったんですよね…。さまざまなお約束が踏襲された、書き割りでできたようなぺらっぺらな世界の中で、ふとした瞬間にすごく腹オチする台詞があったり、キャラクターの複雑な魅力が見えたりするのが、防衛部が私の中で「クソアニメ」にならなかったゆえんなのかなと思っています。

例えば下呂阿古哉くんが、最終回で自分達を騙していた敵に対峙した時、先輩が手を出すよりも真っ先に敵を殴るシーン。絶対自分の手を汚しそうにないし年功序列なんて言葉と無縁の世界に生きてるような阿古哉くんが、殴った後で「こういうのは、一番若手の仕事でしょ?」ってさも当然のように言うわけです。こういう、たまにしびれるほどぐっとくる台詞とか展開とかあるから、「いやいやこんなのクソアニメでしょ」って舐めてかかってたらあっというまに真剣に好きになっていたのです。

 

で、まんまとその中の人達にもハマってしまったんですよね…。

防衛部と言えば、放映前からキャスト5人のニコ生「バトル・ナマァーズ」を始め、DVDなどのリリースのたびにトークイベントやお渡し会が行われ、DVDの特典映像にキャスト5人の旅行映像を収録したりと、やりすぎなくらい徹底された声優売りで、これも最初はあざとすぎて「よくやるな~」と遠巻きに見ていました。

最初は遠巻きに見ていた私がこんなに防衛部キャストにハマってしまったのは、ただただすべてが「予想外すぎる」の一言に尽きます。こちらの予想をはるかに超える形で、さまざまなところで声優さんの生身の人間としての魅力が映しだされていたことにあります。声優のリアリティーショーとしての側面が、防衛部にはあったのです。

 

最初に衝撃的だったのはDVD1巻の箱根旅行の映像でした。

本当によくある、つまらなさと面白さの微妙な境目を行ったり来たりする声優のぐだぐだロケ映像ではあったけれども、最後に仕掛けられたドッキリが、その絶妙な裏側を見せてくれたと思います。キャストの中で年長者なのに体を張って笑いをとる担当の白井さんと、キャストの中でも「細かいことに対して正論で突っ込む」ことでおなじみのきっちりした増田さんが口論をしだす、というドッキリで、「昼間のロケでの白井さんのギャグはどうあれば良かったのか」というなんとも切実で微妙な話題から出発。リアルすぎるでしょ!沸点の低い笑いのオンパレードなロケに対して厳しく斬り込むドッキリネタで、正直これ大丈夫なの?と思いました。

この時のドッキリは、ロケがすべて終わった後に行われたのですが、罰ゲームで豪華なホテルの夕食にありつけなかった梅原さんが、ロケ終了と同時にみんなと同じ豪華な夕食を食べていて、そんなところからも、「よくある声優のロケ映像」という箱庭を外から眺めている気持ちになりました。

ここでドッキリを仕掛けられたのは、5人の中で年下組にあたる梅原さんと西山さんで、梅原さんはドッキリをあっさり見抜いてマイペースに徹し、西山さんはドッキリをマトモに受けて泣いていました。この対称的なリアクションも、あらかじめストーリーだてられてるかのように美しかったですが、こうしたドッキリから二人の若手声優としての立ち位置や気持ちが見えたと私は思いました。

増田さんと白井さんがケンカし始めたときに感じたことを梅原さんは「もうこの先、仕事として割りきろうと思った」と言い、西山さんは「せっかくみんなでこの先いろいろやっていくのに、なくなっちゃうのかなって」と言いながら涙ぐんでいたのです。どちらの言葉も、程度の差こそあれど、まだ経験の少ない主演キャラを勝ち取ったこの座組に対しての思いを感じ取ることができました。

 

(私はDVDで箱根映像を見てからニコ生を見始めたので、時系列がおかしくなってるんですけど…)次に衝撃だったのは、「バトナマ」初めての公録で、最終回でもないのに和臣さんが泣いてしまったこと。最終回じゃないのに、「終わっちゃうんだと思うと…」と言って涙を流す声優さんなんて初めて見ました。ギャグアニメだし、「バトナマ」もぐだぐだなよくある声優バラエティだし、なにひとつ真面目な顔を見せる要素も、特に振りかかる試練もなかったわけですが、この涙から、視聴者が思うよりもずっとキャスト自身の中で防衛部が特別な存在になってるんだなってことを実感しました。

同じことを感じたのはキャスト5人のライブイベント、「LOVE!ライブ!」で、この時に感じたことはこのブログで書いたので割愛しますけど、ほんと、こんなに声優の人達がエモくなってるアニメのイベントに行ったことがなかったので衝撃でした。

minaminanarial.hatenablog.com

 

そして、先日8/9の「美男高校地球防衛部LOVE!祭」では、サプライズで2期の制作決定が発表されました。

その瞬間、西山さんは興奮しすぎて頭がパーンとなったのか奇声を上げて変な動きのバンザイを繰り返し、白井さんも舞台を跳ね回っていたと思います。なんていうか通りいっぺんの喜びの表現じゃなかったんですよ。喜びすぎて表現しきれなくて振り切れちゃった人の姿を見ました。

私はこの時2階席の後ろのほうで見ていたのですが、喜ばしい2期決定のニュースなのに、周囲から「グス…っ、グス…」という涙をすする音や嗚咽が。今までさまざまなアニメイベントで続編決定のニュースを聞いてきましたが、こんなに会場中が湿っぽくなったのは初めてです。

まあ、なんとなくやるとは思ってた2期決定。イベント終わった後に友達から「そりゃ声グラの表紙決まってたからやると思ってたしサプライズなんて茶番だよ」って言われましたけど、それでも、私も例に漏れず泣いてしまいました。

同じようなことをステージ上にいる福山さんも言ってました。「西山くんと別の現場で会った時に、今後の防衛部の仕事の話聞いてたら、多分2期やるんじゃないかと思ったんだよね。でも気づいてなかったみたいだから黙っておいた。ずっとそのままでいなよ…」と。

後から考えたらこの話ってちょっと衝撃で、ファンですら見抜いていた2期発表を、キャスト自身は見抜けずに、「最終回終わっても、こんなにたくさん仕事があってファンの方に愛してもらえる防衛部っていいですよね」なんて西山くんが福山さんに言ってたという事実は、ちょっとすごいなと思います。

最後の挨拶では、まさか白井さんまでもが挨拶しながら泣いてしまうような状態で、「名前のつくキャラクターは防衛部が初めてで」と言いながら作品が愛されていることの喜びを語っていました。その挨拶を聞きながら胸がきゅっと締め付けられるような気持ちになりました。

防衛部のキャストを追い始めてから、彼らの他の仕事を注目して見るようになりましたが、白井さんは本当に防衛部に出てからやっとさまざまな作品で名前を見るようになった人だし、西山さんも同じくですが、彼なんてまだ名前のつかないモブキャラを担当するような若手なんですよね。

中堅ですら、明日仕事がなくなったらどうしようと悩むと言われる声優ですから、初めての主演アニメの2期が決まるということの重みはものすごいものなんだよなあとこの時の二人の涙を見ていて思いました。

梅原さんは「こう見えても驚いてるんですよ」って言ってたの面白くてかわいかったし、さまざまな仕事がある増田さんでさえ「ずっと防衛部やってたい」と言ってたことが叶った瞬間として嬉しそうでしたし、和臣さんに至ってはまず最初に涙顔になって周りの4人に囲まれるように心配される姿がもうデフォルトになっていて、その姿が愛しかったです。

 

最終回が来るのが寂しくて泣いちゃったとか。2期があることに気づかないまま、発表されて泣いちゃったとか。そういう、こちらが感じ取るより生々しく声優さんの悲喜こもごもを見せてくれたのが防衛部の一連の声優露出だったんだなと思うのです。

人の生々しい悲喜こもごもを見せてくれるこの手法って、なんだかリアリティーショーみたいだなと思います。一見ゆるふわなバラエティ的な要素しかなかったのに、その隙間から生々しい声優さんの姿が垣間見える感じって、ギャグアニメの防衛部がふとしたところでぐっとくる複雑な魅力を見せてくることと、どこか似ています。ていうか、表向きがすぐ「どうせクソアニメだろ」とか「どうせつまんない声優のぐだぐだバラエティだろ」と言ってしまいたくなるようなものだからこそ、真剣なところやシリアスなところが際立つんですよね。

アニメを見ていると、しばしばイベントなどで「声優目的のファンはお断り」という意見に出会います。それは、恐らくは「物語」が絶対であるからです。声優さんはアニメなどの「物語」に従事する人にほかなりません。ただ、防衛部を見ていて思うのは、声優にも人間としてひとりひとりに「物語」があり、声優目的のファンというのもまた、その「物語」に魅力を感じている人なのだろうと思います。

防衛部は、そのアニメの物語と声優の物語がうまく呼応していたアニメだったのではないかと思いました。5人の声優が単なるユニットとしてデビューしていたのであれば、ここまでリアリティーショーの要素はなかっただろうし、生々しい姿を見せつけることもなかったでしょう。声優は役者として物語を支え、物語は声優5人を支えていたのです。

そしてこの2期発表の後に流されるのが「Just going now」ってのが、またずるい。

この曲、ほんとにこんなギャグアニメの挿入歌としてエモすぎるし青春じゃん、おかしいな〜と常々思っていたのですがまるでこの2期発表直後に歌われることを予見して作られたようにぴったりでした。

「まだ今も覚めない青い春を駆け抜けている」瞬間に、立ち会ってるようなきがしました。

 

ということで、2期がとっても楽しみです。でも、相変わらずくっだらないぐだぐだでゆるふわな防衛部とキャスト5人を期待しています。