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大井町クリームソーダ第1回公演「天使のお仕事」を見た感想

男性声優に限って言えばの話かもしれませんが、声優さんがファンから評価されることのひとつに「キャラクターを降ろしてくることができる」があると思います。それは、演技において「自分を完全に消し去ること」とも言えます。「いかに自分を消し去ることができるか」は、声優にとってのひとつの評価軸で、それができることはその声優にとって、大きな強みになるでしょう。

そんな声優として活動する入江玲於奈、西山宏太朗、谷口悠の3人からなる「大井町クリームソーダ」の第1回公演「天使のお仕事」を見てきました。

https://instagram.com/p/88Bd7FgThG/

タイ料理食べに来たらメロンソーダ頼んだらクリームソーダだった、大井町クリームソーダお疲れ様でした。

 

このユニット、「面白いこと、楽しいことをひたすら追求する集団」として旗揚げされたようで、最初から演劇だけを行うために結成されたわけではないようですが、まず手始めに形にした「面白いこと」が演劇だったということでしょうか。

公演タイトル「天使のお仕事」から、"ちょっぴり笑えるキュートでハートフルなストーリー"になるんだろうな、なんてなまぬるい想像をしていたのですが、実際お芝居を見終わってみると、暗闇で突然平手打ちをくらってから強引にマッサージを受けて帰ってきた、みたいな…。痛っ、うわっ、えっ、…キモチイイ…みたいな。とにかく「なんかすごいもん体験したな…」というドキドキ感が残るお芝居でした。公演を観終わってからのほうがドキドキしているなんて体験は初めてでした。

 

ていうか、「天使のお仕事」って結局何だったの…というのが率直な感想です。

 

カワイイ、おもしろい、だけど後味がひたすら悪い

「天使のお仕事」はいくつかのコントで構成されていました。その並べ方がすごくよかった。

序盤に演じられていた「バンドのお仕事」は説明が豊富でオチがわかりやすく、まだ安心して見ていられたのですが、コントが数を追うごとに、説明が省略され、展開が不条理になっていき、毒を色濃くなっていきます。最後の「誕生日のお仕事」はまさかの不気味なオチに、小さな会場が悲鳴で埋め尽くされていたのが印象的でした。この、軽い口当たりのものから入ってじょじょに毒々しい世界に迷いこませるこのやり口には、やられた!!!と悔しい気持ちしか湧いてきません。

 

特に面白かったものを挙げていきます。

まずは、西山さん、鈴木さん、小田柿さんが「自称中身おっさんのキラキラOL」に女装して繰り広げる会話劇の「女のお仕事」。

「私みたいなサバサバしたのについてこれる女子なんて早々いないから~」「あたしなんてもう中身オッサンだからさぁ」という自称オッサン女子のマウンティングの応酬を、女装した3人が演じます。自称オッサン女子への単なる皮肉にはなってなくて、「あたしなんて1から10までオトコだから~」っというセリフを女装した男性に言わせることで笑いに昇華しているあたりがすごい。しかもその台詞を言うのが中性的で女装がバッチリ似合う鈴木さんと西山さんという完璧さ。例えばこれを女装のハマり方が弱い役者さんがやったらもう少し説得力が薄かったかもしれません。

そういえば、「自称オッサン女子」とか「女子同士のマウンティング」を毒づいた視線で眺めているのは女性ばかりなのかと思ってたんですけど、20代男性である大井町クリームソーダの人達も同じ視点を持ってるってところにちょっとびっくりしました。(後から知ったけどこれは入江さん脚本だったんですね)話は逸れますが、西山さんも防衛部のイベントで「女子同士の『えーこれかわいいー』とか怖いよね」という話をしていて、本当にこの男子達は女子をよく見てるなあと思いますし、なんていうかあんまりステレオタイプな女性観してないよね…。そういうところが好きです。

一人の女性を狙ったさまざまなストーカーが出てくる「恋人のお仕事」もよかった。ストッキングの匂いを愛おしそうに嗅ぐストーカー、彼氏じゃないのに妄想で彼氏面するストーカー、付き合ってる相手をストーキングするストーカー(アナルを舐めさせるプレイが好き)、何がすごいのかよくわからないけどすごそうなオーラを持ったキングオブストーカー、これらの4人のストーカー達が、最後に乙女ゲーの攻略キャラのようにひとりひとりBGMに乗せて名乗りを入れていくところが、おたくとしては脊髄反射で興奮する、たまらないお芝居でした。この演出自体が、声優さんがやる舞台ならではなネタですね。

声優さんがやる舞台だからこその哀愁を感じてしまったのは、「男のお仕事」も。

「この仕事に自分がやる意味はあるのだろうか」と悩む谷口さん、「お金さえ手に入れば何でもいい」と流す西山さん、「お前らも守るべきものができればわかる」と先輩風を吹かせる、小田柿さん。最近結婚したという小田柿さんが熱く仕事観を語り、いいムードになったところで突然照明がピンクになり、SMiLE.dkのButterflyが大音量で流れてきて、入江さんの秀逸な「さあさあ舐めてーこすってー揉んじゃって~」などというピンサロ風アナウンスが入り、3人はイスにまたがって淫靡な動きで腰を振る…というこの作品。

前半の、”男にとっての仕事とは…人生とは…”というしみじみとした語りのパートと、華々しくていやらしい腰振りダンスタイムの落差で笑いを産み出そうとしているだけの作品なのかな、とは思いますが、込められたもの以上の意味をいろいろと読み込んでしまいたくなる作品でした。男性声優と言えば乙女ゲーにBLに、(主に)女性の欲望に寄り添うお仕事も多々あるわけで、他人の欲望さえ満たせるスキルや資質さえあれば、もしかしたら谷口さんが言うように、そこには「その人がやるべき理由」なんてないかもしれません。類型化された、同じようなキャラクターがたくさん存在する世界なので、例え生身の人間が演じていたとしても、その声優ですら代わりがいくらでもいる世界です。そういった、人の欲望を満たす仕事に従事する人の悲哀を描いたお芝居だったようにも見えました。

でも、やっぱり一番印象的だったのは西山さんの腰つきの異常ないやらしさでしょうか。前世は本当に、ピンサロのお姉ちゃんだったのかもしれないと思うほど挑発的なまなざしと、素晴らしい腰つきにくらくらしました。

運動部の部室を舞台に、舌っ足らずで不気味なかわいさのある後輩役の入江さんが、高圧的な態度で後輩をパシらせようとする先輩役の谷口さんを、お金をもって屈服させてゆく「後輩のお仕事」。これは今回見た中で一番不条理なお芝居だったと思います。

後輩が札束の入った封筒を地面に投げ捨て、それを欲しさに先輩が人間をやめて犬になっていくだけの話で、それ以外に救いもないし説明もない。舌足らずなしゃべり方で、先輩からの命令もしれっとつっぱねる白痴的なかわいさをもったキャラを演じる入江さんにとても見入ってしまう。入江さんはこういう役がとってもハマる。かわいい、かわいくて面白い。だけど、これ観た後味って絶対良くないよね?

この、かわいいかったり、面白かったりするけど後味が悪い、というのが「天使のお仕事」で演じられたどのコントにも通底するものだったと思います。

最高に後味が悪かったのが最後の「誕生日のお仕事」。誕生日なのに彼女と連絡がとれない玲於奈さんに、誕生日を祝ってあげる友人の谷口さん、そして何度も別のお客さんの誕生日を祝うために登場する、飲食店店員の西山さん。「ちゃーんちゃ、ちゃーん、ちゃーん、ちゃーん、ちゃ~ん」という西山さんの脳天気なハッピーバースデーの歌声がコントの中でいいリズムになっていました。そのリズムにのせられて見ていると、ラストで本当にぞっとする展開へ突き落とされるっていう…。

連絡がとれなかった彼女は遺骨となっていた…というオチなのですが、バースデーケーキの代わりに脳天気な店員西山さんが遺骨を持ってきて、谷口さんがそれを、玲於奈さんに向かって「遺骨、食えよ!」って言う最後のシーン。遺骨を食べる風習というのは確かに存在するようで、バースデーケーキを遺骨に変えるという展開を思いついた入江さん、変態かもしれません。これ本当に怖かった…。西山さんの脳天気でかわいい店員さんの演技が、よりこの不気味さを際立たせていたと思います。

 

大井町クリームソーダって何だったんだろう

旗揚げ理由の「面白いものを追求する」という理念って、なんだか学生のオールラウンドサークルみたいで、「ふわふわしてんな…」と実は思ってたのですが、大井町クリームソーダが今回の公演で見せてくれた笑いは、すごく毒々しくてグロテスクで、悪意あるものばかり。しゅわしゅわ~とかってかわいいツイートで目眩ましをしつつ、とても禍々しいものを見せてくるのが大井町クリームソーダがやろうとしてる「面白いこと」なのかもしれません。そう考えるとすごく攻めたユニット活動です。

私は一時期小劇場でお芝居を見ることにハマってたことがあり、さまざまな劇団の公演を見に行ってたことがあるのですが、今回の大井町クリームソーダの公演を見ていて、思い出したことがあります。それは、小劇団にはひとり、よくわからないけど存在感に目が奪われる看板役者さんみたいな人がいて、演技の巧拙は置いておいて、その役者さんのキャラクターがお芝居を左右するタイプのものがあるということです。

そして、今回の大井町クリームソーダの公演ではまさに、役者さんのキャラクターが演じる役と組み合わさることで、お芝居を左右しているなと感じました。それは、入江さんのかわいくてグロテスクなクズな後輩役だったり、西山さんの脳天気な飲食店店員だったり。鈴木さんと西山さんの女装も、あの二人の女装でなければ成り立たなかっただろうなと思います。

ところが、冒頭に書いた通り声優という仕事においては、恐らく本人のキャラクターをいかに感じさせずにさまざまな人生を演じきるか、という能力が問われる場面のほうが多いのでは?と思うのです。つまり、このユニット活動では声優として求められることの真逆をやっているように思えます。まあ、声だけで表現し/録音し直すこともできる声優の演技と、身体まで使って表現し/お客さんの目の前で芝居を作り上げる舞台の演技って、それだけで方向がだいぶ違うのですが。ユニット活動を始めるにあたり、「主体的に面白いことを発信していく」という思いがあったみたいですが(と、ラジオで言ってた気がする)なるほどたしかに、これはチャレンジングな活動だなと思います。

とにかく客演の3人含め、独特の存在感で芝居を引っ張っていくという意味では、個性の強い大井町クリームソーダの面々のつくりあげるお芝居はとても面白いものでした。声優としての仕事に取り組むかたわらで、こうして声優とは離れた挑戦をすることで、若手と呼ばれる3人に、どんな未来が拓けるのか。その先に期待しつつ、次回公演を楽しみに待ちたいと思います。

西山宏太朗楽曲大賞

西山宏太朗さんお誕生日おめでとうございます。

アニメマシテで初めて見た時にはまったくハマる予定はなかった西山宏太朗くんに今現在、どっぷりとハマってしまい、毎日が楽しいです。いや、楽しいのかな?苦しいのかな?よくわかりません。しかし、誕生日というのに特にお誕生日会とかやる予定がない!どうしよう!と思って取り急ぎ、ブログにしたためたいと思います。

西山宏太朗楽曲大賞。

西山さんが歌った曲で、CD音源化されたものの中から好きな順にランク付けしました。もうすぐ流星隊のCDも出ることだし、これからもたくさんの西山さんの歌う曲が聴けることを願って。

 

【12位】

Why so cool?/鬼怒川熱史(CV西山宏太朗)/美男高校地球防衛部LOVE!

西山さん初めてのソロキャラソン。ですが、西山さんの細い声とロックは正直相性がうーん……という残念な気持ちがいまだ残る一曲。でも一方で、鬼怒川熱史くんのキャラソンがロックだったという事実は、熱史くんの意外性が見えて良かったと思います。

 

【11位】

漢気フルコンボ/魔の十四楽団(ディーふらぐ

正直に言うとこのブログ書くために初めて聴きました、すみません。もっと正直に言うと西山さんがどこにいるのか確認できなかった……。けど、西山さんてこういう、どちらかといえば泥臭い曲が多いんだなあと思いました。

 

【10位】

C.A.L.L.I.N.G/soffive

西山宏太朗は戦隊ソングに豊富に恵まれた声優だということがよくわかる、「スクランブル!!アニ◯戦隊」につづき2曲目の戦隊モノ曲。soffive自体は別に戦隊ではないけど…。

Aメロ、Bメロと来て、サビ!と思ったらCメロで更にまたテンションが変わる構成のお陰でサビの待ってました感が高まります。戦隊ソングとしてはシリアス寄りでサビの昭和感あるビートロック、好きです。あと「泣き声が、俺を呼ぶ!」かっこいいよねこーたろーくん!

 

【9位】

凪いだ風の交差点/湯布院煙(CV梅原裕一郎)・鬼怒川熱史(CV西山宏太朗

何かと話題を集めがちな「うめこた」コンビの起点となった、煙ちゃんと熱史としてのデュエットソング。熱史ってそんなに声甘かったっけ?って思うほど西山さんのボーカルが甘すぎるのですが、それが梅ちゃんの硬質な声と混ざってて、いい調和がとれてるのではと思います。

いやほんと、声に限らず何もかも合わない(本人たち談)梅ちゃんとたろりちゃん、いいコンビだと思うんですよその不調和なところが。

西山さんの声質にはこっちの曲調のほうがとても合う。(ので、なんでWhy so cool?はできてしまったのか…)個人的にはこういうミディアムテンポな曲あまり好きではないんですが、イントロの二人の歌が終わってから入るホーンと、間奏に入るかわいい主旋律の音があることでかわいい感じにまとまってて、好きです。

 

【8位】

スクランブル!! アニ◯戦隊/ファンシーカレー(アニ◯ズ)

さつきがてんこもり!たろりがてんこもり!(言いたいだけ)

鈴木裕斗さんと西山さんの声って双子のようにきれいにハマるのですが、この二人の女子っぽい高めの声に、いかにもアニソンな感じの、情報量の多いガチャガチャした戦隊ソングってところがミスマッチ。まったく勇ましくなってない。でも戦隊ものにしては、低い音、太い音があまり使われておらず、かるーいアレンジなので、二人のかわいい声に合う。そこがいいなと思います。西山戦隊ソングシリーズの中では一番好きかも。

アニ◯ズほんとまた活動して欲しいよ…。

 

【7位】

絶対無敵☆Fallin' love(美男高校地球防衛部LOVE!

これも西山宏太朗戦隊ソングシリーズのひとつかもしれません。防衛部ってアニメ自体がさまざまなネタの引用のパッチワークでできていたと思いますが、このOP曲も、いろんなもののパッチワークになっててまさにあのアニメのOPにふさわしい曲だなと思います。イントロに戦隊ヒーローを思わせる音が入りつつ、間奏はハンドクラップ入ってなんかおしゃれだし、サビはベッタベタにポップスだし。サビを口ずさむだけで問答無用に元気になれる曲。

 

【6位】

Stride!(アニ◯ズ)

西山宏太朗さん初めてのCD。A! N! I! M! A! Let's go!の掛け声が楽しい、男性アイドルっぽさ溢れるまっすぐな曲だと思います。信長さんの中2っぽい歌唱と西山さんの甘すぎる歌声が一枚の曲におさまってるのがすごいな…と今にして思うけど4人4様の歌声のバラケ方がまた「これぞユニット」って感じで良いです。

 

【5位】

LOVE FRIENDS(美男高校地球防衛部LOVE)

なんかもうこの曲は防衛部2期発表でかかった最高にエモい曲っていう以外にあまり言いたいことはないかもしれない。結構サビがおしゃれっぽい気がします。

 

【4位】

Just going now!!(美男高校地球防衛部LOVE)

好き!!!

この曲がなんといっても最高なのは、最初にイントロなしですっと吸い込む呼吸音から始まり楽器とボーカルが最初にドンと始まるところでしょうか。かっこよい。潔い。終わり方もアウトロなし。やわやわなアニソンロックですが、そういう細かいところにebaさんのロックを感じます。そして問答無用にサビが大好きです。

最初に聞いてた時は「まだ今も覚めない青い春をただ追いかけたいから」ってエモすぎる歌詞がなんで防衛部の曲になってるんだろうって思ってたんですけど、イベントで見るたびにエモい歌詞が新人声優の出世作としての防衛部に重なってきて、なるほどな~覚めない青い春だよな~と納得してしまう曲です。

って散々ブログに書いてしまうくらいには好きです。

美男高校地球防衛部が箱推しせざるをえなかったLOVE!LIVE!感想 - パノラマロジック

泣かされるつもりはなかった、声優リアリティーショーとしての美男高校地球防衛部LOVE! - パノラマロジック

 

 

【3位】

君の帰る場所(soffive)

soffiveは3曲しかないけどC.A.L.L.I.N.GもVoice of loveもこの曲も三曲三様にいい曲で、1枚の満足度が高いなあと思います。陰りのあるメロディですがサビにつれて温かみが増してくる90年代ブラックミュージック寄りのポップス。(もっとこういうの増えて欲しいですね)この曲はそれぞれのソロパートもきちんとあって聴き応えがありました。

ちなみに1番のサビで「味方でいること誓うよ」って歌ってるのは西山さんでしょうか…へ?こんな声でるの?ってびっくりしました。

 

【2位】

Voice of love(soffive)

ボイストーム7のEDでした。OPだった、C.A.L.L.I.N.Gとは打って変わったうっすらファンク風味の王道アイドルポップス。大好きだよ!!!西山さんにはこういう曲をたくさん歌っていって欲しい。C.A.L.L.I.N.Gのほうは音が詰め込まれてたのでボーカルがほぼ一色に束ねられていた印象がありますが、こちらはより5人の声をバラけさせていると思います。幸せな感じしかない。アイドルだ。

 

【1位】

Let's go!! LOVE Summer♪(美男高校地球防衛部LOVE)

さらっと聞くとまあよくあるようなかわいいサマーソングなのかもしれませんが、これも絶対無敵Failln' loveと同様にさまざまな曲のパッチワーク的な面白さがあって味わい深い曲だと思います。オールドスクールなロックで始まったかと思ったら要所要所ですっごい昭和っぽいリズムになり、たまーに顔を出すスカ。全体がしっちゃかめっちゃかなのにサビがきれいなのは奥のほうで鳴ってるピアノのせい。更にそこに乗るボーカルも、地球防衛部のわちゃわちゃグループ感が前面に出た物語っぽいつくりになってて、最高です。

2番のゆもと「助けてー!」しか言ってないんだよ主役なのに。そういうのが防衛部っぽいなと思います。

いやほんとこの曲聞くとこの夏のあれやこれやが思い出されて必要以上にエモい気持ちになります。大好きです。

 

こうして今までの曲をすべて聴いてみると、「西山宏太朗、戦隊ソング歌いすぎ問題」が浮上しますね。流星隊楽しみだなあ…。

西山さんは歌い方も声も女性的でかわいいので、Voice of loveみたいなかわいい王道アイドルポップスをこれからどんどん歌って欲しい。絶対かわいい。

ひとりラジオの「たろゆめ」で本人がかけていた「好きな曲」が「DA.YO.NE」とかゆうこりん小西康陽曲「オンナのコ オトコのコ」だったあたりにも、完全に楽曲派声優としての信頼しかありません、早く音楽活動待ってる!

最後に個人的に西山さんとカラオケにもし行けたら絶対リクエストしたい曲を貼って締めたいと思います。西山さんの24歳の1年が輝くことを願って。

 


未確認飛行体 - YouTube


藤井隆 OH MY JULIET!- 振り付け映像 - - YouTube

 

泣かされるつもりはなかった、声優リアリティーショーとしての美男高校地球防衛部LOVE!

美男高校地球防衛部LOVE!祭」に行ってきました。

まさか、防衛部の2期発表のお知らせで泣いてしまうとは思ってもみませんでした。

 

私だけじゃないと思うんですけど、防衛部のこと「クソアニメ」だと思って見始めた人たぶんいると思うんですよ。男子高生たちがいきなり愛と正義のヒーロー「バトル・ラヴァーズ」になって怪人達をやっつける、熱い展開が皆無のゆるゆるぐだぐだギャグアニメ。美少年キャラ達のとってつけたような裸とかBL展開が溢れるアニメですよ。この説明書いててもクソアニメの香りしかしないでしょ。

 

でも、ハマってしまったんですよね…。さまざまなお約束が踏襲された、書き割りでできたようなぺらっぺらな世界の中で、ふとした瞬間にすごく腹オチする台詞があったり、キャラクターの複雑な魅力が見えたりするのが、防衛部が私の中で「クソアニメ」にならなかったゆえんなのかなと思っています。

例えば下呂阿古哉くんが、最終回で自分達を騙していた敵に対峙した時、先輩が手を出すよりも真っ先に敵を殴るシーン。絶対自分の手を汚しそうにないし年功序列なんて言葉と無縁の世界に生きてるような阿古哉くんが、殴った後で「こういうのは、一番若手の仕事でしょ?」ってさも当然のように言うわけです。こういう、たまにしびれるほどぐっとくる台詞とか展開とかあるから、「いやいやこんなのクソアニメでしょ」って舐めてかかってたらあっというまに真剣に好きになっていたのです。

 

で、まんまとその中の人達にもハマってしまったんですよね…。

防衛部と言えば、放映前からキャスト5人のニコ生「バトル・ナマァーズ」を始め、DVDなどのリリースのたびにトークイベントやお渡し会が行われ、DVDの特典映像にキャスト5人の旅行映像を収録したりと、やりすぎなくらい徹底された声優売りで、これも最初はあざとすぎて「よくやるな~」と遠巻きに見ていました。

最初は遠巻きに見ていた私がこんなに防衛部キャストにハマってしまったのは、ただただすべてが「予想外すぎる」の一言に尽きます。こちらの予想をはるかに超える形で、さまざまなところで声優さんの生身の人間としての魅力が映しだされていたことにあります。声優のリアリティーショーとしての側面が、防衛部にはあったのです。

 

最初に衝撃的だったのはDVD1巻の箱根旅行の映像でした。

本当によくある、つまらなさと面白さの微妙な境目を行ったり来たりする声優のぐだぐだロケ映像ではあったけれども、最後に仕掛けられたドッキリが、その絶妙な裏側を見せてくれたと思います。キャストの中で年長者なのに体を張って笑いをとる担当の白井さんと、キャストの中でも「細かいことに対して正論で突っ込む」ことでおなじみのきっちりした増田さんが口論をしだす、というドッキリで、「昼間のロケでの白井さんのギャグはどうあれば良かったのか」というなんとも切実で微妙な話題から出発。リアルすぎるでしょ!沸点の低い笑いのオンパレードなロケに対して厳しく斬り込むドッキリネタで、正直これ大丈夫なの?と思いました。

この時のドッキリは、ロケがすべて終わった後に行われたのですが、罰ゲームで豪華なホテルの夕食にありつけなかった梅原さんが、ロケ終了と同時にみんなと同じ豪華な夕食を食べていて、そんなところからも、「よくある声優のロケ映像」という箱庭を外から眺めている気持ちになりました。

ここでドッキリを仕掛けられたのは、5人の中で年下組にあたる梅原さんと西山さんで、梅原さんはドッキリをあっさり見抜いてマイペースに徹し、西山さんはドッキリをマトモに受けて泣いていました。この対称的なリアクションも、あらかじめストーリーだてられてるかのように美しかったですが、こうしたドッキリから二人の若手声優としての立ち位置や気持ちが見えたと私は思いました。

増田さんと白井さんがケンカし始めたときに感じたことを梅原さんは「もうこの先、仕事として割りきろうと思った」と言い、西山さんは「せっかくみんなでこの先いろいろやっていくのに、なくなっちゃうのかなって」と言いながら涙ぐんでいたのです。どちらの言葉も、程度の差こそあれど、まだ経験の少ない主演キャラを勝ち取ったこの座組に対しての思いを感じ取ることができました。

 

(私はDVDで箱根映像を見てからニコ生を見始めたので、時系列がおかしくなってるんですけど…)次に衝撃だったのは、「バトナマ」初めての公録で、最終回でもないのに和臣さんが泣いてしまったこと。最終回じゃないのに、「終わっちゃうんだと思うと…」と言って涙を流す声優さんなんて初めて見ました。ギャグアニメだし、「バトナマ」もぐだぐだなよくある声優バラエティだし、なにひとつ真面目な顔を見せる要素も、特に振りかかる試練もなかったわけですが、この涙から、視聴者が思うよりもずっとキャスト自身の中で防衛部が特別な存在になってるんだなってことを実感しました。

同じことを感じたのはキャスト5人のライブイベント、「LOVE!ライブ!」で、この時に感じたことはこのブログで書いたので割愛しますけど、ほんと、こんなに声優の人達がエモくなってるアニメのイベントに行ったことがなかったので衝撃でした。

minaminanarial.hatenablog.com

 

そして、先日8/9の「美男高校地球防衛部LOVE!祭」では、サプライズで2期の制作決定が発表されました。

その瞬間、西山さんは興奮しすぎて頭がパーンとなったのか奇声を上げて変な動きのバンザイを繰り返し、白井さんも舞台を跳ね回っていたと思います。なんていうか通りいっぺんの喜びの表現じゃなかったんですよ。喜びすぎて表現しきれなくて振り切れちゃった人の姿を見ました。

私はこの時2階席の後ろのほうで見ていたのですが、喜ばしい2期決定のニュースなのに、周囲から「グス…っ、グス…」という涙をすする音や嗚咽が。今までさまざまなアニメイベントで続編決定のニュースを聞いてきましたが、こんなに会場中が湿っぽくなったのは初めてです。

まあ、なんとなくやるとは思ってた2期決定。イベント終わった後に友達から「そりゃ声グラの表紙決まってたからやると思ってたしサプライズなんて茶番だよ」って言われましたけど、それでも、私も例に漏れず泣いてしまいました。

同じようなことをステージ上にいる福山さんも言ってました。「西山くんと別の現場で会った時に、今後の防衛部の仕事の話聞いてたら、多分2期やるんじゃないかと思ったんだよね。でも気づいてなかったみたいだから黙っておいた。ずっとそのままでいなよ…」と。

後から考えたらこの話ってちょっと衝撃で、ファンですら見抜いていた2期発表を、キャスト自身は見抜けずに、「最終回終わっても、こんなにたくさん仕事があってファンの方に愛してもらえる防衛部っていいですよね」なんて西山くんが福山さんに言ってたという事実は、ちょっとすごいなと思います。

最後の挨拶では、まさか白井さんまでもが挨拶しながら泣いてしまうような状態で、「名前のつくキャラクターは防衛部が初めてで」と言いながら作品が愛されていることの喜びを語っていました。その挨拶を聞きながら胸がきゅっと締め付けられるような気持ちになりました。

防衛部のキャストを追い始めてから、彼らの他の仕事を注目して見るようになりましたが、白井さんは本当に防衛部に出てからやっとさまざまな作品で名前を見るようになった人だし、西山さんも同じくですが、彼なんてまだ名前のつかないモブキャラを担当するような若手なんですよね。

中堅ですら、明日仕事がなくなったらどうしようと悩むと言われる声優ですから、初めての主演アニメの2期が決まるということの重みはものすごいものなんだよなあとこの時の二人の涙を見ていて思いました。

梅原さんは「こう見えても驚いてるんですよ」って言ってたの面白くてかわいかったし、さまざまな仕事がある増田さんでさえ「ずっと防衛部やってたい」と言ってたことが叶った瞬間として嬉しそうでしたし、和臣さんに至ってはまず最初に涙顔になって周りの4人に囲まれるように心配される姿がもうデフォルトになっていて、その姿が愛しかったです。

 

最終回が来るのが寂しくて泣いちゃったとか。2期があることに気づかないまま、発表されて泣いちゃったとか。そういう、こちらが感じ取るより生々しく声優さんの悲喜こもごもを見せてくれたのが防衛部の一連の声優露出だったんだなと思うのです。

人の生々しい悲喜こもごもを見せてくれるこの手法って、なんだかリアリティーショーみたいだなと思います。一見ゆるふわなバラエティ的な要素しかなかったのに、その隙間から生々しい声優さんの姿が垣間見える感じって、ギャグアニメの防衛部がふとしたところでぐっとくる複雑な魅力を見せてくることと、どこか似ています。ていうか、表向きがすぐ「どうせクソアニメだろ」とか「どうせつまんない声優のぐだぐだバラエティだろ」と言ってしまいたくなるようなものだからこそ、真剣なところやシリアスなところが際立つんですよね。

アニメを見ていると、しばしばイベントなどで「声優目的のファンはお断り」という意見に出会います。それは、恐らくは「物語」が絶対であるからです。声優さんはアニメなどの「物語」に従事する人にほかなりません。ただ、防衛部を見ていて思うのは、声優にも人間としてひとりひとりに「物語」があり、声優目的のファンというのもまた、その「物語」に魅力を感じている人なのだろうと思います。

防衛部は、そのアニメの物語と声優の物語がうまく呼応していたアニメだったのではないかと思いました。5人の声優が単なるユニットとしてデビューしていたのであれば、ここまでリアリティーショーの要素はなかっただろうし、生々しい姿を見せつけることもなかったでしょう。声優は役者として物語を支え、物語は声優5人を支えていたのです。

そしてこの2期発表の後に流されるのが「Just going now」ってのが、またずるい。

この曲、ほんとにこんなギャグアニメの挿入歌としてエモすぎるし青春じゃん、おかしいな〜と常々思っていたのですがまるでこの2期発表直後に歌われることを予見して作られたようにぴったりでした。

「まだ今も覚めない青い春を駆け抜けている」瞬間に、立ち会ってるようなきがしました。

 

ということで、2期がとっても楽しみです。でも、相変わらずくっだらないぐだぐだでゆるふわな防衛部とキャスト5人を期待しています。

多くの物語を引き連れてOLDCODEXが行くーTour ONE PLEDGES感想

OLDCODEXのライブは、闘争だ。ステージという、彼らをバンドたらしめる小さな居場所を守るための闘争。どうあがいても、声優の、二足目のわらじとしてバンド活動という見方がつきまとう。楽器を演奏する人もいない。バンドのバンドたる証明がどこかで決定的に欠けていると見られがちだ。そうやって遠慮無く向けられる視線に対して、狂気じみた実直さをもって全身全霊でパフォーマンスし、精一杯にそのステージを踏みしめて立ってるのがOLDCODEXだ。

いつ失ってもおかしくない危うい場所で、積載量ギリギリの熱量を保ったままで走り抜ける、どこか刹那的なところがあるからこそ私はOLDCODEXに惹かれていた。

(と、ツアー初日の感想ブログに書いた)

OLDCODEX Tour 2015 ONE PLEDGES初日の感想 - パノラマロジック

今回のツアーで、OLDCODEXは自身で初めて20本の大台に乗ったツアーを経験した。兼業ではない一般的なバンドと遜色のない期間、密度でライブの本数を重ねた。私はこのツアーの終盤、松山公演とお台場2公演を見たが、どの回でもTa_2さんはそのOLDCODEXとして初のライブ本数の多さに触れており、その口ぶりから誇らしさや自信がみなぎっていた。そして、未踏の本数を重ねても、OLDCODEXのパフォーマンスは衰えることなく、むしろより鋭さを増していた。

声優が声優業と並行してステージに立って歌ったり、時にはダンスしたりという光景は当たり前のものになっている。しかし、そうしたパフォーマンスを一定のレベルまで高めることと声優業とを並行して続けるには、目が眩むほどうず高く努力を積み重ねていかなければならない。OLDCODEXのライブは、そんな視点から見た時「声優がやってるバンド」としては高いレベルで楽曲やライブパフォーマンスを成立させていると思う。

しかし、そのような見方を果たして彼らが望んでいるのだろうか?とも同時に思う。兼業の身としての評価に甘んじていたとすれば、こんな密度の20公演のツアーなんてそもそも組んでなかっただろう。あくまでもバンドとしては、掃いて捨てるほどの専業ロックバンドがひしめく「音楽シーン」と呼ばれる大海に乗り出しても、遜色ない存在でありたいのだろうと察する。

それは、去年のツアー最終日のMCTa_2さんが言った「日本一中途半端なボーカリストになろうと思った」という言葉にも現れていたと、私は思う。兼業を兼業として割り切るのであれば、自身を表して「中途半端」なんて言葉は飛び出して来ないんじゃないだろうか。声優としてもバンドのボーカリストとしても途切れなく活動できることは素晴らしいことなんじゃないのか。多分、それは彼なりの逆ギレめいた姿勢も含んだ力強い言葉だった。

「中途半端」だから、彼らは必死にしがみつくのだ。バンドをバンドたらしめてくれるそのステージに。

 

そんなことを考えながら私は各地でONE PLEDGESの公演を見ていた。豊洲、札幌、松山、お台場、4箇所5公演を見たのだが、昨年のツアーが毎回初日のような初々しさがあったことと比較すると、今年は密度の濃いツアーだったせいか、ラスト3公演はバンドとして熟れてきた印象を受けた。いよいよ兼業だとか何だとかそういう印象を感じさせないバンドへ近づいている、と感じた。

 

そしてツアーファイナルがやってきた。

私は、この「近付いている」という感覚がやっぱりどこかでOLDCODEXというバンドのあり方に疑問を持っていたことの現れなんだと気付かされた。やっぱり、広い世界の中でOLDCODEXはどこかが欠けた存在だと、どこかで思っていたのだ。でも、そうじゃなかった。

お台場の2公演で改めて発見したのは、Ta_2さんのボーカリストとしての表現力の深さだ。ラウドな曲で咆えるようにシャウトしたかと思えば突然、背筋がぞくりとするほどのウィスパーボイスを挟む。Physicalで爆発的にがなりたてていた同じ声が、seequretでは掠れた声で静謐さを歌いあげる。その振れ幅には恐れ入るものがある。

本人も折に触れて「片方の活動で経験したことを片方に活かせる」と言っていたが、そのひとつがこの表現力にあるのではないだろうか。彼は紛れもなく、声優として経験を積んできたボーカリストなのだということに気付かされる。

そして、Lantanaがお台場の2公演で初めて披露された。この曲について、Ta_2さんが語るエピソードがとても印象的だった。最終回を迎えた「黒子のバスケ」の、最後のEDテーマとしてリリースされたこの曲は、黒バスの作者の藤巻先生にも気に入っていただいたようで、この曲がラストのEDテーマとなって良かったと先生本人からTa_2さんに聞かされたようだ。そのことを、大事な宝物を見せるようにうれしさを噛み締めて話すTa_2さんがいた。

このお台場の一日目に話されたエピソードにもこみあげてくるものがあったが、2日目のエピソードはそれを超えていた。

Lantanaを歌う時に、Ta_2さんは脱退してしまったメンバーのRONさんの歌い方を思い出して歌っていたと言う。脱退しても、RONさんがいた時代の音はまだ染み付いていて、そうした過去も今もすべて引き連れて進んでいくのがOLDCODEXなんだ、という趣旨の発言だったと記憶している。

私はRONさんがいた時代のOLDCODEXとはリアルタイムで立ちあっていない。しかし、その楽曲の数々をもうOLDCODEXの新曲として聴くことは出来ないということに、取り戻せない時間を思って胸が苦しくなるほどには彼の楽曲が好きだった。彼が脱退するときに、特にバンドから詳細な説明もなく、きちんとしたラストライブもなかったと聞いていたが、 まさかここに来てTa_2さんの口からR・O・Nさんの話が出ることにただただ呆然としていた。

今まで口にしなかったのは、なかったことにしたかったからじゃないのだ。こんなに時間がかかるくらい、失ったものが大きかったのかもしれない。でも、失われた時間も、何もかも引き連れてバンドは進んでいく。それは黒子のバスケという大きな作品がさまざまな熱狂を飲み込んで終わっていくその姿とオーバーラップした。

たかがアニメタイアップかもしれない。けれど、OLDCODEXにとって黒子のバスケは、鈴木達央が演じたキャラクターが生きていたアニメであり、作品を提供してきたアニメでもある。曲自体が持つ物語が、関わったアニメの物語とオーバーラップして胸に迫ってくる。こんなに稀有な体験は、OLDCODEXでこそ味わえるものだと思った。

だから、その時に私はOLDCODEXがバンドでありつづけることの意味をやっと理解したように思う。それだけの物語を背負えるのは、フロントマンが声優として物語をつくることに携わっていなければできないことだと思うのだ。「中途半端」だとTa_2さんは言ったが、それでいい。むしろそれは誇るべき「中途半端」だったのだ。本人がそれを意図しているかどうかは置いておいて。

この日のライブでは、2回目の武道館公演が発表された。初めての武道館に立った日、「武道館、こんなもんかって思った」とこともなげに言ってたTa_2さんがいたが、あれは意識しすぎたために意識してないような発言が飛び出していたのではないかと邪推する。私はあの武道館公演を見て、やっぱり消化不良を感じていた。だからYORKE.さんが「あのときCaptureしきれてなかったかもしれないから、今度はきっちりCaptureしてみせる」という内容の発言をした時には笑ってしまった。そんなこと言われたら楽しみにするしかないから。

 

そうやって過去を引き連れて前進していくバンドの姿を今後も出来る限りは追いかけていきたい。なので武道館、大いに期待して待ってます。

梅原裕一郎さんのことをイケメンて言うのをやめようと思ったミリオンドール第0回ファンミ

ミリオンドール第0回ファンミーティングに、昼夜とも参加しました。

 

ミリオンドールといえば、女性アイドルの、しかもかなり規模感が小さい限定された世界のオタクの姿をリアルに描いた異色の漫画。周囲に女性アイドルのオタクが多いので、以前から話題だったこともありアニメ化の前から原作は読んでました。

私はこの作品のリュウサンというアイドルオタク役を梅原さんがやることに、お腹が痛くなるような不安と、残酷ショーを望むドス黒い楽しみがないまぜになって複雑な気持ちでした。

「汚いMIX」「強いオタク」「ガチ恋」とか、アイドルオタクの薄汚い自意識が垣間見えるジャーゴンまみれのキャラクターを、アイドルオタクの世界から遠すぎる梅原さんが演じることの、ミスマッチ。あれほどズバ抜けた顔面を持って生まれ、趣味はクラシック鑑賞で、スタッフが仕掛けたドッキリもすぐ見抜く頭の回転の良さがあり、他人に興味がない(本人談)梅原さんて、アイドルオタクのような人種とはかけ離れている気がするのです。誰かに強い興味を持って、無駄に思われることに最上級の価値を見出して自転車に乗った人間をリフトしたり、「おいしい」とか「強い」とかそういう実体を伴わない評価の世界の中心にいるような、いわば「しょーもない」人をやるのか、と……。

 

何が一番嫌かって、梅原さんが「汚いMIX」を作中で打つことでした。

vine.co

(参考に使ってすみません)

だって汚いから……と言うのは冗談としても、あまりに今まで演じてきたキャラクターにはなかった演技をするということで、その演技に梅原さんの声優としてのほつれを感じてしまうのではないかという不安のほうが少し大きかったのです。

 

ということで、戦々恐々としながら科学技術館に向かいました。お客さんは男性ばかりで、急な発表だったとは言え、もう少しいるのかな?と思っていただけに、梅原さんの人気の実態がよくわからなくなった瞬間でした。

前置きが長くなりましたが、イベント本編の感想を。ミリオンドールのファンミで見た梅原さんは、いい意味で隙がなかったです。

例えば、昼の部の「キャストのみなさんが好きなアイドルは?」という質問に、女性声優のみなさんが口々に自分の他の出演作品でのアイドルを匂わせる発言をしていった時のこと。梅原さんに話が振られた時、客席から「315ー!?」と声があがり、まさにその方向の発言をするのかなと思いきや「僕が好きなアイドルはマリコです」と回答。作品から脱線していく空気を修正し、なおかつその場の多くの男性オタクが心置きなく歓声を上げられる選択をとったことがかっこ良かった。

さらに、大喜利マリコ役の伊藤未来さんと決選投票になった梅原さん。拍手の大きさで勝敗が決まるのですが、梅原さんのほうが少しだけ大きく、優勝は梅原さんか……と思われた時に梅原さんが「俺はマリコのオタクなので、それはマリコに」と。優勝を伊藤さんに譲ってあげていたのでした。

そうやってあまりに隙のないイケメンぶりをイベント中に披露していただけに隣の渡部優衣さんに何度か「おいイケメン!」「イケメンずりーぞ!」ってイケメンいじりされてました。まさか女性からイケメンいじりされるとはすごいな。

男性声優が多く集まる現場での梅原さんは、空気をあえて壊したりずらしたりする印象があったので、これほどまで頼れる男ぶりを発揮する梅原さんが逆に新鮮でした。

そして、びっくりしたのが夜の部で言っていた、アフレコにオタクによるMIXの監修が入っていた話。

梅原さん曰く「アフレコの時に、後ろでここにいるみなさんのようなプロのオタクの方が僕の演技を見て指導してくれました。そのジャージャーは違いますね、とか」(発言はニュアンス)と。

もう、これ聞いた瞬間に爆笑してしまいました。MIXを監修するんだって。イケメン声優にMIXを監修するオタクの存在を想像したら笑えて仕方なかった。梅原さんは家でもMIXの練習をしていたそうです。イケメン声優がMIXの練習を……家で……!!!!

って考えてたんですけど、後から冷静になって考えれば考えるほど当たり前のことで、笑えなくなってきました。だって知らないことを仕事としてやるんだから家でさんざん練習するのは当たり前だろうし。むしろ、監修をきちんとつけるアニメ制作側のプロ意識を感じてすごいなと思うようになりました。

思えば、既定路線のイケメンキャラじゃない役を演じるのは役者としても挑戦で、練習の中で梅原さんは真摯にリュウサンと向き合ってるのだろうと思います。ならばその梅原さんがつくりだす「汚いMIX」に私も真摯に向き合わなくてはならないな、と思いました。

振り返れば、梅原さんの顔面がキャッチーすぎるため、梅原さんが何をやるにつけてもどこかで「あの顔面なのに」「あの顔面だから」と考えていたように思います。だけど、そうやって考えてたら、「汚いMIX」を仕事として真面目にやってるっていう、そんな当たり前のことすら見えなくなってたわけです。

だから、なんかもう梅原さんのこと安易にイケメンとして認識するのやめよう……、と思ったのです。別に蔑みを持ってそう呼んでたわけではなく、ただただキャッチーで便利な呼び方だから使ってただけだし、むしろ好意的にそう呼んでたくらいでした。

しかし、時として顔面でいじられてしまう梅原さんにとっては「イケメン」という言葉はネガティブな意味になる時もあるのだろうなと。自覚してはいたけど、この日ほど、梅原さんの顔に自分の認識が撹乱されてるなあと思ったことはありませんでした。

しかしながら、彼からイケメンというキャッチーなラベルをとって見ていくこともそれなりに大変そうで、男性声優という顔が重要視されない(はずの)世界に突然変異的な見目の麗しさをもって出てきた彼を取り巻く言説にはさまざまな語るべき余地がありそうで、表層こそが彼にとっては類まれな武器なのは確かだし空虚な表層にこそ本質が宿るというスーパーフラット的な解釈からすれば彼こそが演技という本質が求められがちな世界に生まれ落ちたニューエイジかもしれない。ってスーパーフラットのことはよく知らないので適当なこと書いた。

とにかく、外見が先行しがちな梅原さんですが、その仕事に対する姿勢や真摯さはそれに撹乱されずに見られるべき人なんだよなあと実感したのでした。この日の梅原さん、本当にかっこよかったです。

 

なお、「薄汚い自意識」とか散々書いてしまいましたが、女性アイドルの現場のオタクの空気感は好きなほうですし、ミリオンドールという作品はとっても大好きなのでアニメ化楽しみです。

梅原さんがリュウサンをやるにあたり、ぜひアニメで実現して欲しいのは、リュウサンが「俺もうオタク辞めるわ…」と傷心旅行に出た第59話のシーン。

オタクたちと傷心ドライブ中に、BGMでT.M.Revolutionの「魔弾」がかかった瞬間、オタクスイッチが入ったリュウサンが魔弾でMIXを打ちだすのです。

www.youtube.com

「狭い世界で君しかいない 他の名前が出てこない」というサビの歌詞にあわせて、ガチ恋してるマリコの名前を呼ぶリュウサン。車中のおたく、いっせいに「さすがリュウサンっす」「こんなバカな芸思いつくのリュウサンだけっすよ」ってゲラゲラ笑います。

単純に考えたら本当にしょうもない場面。だけど、アイドルオタクには時にこういうしょうもない瞬間がめちゃくちゃ自分の気持ちをたかぶらせたりする大事な瞬間になることもあって、しょうもないなあ……と思いつつめっちゃ共感してしまう大好きなシーンです。

「狭い世界で君しかいない 他に名前が出てこない」って閉塞感とどうしようもなく冷静じゃない感じが本当にガチ恋ソングとして胸にしみます。

もしかすると多くの「ガチ恋」を集めているんじゃないかと思われる梅原さんがこの曲でMIXを打つ日が来たらと思うと楽しみでなりません。

美男高校地球防衛部が箱推しせざるをえなかったLOVE!LIVE!感想

美男高校地球防衛部LOVE!LIVE!」に行ってきました。どんな内容だったかのレポはたくさんあるので感想だけ書いてみます。

 

見慣れたZepp Tokyoのステージに階段が出現し、1階と2階に分割されたセットになっているのを見て、ああ、やっぱり今日はアイドルのステージを見に来たんだな…とまざまざと実感して眩しく思った。

数は少ないけれど、これまでにうたプリ、μ's、アイマスと中の人がアイドルになって歌って踊るステージをいくつか見てきた。そのどれもが、アイドルであるキャラクターを演じて中の人がアイドルをやる、という大義名分があるから納得感あるけど、防衛部は結局、地球防衛部の高校生の役だからアイドルじゃないわけです。だから、あまりにアイドル然としたステージに笑ってしまった。

 

今日という日を迎えるまで、主演声優5人のニコ生「バトルナマァーズ」を1週間毎日見てきたくらいに、この日のためにテンションを高めてきたので、それが何かの拍子に裏切られる瞬間が来たらどうしようかという不安もありました。

そんな期待と不安がないまぜになった中で、暗転して1曲目の「絶対無敵☆Fallin' love」がスタート。

まずぱっと見て白井さんの動きがひとり大きくて、気合入ってるのを見て笑った。想像以上にキレキレ。

本来は声優さんてダンスする仕事じゃないから、別に声優さんの動きのキレがよかったとか悪かったとかいうのは不毛だし、元アイドルオタクのエゴみたいなもんだから本来はすべきではないんだろうな…と思う。(だいたいダンスのなんたるかをよく知らないし)だけどついつい言及しちゃうのは、スキルとか置いておいて、やっぱりそういうところにその人のその人であることの魅力を見てしまうから。

失礼を承知の上で書きますが、「白井さんは振付師さんから気持ち悪いって言われてた」という話が思い出され、振付師さんの言葉は大げさじゃなかったんだな…って思いました。下手とかじゃないんだ。動けるんだけど、動きが面白い。特にソロ曲の間奏で、バレエダンサーのようにすっとなめらかな動きでおしとやかにステップを踏む様が、やっぱりどうしても面白い。でも、その「下手なわけじゃないのに動くだけでなんか面白い」ってところに、機動力抜群に体を張って笑いをとりにいく白井さんのすごいところが詰まってるんだと思うのです。

増田さんは、やっぱり元ミュキャスだからなのもあるのか、とにかく煽りとか曲への入り込み方、見せ方が慣れてて、蔵王立の濃度120%て感じだった。原曲よりキーを下げてたんだけど、これもきっちり歌うための配慮と考えれば仕方ない。煽り方とかが、コンスタントに歌手活動をしている声優さんのそれに近くて、増田さんは安定感があった。

この日のトークで増田さんは「防衛部のメンバーに、衣装のままでご飯食べない!って怒ったことがある」とか言ってたけど、そういうエピソードから増田さんの生真面目さが伺えて、それがステージにも出るのかなと思った。ニコ生でもそうだけど、誰かがトークに困ったり進行に困ったりすると助け舟を出すのも増田さんだし。本人はニコ生で否定してたけど真面目ですよね。たまにマジレスしてて面白いけど。

和臣さんは、もう完全に有基くんでかわいかった。そして安定感。すぐセンターとか言うの良くないけど、背負っている色は赤だし、立ち位置はセンターだし、役柄で言えば座長だし、とても頼もしい。なのに、人一倍エモいようで最後の「Just going now!!!」を歌い終わって最後に「今日は泣かななかった!って言ったそばから泣いちゃいそうになってきた」みたいなことをおどけて言うのが本当に愛らしかった。あとウォンさんのぬいぐるみを抱えて歌う姿がたいへんキュートだった。

梅原さんはとかく突出した顔面で話題が先行しがちだけど、よくよく見てると「ちょっと今振り付け入ってなかったな…?」ってとこあったり、ひとりだけ客席への煽りができなくて、メンバーに「みんなそういうの(煽り)やるならリハの時やってよー…俺もやればよかった」ってぼやいたりして、妙に隙があるところが垣間見えて面白かった。

でも、だからといって梅原さんは不器用なわけではないと思う。隙をわざわざ取り出してはみたものの、ダンスが下手だということではない。煽らなくても客席へ必殺の投げキスとかしてて、いや本当に「必ず殺す」と書いて”必殺”の投げキスだったもので、やっぱりすごいなと思った。場面場面で梅原さんは隙があったりなかったりするので、本当にとらえどころがないなと思う。

そして西山さん。

西山さんの動作は、基本的に少女漫画から抜け出てきた架空の17才の少女のようにきゃぴきゃぴぶりぶりしてるんだけど、ダンスもかわいらしさを出しつつ動きにキレがあってエレガント。贔屓目入ってるとは思いますけど、西山さんも大好きだという藤井隆感あった。

藤井隆さんのステージを短い時間とはいえこれまで2回見たことがあったんだけど、身体中にみなぎるステージ人間としての気迫を感じさせる人だったのを覚えている。圧倒されるくらいの。西山さんにもちょっとだけそれを感じた。

私の中で西山さんはハロプロに憧れて地下アイドル活動を始め、先ごろ有名事務所が手がける話題のアイドルグループにオーディンションで合格した17才の女の子という設定があり、そんな子が満員のZepp Tokyoの2階ステージのど真ん中で歌う姿は「よかったね…よかったね…!」という涙を禁じえないものだった。西山さん、どんどん売れていくね…!これから…!

 

妄言はさておいて、この日一番胸を打ったのは、防衛部の予想以上のエモさでした。

ラストのほうで「防衛部としての今後の抱負なんかを一言ずつ言いましょう」と、和臣さんが振った時、西山さんは「全国を周りたい」梅原さんは「みんなで旅行したい」、白井さんは「2期」という話をしていたんだけど、増田さんと和臣さんの話が結構びっくりした。

増田さん「仕事として言うもんじゃないけど、ダラダラこの防衛部を続けていきたいよね」

和臣さん「一生防衛部やってたい、また歌える機会があったらいいな」

普通に考えたら防衛部もたくさんある仕事の中のひとつ。顔出しの仕事が多くあって一緒にいる時間は長かったとしても、数ある作品の共演者でしかない5人なわけです。でも、こっちが思ってる以上に、彼ら自身から「5人でいることを続けたい」って言葉が出てきたら、いくらなんでも、感動しちゃうじゃん!!!彼らはこの作品にずっと留まっていることはないんだろうけど、だからこそ「ダラダラ続けたい」という言葉が重い。

リップサービスだったりもするだろうし、5人全員がそんなことを考えてなかったとしても、やっぱりエモいなあと思ったのはアンコールの後のJust going now!!終わった後に誰も締めの挨拶に入らないでちょっと沈黙していたところ。本来は和臣さんあたりがしゃべり出すはずの場で、誰も助け舟を出さないでちょっと時間が止まったように見えたのは、気のせいかもしれないけど、みんな感極まってたのかな?と。(違ったらごめん)

歌もダンスも声優さんには本来求められてないはずの役割だし、そもそも防衛部はアイドルの役ではないにも関わらず、顔出しの仕事多数でニコ生でもバラエティ感を求められ、まあ本当によくできたいわゆる「アイドル売り」。アイドルのパロディみたいなものなんだけど、そうした活動を通してグループとしての自意識みたいなのを身につけてしまったことが、愛しくもあり、悲しいことでもあるなと思った。見てる側としては、5人でいることを期待してしまう。でも実際、ただの共演でしかないわけで。

清々しくキャラを反映させた王道なアニソンだらけの防衛部の曲たちの中で、ひときわ異質なド直球の青春ソングJust going now!!!の歌詞がこんなところで思い出される。

 

まだ今も醒めない青い春をただ駆け抜けたいから

 

なんで防衛部の曲に、こんなに恥ずかしいくらいの歌詞があるんだろうと思ってたけど、笑っちゃうんだけどライブの予想以上のエモさを見てしまうと、こんなにハマる歌詞はないよなあって思ってしまう。いつ終わるかわからない作品の中での結束を、続けていきたいよねっていう姿と重ねてしまう。

そもそも「美男高校地球防衛部」ってアニメ自体が盛大な「なーんちゃって」の集まりで、他作品のパロディとお約束とメタ視点の集積で作られていて、どこにもその本質なんてないのかもしれない。でも、そんな中で不意打ちに、人間くさいエモいことを言われると、心がきゅっと絞めつけられてしまう。

 

そして、また、防衛部関連商品にお金を落としてしまう……本当によくできてる……。

OLDCODEX Tour 2015 ONE PLEDGES初日の感想

3月のFree!イベントで達央さんが、宮野真守さんに対して「このバラエティ狂いが!」と突っ込んだことがあった。何気ない言葉だったけどそれは的を得ている気がする。宮野真守には、執拗なまでに人を楽しませようとする執念があり、それがイベントやラジオでの振る舞いから窺える。それは、きっと宮野真守のコンサートがネタバレ禁止なことにも現れていると思う。来た人を万全の状態で楽しませるため、お客さんにすら協力を願うのだ。それほど宮野さんの人を楽しませることへの責任感は重いのだと思う。

そして、そんな宮野真守を「バラエティ狂い」だと評した鈴木達央という人はその真逆に位置するタイプだな、とライブを見ていて思った。OLDCODEXのライブで、Ta_2さんは客席に向かってよく「お前らはほんと何でも楽しむ天才だな!」と言う。先日の豊洲でのツアー初日でも言っていた。

客席の楽しさはステージにいる自分が提供しているものではなく、自分が提供する音にあわせて楽しさを見出すのはあくまでもオーディエンス側であるということだ。客席とステージが一体となって盛り上がる場面で放たれるこの言葉は、客席を煽りつつも、少しだけオーディエンスから距離をとっているようにも聞こえた。

 

ONE PLEDGESツアーが始まった。

 

昨年のアルバム「A Silent, within The Roar」から今回のツアーのセットリストに引き継がれた曲はRage Onを入れると2曲のみ(※4/30のセットリストに限っては)。それ以前の曲を多く盛り込み、違和感のない流れで最新の曲が繰り出されるという、前年のツアーとはあきらかにモードが違うことを見せつけたライブだった。

A Silent, within The Roar」というアルバムとツアーは、今にして思えばわかりやすくてキャッチーなものを目指していたような気がする。アルバムはどの曲も味がはっきりしていて、それぞれの役割が明確だった。その中で一際明るくて、一体感のあるコールアンドレスポンスができるLandscapeが本編のラストに演奏されていたことからも、ツアーの色が窺えると思う。

対して、ミニアルバム「pledge」を引っ提げたツアーONE PLEDGES はどうだったかというと、豊洲PITで見た限りでは、昨年のツアーで感じたキャッチーさから遠ざかろうとしている印象を受けた。

直近のタイアップヒット曲であるDried Up Youthful FameWALKがなく、ここ最近のライブで、頻繁に演奏された印象のflag on the hillもない。その代わり、birdsやAchromatic habitなど「A Silent, within The Roar」以前の名曲を盛りこんでいた。そして、色褪せない鮮烈な過去の曲達と並び、最新アルバムのLost beforeseequretがまったく遜色なく、地続きに聴こえてくるのは嬉しい発見だった。昨年のツアーでファンから「OCDは変わってしまった」と言われることをTa_2さんはMCとwired choirという曲で否定してきたが、もうわざわざ口に出さなくても、バンドに流れている血はやはり同じなのかもしれないと思わせてくれる。そして、こうしたバンドの原風景に迫る曲は、完璧な一体感を産むようなものというより、内省的で、メランコリックな憂いを帯びたステージを見せてくれる。

また、OCDはなんだか「お約束」みたいなものを嫌う性格なのではないだろうかと思えてきた。「pledge」のリード曲のEyes in chaseでさえ、サビでTa_2の歌の後に演奏のみが流れる余白が出来ていたり、アウトロがシャウトで突然終わる。DUYFでも感じたことだが、聴いている人の意表を突くための、かすかな違和感をつくることを意図して作られている印象を受けるし、「pledge」のその他の曲も一聴しただけではわかりにくい構成になっている。

こうしたOCDの天邪鬼な性質は、彼らの魅力だと思う。サビをキャッチーにしても、全体としてはキャッチーを目指さない。けれども、こうした「キャッチー」でありつつ「キャッチー」から遠ざかろうとする姿勢は時としてマイナスにもなり兼ねないのではないだろうか。

彼らはLantisに所属している以上、「キャッチーさ」を求められる存在だと思う。もちろんOCDがアニメタイアップとして制作してきた曲達はどれもアニソンとして機能的でキャッチーだった。けれども、バンドを支える根幹の姿勢がキャッチーさと無縁であるならば、このレーベルという圧倒的なホームの場もといアニソンシーンが、バンドとしては逆にアウェーにもなりえるのだろうなと思うのだ。単純に楽曲としてではなく、バンドの姿勢として、知らない人でも立ち止まりやすい引きを持ってたり、間口を広く構えて、おもてなしするような精神が求められる時があるのではないかと思う。

そんなことをランティス祭りの台湾公演LVを見ながら感じていた。昨年の国内のランティス祭りが終わった後もそうだったけれど、ランティス祭りの海外公演を終えてやたら「やっぱりワンマンはいいなあ」としみじみMCで話すTa_2さんがいたのは印象的だ。海外旅行から帰ってきてやっぱり家が一番落ち着くなあっていう。海外旅行ならわかる。でもバンド活動において、時には外の世界でお客さんを獲得してくることも必要なのではないのだろうか…安心してちゃいけないのではないだろうか…と余計な心配をしてしまう。

 

ライブ終盤は、定番となったRage onKick outから怒涛の勢いでreelの凶悪なイントロへ向かう。と、思ったらなんとなくかわいげのあるサビとCメロ(?)で肩透かしを食らう。そういう裏切り感がOCDっぽいなと思う。

そして、Bitter Aspirationへ畳み掛ける。「pledge」や直近のシングル収録曲でも顕著だったヘヴィな重低音が影を潜め、とりわけシンプルな印象のなこの曲がまさか本編の終盤で演奏されるとは思っていなかったので衝撃だった。LandscapeKick outなどのライブ仕様の曲が演奏された後でこの曲を聴くと、ひたすらにメロディと歌詞の切なさが胸を打つ。

そして、ラストはEyes in chase。咆哮とスレスレの鬼気迫るボーカルを、一身にマイクに込めてTa_2さんは歌う。

バンドの行く末はわからない。武道館をやったバンドにだって、一寸先にに仄暗い落とし穴が待っている可能性だってある。もしかしたらOCDにとっての居場所はアニソンシーンでも、その向こう側でもなく、このステージにしかないかもしれない。けれども、踏みしめたその場所を誇示するようにTa_2さんは歌っていた。

中途半端だと揶揄されることを気にして「日本一中途半端なボーカリストになってやるよ」と胸を張って主張していたこともあった。その言い草は子供の逆ギレみたいにも見えたが、それでも、豊洲PITのステージという限りある場所に立って歌うTa_2さんの存在は強く、尊くて、唯一無二だと思った。もしも、誰かから取り上げられようとも、彼が立つその場所は必死で守るに値する、価値ある場所だ。だから誰もこの人の姿を咎めることはできないと思った。

Eyes in chaseを歌い終えたTa_2さんが客席を見渡す時の、満足げな表情が、この会場で一番楽しんでいるのは彼だということを物語っていた。もしかして彼はオーディエンスを「楽しませる」という意識はそこまでないのかもしれない。けれど、肉体から放たれる強烈な歌声の生身の魅力は、何度パフォーマンスを見ても飽き足りないとさえ思う。一回性のきらめきを持った素晴らしいエンターテイメントだ。

 

ということで残りの札幌と松山、あと追加のお台場楽しみにしてます。

 

pledge(DVD付)

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昨年のツアー初日感想をロキノン調で書いていたので、今年もそれを目指してみたのですが、なんだか中途半端に終わってしまいました。